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富山新聞


今日の社説

2020/09/02 00:49

県が「コロナ減税」 国も消費税の引き下げを

 石川県が県内に事業所を置く法人に課す法人県民税を、来年2月から2年間、減税する方針を固めたのは、英断と言えるだろう。新型コロナウイルスで打撃を受けた地域経済の支援策として減税を行うのは国や地方を通して全国で初めてであり、本来なら国が率先してやるべき政策を地方が先取りしたかたちである。

 超過課税の対象となる法人は、資本金が1億円超、または法人税額が年1千万円超の企業などで、減税規模は2年間で9億円程度になる。県税が減るのはつらいところだが、リーマン・ショックを超えるリセッション(景気後退)が鮮明になるなかで、減税の必要性に着目し、企業支援を打ち出した意味は大きい。

 2020年4~6月期の実質国内総生産(GDP)は前期比で年率27・8%減少し、戦後最悪の落ち込みとなった。GDPの6割近くを占める個人消費は冷え込み、企業の設備投資も低迷している。政府・与党は、石川県が先んじた「コロナ減税」の意図をくみ取り、消費税の引き下げを真剣に検討すべきだ。

 安倍晋三首相は19年10月、消費税を10%に引き上げる際、リーマン・ショック級の危機が起きるようなことがあれば、増税を見送ると明言していた。政権が変わっても、消費税減税を行う理由や大義名分は、十分にある。

 法人県民税率は、国が定める全国一律の標準税率が1・0%、県が定める超過税率が0・8%の計1・8%となっており、石川県は都道府県が独自に決められる超過税率分を0・4%に引き下げる。減税額はわずかでも低迷する設備投資意欲を喚起し、雇用の維持につながるだろう。

 とはいえ、減税対象となる法人は限られている。景気回復には中小零細企業はもとより、全ての国民に広く恩恵が及ぶ消費税減税が必要だ。税率を「5%」、場合によっては「0%」にする思い切った減税を決断すべきだ。

 ドイツは12月末まで標準税率19%を16%に、軽減税率を7%から5%に引き下げた。減税の財源は赤字国債が想定されている。政府・与党はドイツの例を参考にしてほしい。

甘エビのブランド化 金沢が導きたい北陸の味

 金沢港に水揚げされる極上の甘エビを「金沢甘えび」と銘打ち、ブランド化して発信する取り組みが始まった。全国トップクラスの水揚げを誇る同港の甘エビの中でも特にレベルの高い逸品を選び、県内外に売り込む。新型コロナウイルスの影響で、県産の高級農産物が苦戦する中、日本海の冬の味覚の代表格である甘エビのブランド化により、北陸の海の幸のV字回復を先導したい。

 金沢市と県漁協は底引き網漁解禁に合わせ、鮮度が最上級と認められるものの中から、現行の出荷規格で最も大きいサイズに分類される甘エビと子持ちの甘エビを「金沢甘えび」としてブランド認定する。要件を満たした甘エビは、ロゴマークのシールを貼った特別感のある魚箱に入れ、10月から出荷を始める。

 ブリ、加能ガニとともに、石川の「冬の味覚のAKB」とも言われる甘エビは、プリプリとした歯応えが特徴で、刺し身やすし、天ぷら、塩辛、具足煮などのほか、せんべいの加工品にも使われているように、多様な食べ方で幅広い層に親しまれている。

 新型コロナの影響で、下落傾向にあった能登牛やルビーロマンなど県産ブランド農林水産物の価格は、ここに来て徐々に持ち直しの傾向が出てきており、積極的なPR活動による需要の回復が期待される。そうした中での甘エビのブランド化は、実りの秋に向けて、地元産の多様な農林水産物を元気づける好材料と言えるだろう。

 ご当地農産物のブランド化にあたっては、広域発信の基盤として地元への定着度を一段と上げることが求められる。金沢市では、地元の活性化に取り組む学生グループ「金沢まちづくり学生会議」が市がブランド化を目指す「金沢メギス」を使った新たな料理レシピ作りに乗りだした。

 金沢甘えびに一段と親しんでもらうためにも、甘エビの魅力を広げる調理法や食べ方の提案が重要になる。市や県漁協などが設立した市水産物ブランド化推進協議会を中心に斬新なレシピの募集や食のイベントなどを企画し、地元へのアピールを強めていきたい。