攻略対象よりサブキャラが好き
読んでいただきありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ
時は流れすくすくと成長して、最近はポニーに跨り乗馬ダイエットも成功し、下半身や腹部のたるみもすっきり消えた。同じくお母様も乗馬ダイエットでますます美女ぶりに磨きがかかった。
レディファッションブランド、アンダー・ザ・ローズはかなりヒットしているらしい。らしいというのは、私は社交界に全く出ていないのでラティお母様のお話をきいているだけであるから。今までのさばっていたロマンティック系オンリーのあまあまファッションに飽きまくって砂を吐き散らしすぎて反吐が出る女性陣は矢張り多かったようだ。若い少女ならともかく、成人・結婚等を迎えた女性にあのファッションは優しくない。また、あれは可愛らしい正統派美少女に似合うものであって、それ以外には首をかしげるものだ。若い女性にはやはりプリンセスラインは人気だが、最近マーメイドドレスとエンパイアドレスが流行最先端といえる。また、ドレスは高いのでなかなか買えないし、予約すら難しいローズブランド。最近はドレス小物のブローチやコサージュ、ロゼットやバッグや靴といった物にも手を伸ばしている。ぶっちゃけ私は今の主流の爪先とんがり・鋭角ハイヒールは好きじゃない。おでこのような丸みを帯びた愛らしいラインが好き。というわけで、作らせている。私が履きたいから!! ドーラは淑女が事業を行うなどはしたないっていうけど、ブローチやイヤリングとかの試作品に対しては目を爛々とさせて黙ってるよね。
なんでこんな奴が公爵家にいて、お父様が黙っているかと云えばドーラは私の実母と乳兄弟だからだって。うちの実のママンは私が誘拐されたショックで、もともと体も弱かったこともあってそのまま倒れて帰らぬ人となっている。ちなみに私はママンに激似である。生き写しだ。ちなみに娘以外には激怖お父様は、実のお母様とは大恋愛結婚。一目ぼれしたが婚約者のいた母。諦めず決闘で奪い取った猛者である――まあ、それゆえに私への愛情は御察しである。そして、王家への憎しみも。
ドーラは母を唯一よく知る人物。だが、母がいなくなって以来、妙に幅を利かせ、私をコントロールしようとしている為、従僕のジュリアスや侍女のアンナ、義弟キシュタリア、義母ラティーヌ様とは常に冷戦状態だ。ゲームのアルベルティーナの性格が歪んだの間違いなくドーラも一因だろうなと思う。ドーラの懐柔作戦はマッチポンプ式だ。わざと私が怖がる暗がりや閉所を作り、それを助けにきましたよと云わんばかりに仰々しくやってくる。最近、そのパターンはジュリアスとアンナに打開されつつある。目を盗もうにも、私は最近ラティーヌお母様やキシュタリアとよくいるから難しい。特にキシュタリアはぴったりと張り付いている。
「はぁ・・・・どら焼き美味しい~」
「アルベルティーナ様、まだ白餡と栗入り、生クリームとチョコクリーム、カスタードクリームもありますからあまり食べ過ぎないように」
「えっ! おやつじゃなくて試食?」
「明日はダイフクとヨウカンです。太らないよう午後にはみっちり乗馬を入れますから――ほら、さっさと評価用紙に記入してください。貴女の味覚が頼りなんですから」
「うえええっ、もっとゆっくり味わって食べたいですわ~」
「製品化後でしたら、いくらでもご自由に」
おかしくない? おかしくない? 私って公爵令嬢だよね? なんでこんなにせかされながら食べてるの? ジュリアスに訴えたくても、ジュリアスの後ろには私の評価という判決結果を、重罪の囚人のような顔をして待っているシェフやパティシエの存在によって阻まれる。
「そういえば、お嬢様」
「なんですの?」
「第一王子主催の誕生日会を兼ねたお茶会の招待状が来ており「欠席で」
食い気味というか、かぶせるように即答した。
隣にいたキシュタリアを前に押すようにして、自分の身を隠す。と云っても、座っている状態なのでそんなに隠れていない。そんなの次期公爵のキシュタリアがいけばいいのだ。
全く社交界に出ない私が『見るのも憚られる醜女』とか言われているらしい。顔面が抉れたような傷があるとか、大やけどが残っているという噂もある。実際は背中に薄っすら傷が残っているだけ――らしい。アンナ曰く。
いやでござる、と全力で意向を訴えるとジュリアスは苦笑し、キシュタリアは肩をすくめた。
「ああ、でも王宮の茶菓子というのは気になりますわね。キシュタリアは知っていますか? 王子の主催ということは、伝統料理から最先端の粋を凝らしたものが出るのでしょう?」
「伝統料理はちょっと前まで食べてたぼそぼそしたパンを砂糖衣で包んだようなのだし、最先端のお茶菓子とやらは半年前に商会で開発したシュークリームとケーキだと思うよ」
「惜しいですね、シュークリームとマカロンです。王室から予約が入っております」
あれかー。あれはもう試作品を試食しまくって飽きたわ。三年は食べたくない。シュークリームはシューの部分がなかなかうまくいかなくて苦労したんだ。マカロンはフレーバーの厳選が大変で大変で・・・思い出したくもない。実はクッキーシューやエクレアも考えていたけれど、暫く生クリームというか洋菓子は食べたくなくなって保留にした。
アルベルティーナを断罪する第一王子を人生からフェードアウトさせ、義弟のキシュタリアを懐柔して私の世話をさせるまで調教しきった私には死角などない。
ラティッチェ家の守護神お父様は、私が楽しそうであれば大体大丈夫。
どんな高貴な人からのお茶会もパーティも全力拒否でおうちに引きこもり、美味しいご飯とお菓子に舌鼓をうつ日々。そんななか、ついに第三の刺客がやってきた。
その刺客の名はミカエリス・フォン・ドミトリアス。ドミトリアス伯爵家の嫡男である。
こいつのルートでは私はほとんど関わり合いないが、メインキャラの一人なので放置は不味い。全力で懐柔してくれるわ! 主にジュリアスとキシュタリアを使って!
ミカエリスは燃えるような真っ赤な髪?と赤い瞳の美少年。熱血キャラと思いきや、冷静沈着で非常に真面目。というより、表情筋が動かないタイプ。妹のジブリールがおり溺愛しているものの、そのクールキャラが仇となりイマイチ仲が良くない――というより、妹に遠慮され過ぎ、劣等感から苦手意識まで持たれて少し距離を取られている可哀想なお兄ちゃんなのである。
ふはははは! 残念だったな! 私は同腹ではないどころか遠縁筋から引き取った義理の弟をすでに懐柔しているのだよ! この勝負私の勝ちだ! 権力の勝利である!
そんな優越感があったが、ミカエリスらを見た瞬間吹き飛んだ。
え、何この子たちめちゃ顔色悪い。
「ドミトリアス伯爵家の当主ガイアスは私の友人なんだが、病を患ってな。
執務に携われないあいだに、弟夫妻がやらかしてくれたようだ」
そこにいたのは心優しく穏やかな伯爵夫人と、幼い兄妹。気が強いうえ常識のない弟夫妻は我が物顔で伯爵本家に居座り、伯爵が病気の間に好き放題やっていたらしい。
あまりに横暴な振る舞いに、ついに伯爵夫人は耐えかねて恥を忍んでグレイル・フォン・ラティッチェという大御所ことお父様を頼った。
ラティッチェ公爵家とドミトリアス伯爵家は、格は違うが領地は近い。そのため、交流があった。隣の領地が荒れれば、ラティッチェ家にも余波が飛ぶ。よって次期当主たるミカエリスの後見人となり、執務をできるようになるまで鍛え上げることとなった。
だが、この貸しは今後二つの家に大きく影響を残すだろう――少なくとも、ドミトリアス家はラティッチェ家に歯向かうことは絶対できなくなる。
「アルベルティーナ、ドミトリアス家の領地は非常に肥沃な土地を持っているんだ――新しい農場が欲しいと云っていただろう?」
そういうことですかお父様! 娘の戯言に、伯爵家の領地を分捕るおつもりか!?
いや、取らなくても実質、二束三文で収穫物をよこせとかいう契約を交わさせるつもりか? 領民や農家に優しくないぞ!
確かに、最近美容関係の化粧水や乳液、石鹸とかを作り始めている。石鹸づくりには油の抽出が必須である。色々混ぜるが、メインはこれ。
お父様の声が聞こえたのか、一瞬ミカエリスの肩が揺れた。
「確かに栽培してほしい植物がありますわ。できれば職人も育てたいと思っていますの。
ラティッチェ公爵家の良き隣人として、お付き合い願いたいと思っています」
「植物を育てるのはともかく、職人はラティッチェで揃えればいいだろう?」
「うーん、遊び場は十分すぎるほどですわ。力が一点集中しますと、その場自体が乱れますでしょう? それに最近、王家からの招待状があれこれと本当に鬱陶しゅうございますの」
「・・・それはよくないな」
欲しくないと云えば嘘になるけどミカエリスの恨みを好んで買いたくない。
ラティッチェ家の財政はかなり裕福だし、そんなにがめつくしなくていいと思うのだ。
それ以上に、王家からの招待状が鬱陶しいと私が憂いていることに、お父様の関心は一気に傾いた。
私を安心させるようににこりと美貌に笑みを乗せたお父様は「少し仕事があるのでな」と軽く頭をなでて退席した。
ちらりとミカエリスを見ると、彼は咄嗟に妹を庇うように身を呈した。
妹のジブリールは不安げに――というより、キラキラとした目で私を見ている。
「きれいなお姫さま・・・・」
赤いお下げと切りそろえた前髪。瞳の色と云い、カラーリングは兄と同じだ。だが、夢見るようなポーっとした顔で私を――アルベルティーナを見ている。
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はっ!
そうだよ! アルベルティーナは絶世の美女(予定)のはずなんだよ!! たとえ中身がへっぽこでも! 誰も美少女扱いしてくれてる感じしないけど!
私はにっこりと笑みを浮かべてジブリールに歩み寄った。
「初めまして、わたくしはアルベルティーナ・フォン・ラティッチェ。
ラティッチェ公爵家の長女ですの。貴女のお名前を教えていただける?」
「あ、あたしはジブリールです! ジブリール・フォン・ドミトリアスです!」
「そう、よろしくね。ジブリール」
「はい!」
ふと、ジブリールを見て妙な事に気づく。ジブリールは伯爵家の娘のはずだ。そしてドミトリアス伯爵家はそれなりに領地も多く、財もあるはずだ。成り上がりでも家名だけの貧乏貴族でもない。
なのに、ジブリールの服は随分くたびれていて、その裾は薄っすら黒く汚れている。皮脂や垢かまでかは分からないが、よくよく見れば肌も髪も荒れている。若いというより、幼いぴちぴち素肌のはずが粉を吹いたような感じになっている。
そっとその頬に触れると、やはり触り心地が悪い。でも若いから、化粧水を叩きこめばすぐ卵肌に戻るだろう。
「お食事の前にお着替えしましょうか。ジュリアス、湯殿の用意をしてちょうだい。
わたくしの服で、この子が着れそうなものを見繕ってきて」
「かしこまりました」
ジュリアスがそつなく一礼する。
ちらりとミカエリスを見れば、やはり身にまとうものはジブリールと似たような様子だ。余程伯爵家で彼らの叔父夫婦は横暴に振舞っていたのだろう。次期当主と令嬢が身繕いさえできないほど。
浮浪児まではいかないが、貴族としては落第だ。お父様ったら少しは整えて差し上げればよかったのに。
「ミカエリス様の服は・・・流石にキシュタリアの服は入らなそうですわね」
やせ細っているが、身丈は年上であるミカエリスのほうがある。
と云っても大人サイズは大きい。一番近いのはジュリアスだが、従僕の服を与えるなど、伯爵子息には失礼な話である。
「ローズブランドの試作品がいくつかありました。あちらは如何でしょう?」
「女性用よ? 合わないのではなくて?」
「騎乗服や、カジュアルスーツであれば少し変えれば男性用と変わりません」
「では針子の方たちやデザイナーの方々をお呼びして、軽くミカエリス様と合わせましょう。
折角ですわ。いくつか衣装を用意させましょう。妹君ばかり衣装もちになっては不公平ですわ」
ちょっと草臥れてはいたものの、ジブリールは鮮やかな赤毛とルビーを思わせる瞳がとても似合う溌溂とした美少女だった。あれは磨けば光る。原石だ。
そして、我が家には今までアルベルより小さな少女なんていなかった。ぶっちゃけ、フランス人形なんて目じゃない美少女に。思いっきり着飾らせたい、と欲望がたぎって仕方ない。自分? パスパス。それはアンナの仕事です。
「ねえ、ミカエリス様はジブリール様には何がお似合いになると思います?
わたくしは白いレースとモスリンがたっぷり使われた絹のワンピースなどがお薦めですわ! 美しい赤髪がとっても映えそうです! それとも桃色もいいかしら? いえ、ペールグリーンの羅紗重ねのハイウエストスカートがよろしいかしら?」
「姉さん落ち着いて! ミカエリス様が引いてる!」
「あら、いやだわ。はしたない。失礼いたしましたわ、ミカエリス様。
ではごきげんよう、また晩餐でお待ちしておりますわ」
むしろ興奮しすぎて、私自身もくらくらしてきた。カーテシーを取ろうとして頭がふらつく。足元がおぼつかないことに気づいたのか、先ほどまで制止しようとしていたキシュタリアがすっ飛んで来て私を支えてくれる。
私はキシュタリアに支えられながらもルンルンで可憐なジブリールをどう着飾ろうかと浮かれ切っていた。そして、熱を出してアンナとジュリアスに布団の中に詰められた。
寝るまで動くなと云わんばかりに、二人は起き上がれない様にブランケットを抑えている。
やめてよ、寝苦しい。そんなことしたら寝れなくなる・・・すやぁ。
どうやらドミトリアス伯爵家兄妹達は、思ったより私にストレスが強かったようだ。へなちょこ令嬢はあっさり倒れた。なんで? キシュタリアとラティーヌお母様は平気だったのに。
嘆くお父様。私にお友達という名のおもちゃを用意したのに、まさかこんなことになるとはと悲嘆に暮れている。
「始末しようか? アルベルティーナ」
やめてよ! このお父様超怖い! ゲームアルベルがあんな悪逆非道に暴走したのって、このお父様の血筋だからだわ!
朗らかな笑顔で処刑宣告しないで!
もし何かありましたら、下より度お願いします。
ブクマ、評価、御観想お待ちしております(*- -)(*_ _)ペコリ
まだ慣れていないので色々抜けがあるかもしれませんが、お付き合いよろしくお願いします。