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転生したら悪役令嬢だったので引きニートになります(旧:悪役令嬢は引き籠りたい) 作者:フロクor藤森フクロウ
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転生に気づいたら、誘拐現場でした

ちまちまと更新していきます。よくある悪役令嬢モノですが、楽しんでいただければ何よりです。



 アルベルティーナ・フォン・ラティッチェは悪女である。

 正確に云えば、乙女ゲーム『君に恋して』ことキミコイの悪役令嬢である。

 ある時は義弟を虐めまくり、ある時は過去の有責を盾に婚約者を徹底的に締め上げ、ある時は権力を笠に横暴の限りを尽くし貴族の令息令嬢を陥れる。

 そんな彼女の目の前に、平民が現れればそれこそ徹底的にいたぶる。彼女にとって平民は虫ケラのような存在である。図体がでかい分鬱陶しい虫ケラだ。

 そんな目ざわりが目の前に出て、自分の弟や婚約者に近づけば当然苛め抜く。庶民平民民草の下賤女と徹底的に扱き下ろす。器物破損や窃盗、ときにはならず者をけしかけたり毒薬をぶちまけて犯罪オンパレードIN魔法学園。

 そんなヤッベー女がなぜこうものさばっているかと云えば、王族すらなかなか手を出せないからだ。過去に王女と間違われ誘拐され、怪我を負った。それが身分の低い貴族ならまだしも、王姉を祖母に持つ由緒正しき公爵令嬢だった。ちなみに両親は、貴族の中でも名門中の名門。両方とも四大公爵家の出自を持ったスーパーサラブレッド令嬢だった。

 しかも、絶世の美貌を持っていた。緩く波打つ艶やかな黒髪に、王族特有の鮮やかなロイヤルブルーならぬロイヤルグリーン――サンディス王家の名をとったサンディスグリーンの瞳は漆黒の長い睫毛に縁どられている。そして、それを引き立てるような雪肌。スタイルはボンキュッボンの大変けしからんボディラインであった。胸は驚くほど豊かなのにたいし、腰はまさに折れそうなほど細い。



 チッス、おら日本人。今日から『アルベルティーナ・フォン・ラティッチェ』でーす☆



 無理だから!!!



 『私』こと『アルベルティーナ』がそんな前世を思い出したのは、奇しくもアルベルティーナ――もうめんどいからアルベルでいいや。アルベルが王女と取り違えで誘拐され、なんとかお父様が探し当てて救出した直後である。

 ちなみに、このお父様、非常にアルベルに甘い。チョコレートなんて目じゃない。砂糖の蜂蜜漬け並みに甘い。

 王家も全力で探していたが、先にお父様がアルベルを見つけてしまったのがヤバかった。

 しかも、王女誘拐事件の発端が現王の幼馴染の大臣が、外国と内通していたという大変糞な理由であり、アルベル及びラティッチェ家は完全とばっちり。しかも、アルベル救出にあたり、死に物狂いで一人娘を捜索していたお父様ことグレイル・フォン・ラティッチェはその不正を暴いた。危うく王位簒奪の危機という壮大というか悪事も露見した。ついでにそれに伴う国庫の改竄や収賄なども暴いた。もうラティッチェ家とお父様の株はうなぎのぼり。そして、悲劇の令嬢としてアルベルティーナはそりゃあもうそんな英雄のお父様に溺愛され、王家は王太子を差し出して婚約するからと平謝りとなる。だが、王家に「可愛いアルベルをやってたまるか!!!」と傷物にされた娘を可愛がる余り超絶拒否。

 原作だと、数年の交渉にわたり――アルベルが美貌の王太子をお気に召して婚約する流れとなる。


 まあ、それはさておき。



 アルベルティーナは娘溺愛、娘LOVEガチ勢のお父様により救出された。

 なんか怪しい黒魔術でもやっていたんじゃなかろうか、という具合に意味不明な死体が、薄暗い部屋の天井から吊るされている。

 両手を縛られ、箱の中に入れられていた。恐怖でアルベルは心が折れた。多分原作だと、そこで頭がかなりイっちゃったんじゃないかと思うの、アルベルティーナ。

 お父様はだいぶ大暴れをしたらしく、床には赤い何かがべっとりと広がり、壁にも飛び散っている。気のせいじゃなきゃ、ごろごろと生首が落ちている。中にはしゃれこうべ状態のもあるから、おそらく原因はお父様だけではない。


「ああ・・・っ! アルベル、アルベルティーナ! よかった・・・お前が生きていてくれて・・・っ! 恐ろしい思いをしたね・・・! もう大丈夫だよ、お父様がお前をずっと守るからね・・・・!」


 やべえでござる。事案でござる。娘大好きをこじらせてしまったお父様はSAN値が足りていない。正気度がやべえ。

 薄汚れ、やつれている娘を見る目は狂気じみていた。

 本来なら社交界のデビュタントからマダムまでため息をつく端正な美貌のはずだが、アクアブルーの目は血走り、髪は乱れて頬や額に誰の血か分からない赤が飛んでいる。



「おとうさま・・・・」


「・・・っ! アルベル! なんだい!? どこか痛いのか!?」


「おうちかえりたい・・・・」


 それだけいって、私の意識は闇に沈んだ。






 世紀の絶世の美悪女に転生した私は考えていた。

 アルベルティーナって、学園行って余計なことしなけりゃ領地で引きこもってOKな、ヒキニート上等なとってもイージーモードでは?

 おうちに戻って以来、お父様は私に対して湯水のようにお金を使うことをためらわない。

 王家からの賠償もあり、アルベルティーナは生きている限り大金が舞い込む。


「アルベル、国王が自分の小倅どもを欲しければやろうって言ってるけど、欲しいかい?」


「いいえ、お父様。アルベルはお父様とおうちにいるのが一番ですわ。誘拐されたらこわいですもの」


「わかったよ、アルベル。アルベルはずっとおうちにいていいんだから」


 アルベルは王家主催のお茶会で誘拐された。普通にとんでもない醜聞だ。しかもアルベルは王族に連なるご令嬢だ。たぶん、この一件で護衛をしていた王宮騎士の上層部で首を切られ、左遷となった人は少なからずいることだろう。







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