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転生したら悪役令嬢だったので引きニートになります(旧:悪役令嬢は引き籠りたい) 作者:フロクor藤森フクロウ
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死亡フラグ1現る

読んでいただきありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ



 新生アルベルティーナとして再出発をして、半年ほどたった時、お父様が再婚することとなった。

 あまり乗り気ではないが、一人娘であり、溺愛するアルベルティーナがあの誘拐事件以降、トラウマ傷物のヒキニート幼女になってしまった為、ラティッチェ公爵家を継がせるために養子をとることとなった。分家の子爵か男爵の末息子らしいが、魔力が強いためその母親ごと引き取ることにしたという。

 なんで母親ごとかといえば、ヒキニートに加え私はあの誘拐事件以来、男が苦手になった。

 年齢の近い子供や女性は平気なので、引きこもり娘の話し相手もかねて引き取ったという。

 基本アルベルティーナ以外見えていないお父様は人の心が分かっていない。軽く引いた。

 連れてこられた義母は豪邸と最高級の調度品に囲まれ、恐縮仕切りだった。義弟にいたっては虚ろな目をしてぼんやりしている。

 優秀な従僕であるジュリアスによれば、貧乏男爵家の愛人のうちの一人だったそうだ。金に困っていた上に、強力な魔力を持った妾腹の末息子を碌な教育をさせる余裕もない男爵ははした金であっさり義母と義弟を渡してきたという。体のいい厄介払いだったのは私にもわかる。

 本家アルベルはイビリまくり義母を自殺に追いやり、義弟を虐めまくる。

 そのことが原因で義弟ことキシュタリアルートでは断罪時に、死にたくても死なせないってレベルに復讐される。

 ついでに云うと原作でジュリアスもイビリつつも、顎で使いまくっていた。

原作通りになってたまるかと反骨心を抱いていた時もありました。ごめん、ジュリアス。今も使っている。ふええ、有能過ぎて使わないとか無理!

 パワハラセクハラでなく主に食事改善のために。顎が痛くなる固いパンは嫌なのだ。リンゴとレーズンによる天然酵母と、お父様を泣きおとして手に入れたヨーグルトで作った白パンは私の好物だ。ブイヨンのきいていないうっすいスープも、香辛料まみれのドチャクソ舌に痛い干し肉やステーキもうんざりだ。マヨネーズ、ケチャップ、オイスターソースは財力と気合で今後絶対作らせる。王家からの賠償金を使い込んでも絶対作る。だって私は悪役令嬢なのだから! ジュリアスは製品化を熱心に勧めてくるけど、私が満足しない味を世に送り出すつもりはない。そういって突っぱねると、コック長とジュリアスが結託してあーでもないこーでもないと試行錯誤しており、私は義弟のキシュタリアとニューママンのラティーヌお義母様と美味しくいただく日々が続いた。

 次は味噌と醤油を作りたい。大豆のかわりになる豆を目下捜索中であります。

 義家族二人とは別に仲は悪くない。

 といっても、ヒキニート令嬢の社交スキルなんてへぼ極まりない。

 同じ食事を食べたとしても、大貴族のテーブルってとんでもなくデカいものだから距離感が半端ない。

 私がちゃんと喋れるのはお父様と専属メイドのアンナと従僕のジュリアスくらい。経歴長くても令嬢として蘊蓄か含蓄か分からない嫌味を流すドーラは好きじゃない。

 しかもドーラ、私が誘拐事件以来、暗闇恐怖症かつ閉所恐怖症なの知っていて、ときどきわざとカーテン閉めきったり、寝ている私の顔に布かぶせたり、魔石ランプの灯を消したりしてくんだぜ? ひどくね? しかも寝た後で。そのせいでアンナとジュリアスがド深夜で私が気づく前にそれを直しにくるんだぜ? 運悪く真っ暗な中で起きると私が発狂するから。朝なら平気なのだよ・・・日が昇ってれば。

 ドーラってお母様――実母のほうなんだけど、あっちの専属メイドだったからかなり幅をきかせているのよね。アンナとジュリアスも奮闘してるんだけど、二人とも有能だけど若いの。鍵の使用権とか、他の使用人を顎で使える度合いはどうしてもドーラに軍配があがる。というより、リアルママがいなくなって増長してる? あんな大人になりたくないわー。何したいのよ、あのおばさん。

 お父様に言ったら物理で即刻首が飛ぶから、あんまり言いたくない。そこまで命を軽率に扱えないわ。ジュリアスやアンナたち――というか、アルベル派はチクり推奨っぽいから余計にね。

 あれでも、お母様のメイドだったのよ。あんなんでも。

 女主人付きだったのなら、ニューママン達の手助けにもなる――と思いきや、その間の空気は冷えてるっぽいのよね。ドーラ、アンタなにしたいの。私だけでなくラティーヌお義母様やキシュタリアにまで顰蹙買いたいなんて、どエムの極みだわ。

 お陰でヘイトが全力でドーラ直行。私と新しい家族は割とぎすぎすしてない。私が勝手にびびってるけど。



「・・・アルベルティーナ様は、ボクや母様がいやではないの?」



 キシュタリアは流石乙女ゲーム攻略対象というべき紅顔の美少年。アッシュブラウンのちょっと癖のある髪と、宝石のようなアクアブルーの瞳。

 アルベルティーナも相当な美少女だが、キシュタリアも女装すればかなり美少女・・・ごほん! かなりの美少年だ。

 ちなみにR18版ではアルベルによって童貞を奪われる過去も存在する。

 だが新生アルベルティーナはとってもチキンなヒキニートなので、基本アンナかジュリアスに隠れまくる。最近は「慣れてください、弟君なのですから」と無理やり引きずり出されるので挨拶はする。

 食事時? 距離あるからね! まだ我慢できるよ!

 えーと、それよりなんで話しかけてきたのかな!? 内心大恐慌に陥りながら、ジュリアスにしがみつく。

 微苦笑を浮かべるジュリアスは私付きの従僕。実はこのインテリ眼鏡もかなり美少年だ。おのれ! 乙女ゲームの世界だからか! 視界がまぶしい・・っ! 油断するとすぐに「目が・・・っ! 目があああ!」となる。たまに鏡見てもなる。乙女ゲームの顔面偏差値レベルヤバい。


「・・・少し怖いけど、嫌いではないわ」


「こわい? ボクを?」


「・・・しらない人は怖いの。おそとからきたひと、みんなが怖いの」


 事実アルベルティーナには外敵が多い。

 何せ世間知らずなお嬢様だし、過去の悶着から王家すら迂闊に物を云えない爆弾扱い。

 お父様も私の周囲にはギラギラと目を光らせている。

 もし、この親子の存在にアルベルティーナが愚痴をこぼせば、お父様の一存で即刻追い出される可能性もある。と、いうよりあのスーパー娘大好き公爵はやる。


「ボク、こわくないよ。公爵様は、アルベルティーナ様のためにボクをここにつれてきたんだよ」


・・・・・・・・・・父!!!

 何を言ったおとーさまあああ! こんな小さな美少年がなんかもう、ニコニコと悪気なくやべえセリフはいてる気がする!

 そりゃー、お父様にとって私以外塵芥かもしれないけどさ、なんかもーアルベルのために死ねとか平気で言ってたり・・・しない・・・よね・・・???

 あのお父様ならありうる。やべえ、私の迂闊な態度や一言にこのショタとショタママの命がかかっている。

 フリでもなんでも仲良くしといたほうがいいかもしれない――ということでコミュ障のヒキニート令嬢は義理の弟と母を懐柔することにした。

 ちなみに懐柔作戦は基本お菓子だ。子供と女性は甘いものが好きだろうという安直な考えだが、これがまたよく効いた。

 もともとお茶会やパーティを一切放棄した放蕩令嬢であるアルベルティーナは、最低限の礼儀作法やお勉強以外すべて食生活改善に充てている。

 調味料やレシピはもちろん、この世界にはないお菓子も熱心に作成しようとしている。

 王家からの詫び金が尽きれば、キュルンとした顔でお父様に強請った。全力で。娘を目に入れても痛くないどころか、目に入れることができるなら入れて持ち歩きたいくらい愛しているグレイル・フォン・ラティッチェ公爵は全力バックアップしてくれた。

 そんなこんなでお菓子を滅茶苦茶作った。クッキーやスコーンはあるのだが、ケーキはぼっそぼその固い謎のブツだったので、シフォンケーキの開発の一環でスポンジケーキを開発した。あれは小麦粉・砂糖・卵・バターもしくは油があればできるので楽勝だった。ついでにドライフルーツやナッツを入れたパウンドケーキも開発した。紅茶やコーヒーフレーバーも開発した。そして香辛料を探している途中で手に入れたカカオから念願のチョコレートを。寒天を入手し、ゼリー系のものも作った。

 あの手この手でお菓子を作りまくり、それなりに食べられるものが出来上がると二人に送り、意見が聞きたいという名目で茶会に招待した。

 一年もすれば、普通にしゃべれるようになった。

 ジュリアスは今やケチャップやマヨネーズだけでなくお菓子も製品化しようと大変熱心に訴えかけてくる。いやでござるぅ、いやでござるぅ! となけなしの根性で抵抗したが、気づいたらジュリアスにあっさり説得されていた――何故??? あれ? 私公爵令嬢だよね? と云っても、私の仕事はお父様に「お願い♡」と一言声をかけるだけで、あとは超優秀な従僕ジュリアスと、お父様の執事のセバスが大体やってくれる。

 最近お義母様がご飯やお菓子が美味しすぎて太った気がする、と私もなかなかに聞き捨てならない悩みを打ち明けてきた。

 実を云うと、超絶美少女のはずのアルベルティーナの体にもお肉がついてきたのだ。

 ふくふくと丸みを帯びてきた気がする。これは事案だ。原因は解っているけど、現代社会に比べると雑極まりない粗食からようやく解放されたのに、また残念ご飯には戻りたくない。

 ならばどうする? 運動だ! ダイエット製品の開発だ。幸い、今まで熱心に研究していたパンや調味料、お菓子と云ったものはラティッチェ家の一大産業として、この世を席巻して巨万の富を生んでいるという。資金はばっちり! うちのスーパー従僕がやってくれた。お父様は「アルベルは天才だ!」と褒めたたえたけど、私は命令しただけなんだ。ごめん。

 まずは形から、ということでスポーツウェアの開発をした。伸縮性があり、吸水性もある着心地のいい素材。高級な素材と云えば絹だが、動くということは消耗が激しいのである程度丈夫であり安価なものがいい。

 そして気づいたのは、この世には女性用のスポーツウェアがない! 貴族社会においてはドレスの格式序列がある程度で、基本『THE乙女ゲー』と云わんばかりのティーン向けのロマンティック系ばかり。プリンセスラインかAラインドレスか選べ、みたいなレベルの狭いファッションしかない。この世にはスレンダーラインやエンパイアドレスやマーメイドドレス等は一切ない。お義母様はスラリとしたスタイルの良い美女だが、いくら美しくとも10代が似合いそうなピンクや黄色、しかも明るくはっきりとしたものばかりが主流――そんなのはきつそうである。そういえば、ヒロインもスチルがプリンセスラインのピンクのドレスだった。

 アルベルティーナも似合うだろう。外見こそは花も恥じらう美少女なのだから。

 だが――中身がヒキニートに乙女系バリバリのパステルカラーはきつい。スポーツウェアも然り。

 別にこの国にファッション革命を起こしたいわけではない。ただ単に、あの超絶ロマンティック系ドレスを強要されるのはごめんだ! そして、それをラティーヌお義母様が着るというのも見ていてキツイ! 三十代や四十代には許されざる領域だ!

 今のアルベルはアースカラーとモノクロを愛する女である。

 そもそもラティーヌママが似合うのはピンク系じゃなくてブルー系! ノーブルでハイソなペールカラー! 何が哀しくて大人の色気あるレディに、あんな七五三の延長ドレスを着させなくてはならないのだ!?

 財力に物を言わせ、オタク名残の昔取った杵柄というものでなんとか色々デザインを考えた。色鉛筆でざかざか色塗りをして、ジュリアスにラティーヌママにはこーいうドレスが似合うの!! と力説した。

 引きこもっている娘と、早世した実母の代わりに、慣れない社交界や婦人会に出ているママンを虐める気概も筋合いも私にはない。

 ダイエットのための女性用乗馬服の作成と並行して、ラティママにマーメイドドレスを作る。今までこんなドレスはなかったから、ウエストから太もも当たりのラインが出るのが気になるかもしれないので、レース編みの大判ストールと重ね付けパールロングネックレスも用意した。それに合わせたアクアマリンとパールのピアスとバレッタやら色々と作った。かといって、いままでプリンセスドレスごり押しだった世に、いきなりママンがセンセーショナルファッションでいっても中傷されるだけだ。

 私は考えた。貴族どころか王家でも文句の云えない人間が一緒にいればいい。つまりうちの魔王げふっ! お父様だ! 君に決めた!

 お父様は相変わらず娘にゲロ甘なので、おねだりでイチコロだった。

 娘に訳の分からない衣装を押し付けられ、書類上だけの――それこそ雲の上の存在だったうちのクレイジーサイコ娘ラブお父様にエスコートされていったラティママ。娘に頼まれたのだから、お父様も無体なことはしないだろう。そのはずだ。


「お嬢様、こちらのドレスブランドのお名前はいかがいたしますか?」


「ふぇ?」


「アルベル姉様。無理ですよ。もうジュリアス、御針子や機織り場まで押さえているから、完全に名付け待ちだけの状態ですよ」


 素早く耳打ちしてきたのは義弟。好きな事しかやらないヒキ令嬢とは違い、真っ当に公爵子息の教育を受けているキシュタリアが憐憫の籠った眼差しを向けてきた。

 にこやかだが有無を言わせぬ笑みを浮かべたジュリアスの手には、私の描いたデザイン画をつづったクロック帳。


「・・・・・・・アンダー・ザ・ローズ」


 薔薇の下――その意味は『秘密』『内緒』。

 私は別にこの世界で存在を主張したいわけではない。それに女性のファッションなら、花の名前が入っていてもおかしくない。

 ジュリアスは一層に笑みを深め、慇懃に一礼して去っていった。あのスーパー従僕はとても仕事が早いから、下手をしたら来週には王都に店舗がオープンしているかもしれない。

 ぞっとする。敵にしなくてよかった。多分敵じゃないよね? 思わずキシュタリアの背中にしがみつき「姉様?」と首を傾げられた。

 怖いよ! 便利で素敵なはずの従僕が、私の首を締めようとしている気がする。しかも一発でぐいっといくのではなく、真綿でゆっくりゆっくり何重にも巻いて窒息させるような気配が・・・・ぶるぶるぶる。怖っ!


「ね、ねえさま! ボクが姉様を守るよ!」


「・・・アリガトウ、きしゅたりあ・・・」


 その一生懸命な言葉だけでおばちゃん涙が出るよ。頬っぺたを赤くして「ほんとだよ!?」となおも言い募る姿は矢張りかわいいだけ。

 ごめん、キシュタリア。アンタ、乙女ゲーだと攻略対象だったし頼るにはちょっと怖い。今はきょうだいとしての仲は悪くないけど、恋って人を変えるらしいし。

 いやでござる! 折角、最終兵器お父様を使って王子との婚約フラグをへし折ったのに、なぜ弟までも攻略対象! R18ルートの悪役令嬢の末路って滅茶苦茶悲惨なのに!


「キシュタリアは私が悪い子でも助けてくれる?」


「うん! ボクが守るよ!」


 言質とったからね! 本当にいきなり裏切って後ろからグサッとかやめてよ・・・?

 私が戦々恐々としている中、なぜかアンナは「あらあらまあまあ」と云わんばかりににまにまとした笑みを浮かべていた。知らないって幸せだよね。


「ボク、姉様が・・・アルベルティーナが大好きです」


「・・・ありがとう、10年後も同じセリフがいえたら考えさせて?」


 そのころにはヒロインの・・・なんだっけ? リナ? レナ? に会って、ルートがルートならば断罪まっしぐらのはずだ。

 ぷんすかしたキシュタリアが「本当だよ!」と云っているけど、ヒキニートは恋愛に消極的だ。血がつながっていないとはいえ、姉弟。しかも私には超絶娘大好きなお父様がいるのだから、娶るとか茨の道どころか修羅の道だぞ。

 誘拐されて一回死亡説が流れたせいもあって、手元から少しでも離れるとめたくそ嫌がる。

 おお、キシュタリア。お前はこんな欲望(主に食欲)に忠実な姉に振り回されているというのに、こんなに健気に可愛く成長して。健気属性に飽き足らず、このまますくすくヒロイン属性を獲得したら、ジュリアスと宜しくしている薄い本でも発行してやろう。

 なでなでと柔らかい少し猫っ毛ぎみの頭をなでてやると、面白い程に顔が真っ赤になった。




もしよろしければ、下より評価・ご感想・ブクマ等よろしくお願いします。

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