石破茂地方創生相はブルームバーグ・ニュー スのインタビューで、各自治体に競争原理を導入することが地方活性化 に不可欠だとして、結果として格差が生じることも止むを得ないとの認 識を示した。
地方自治体について石破創生相は22日、「競争しろというのか、そ の通り。そうすると格差がつくではないか、当たり前だ」と述べた。努 力した自治体としないところを一緒にすれば「国全体が潰れる」と語っ た。国の関与は教育や社会福祉などの最低限度の生活水準を維持するナ ショナルミニマムの保障にとどめるべきだとしている。
主要7カ国(G7)でも最大の負債を抱える日本の財政事情が石破 氏の見解の背景にある。1000兆円超の国・地方の長期債務残高のうち国 が占める割合は8割以上。一層の歳出削減の必要性があり、地方の自助 努力を求めざるを得ない。地方経済を支えてきた公共投資もピーク時 の1998年の約15兆円から2014年には約6兆円に減っている。
みずほ総合研究所の岡田豊主任研究員は石破氏の政策について「住 民に対する警告だ」と指摘、何をしなくても10年、20年で立ち行かなく なる自治体が出てくるとして「今のうちにやっておこうということだ」 と述べた。地方自治体は今まで何をしてきたのかが問われているとして 「結果的には自然淘汰になる可能性がある」とも語った。
石破氏は、国の政策の下で自治体はこれまで同じように栄えて衰退 したとして「それを止めるのは今しかない」と述べた。昨年末に政府が まとめた国の長期ビジョン・総合戦略を基に各自治体は、中長期の将来 展望を策定してまちづくりを進める予定だ。
発想の転換を
公共投資と企業誘致という2本柱はもはや期待できないと石破氏は 語り「農業・漁業・林業・観光業やその他サービス産業のポテンシャル をいかに伸ばしていくかだ。それを霞が関で考えてもどうにもならな い。それぞれの市町村で考えて下さいということだ」とも話した。
公共投資は、一挙に耐用年数の50年を迎えつつある道路や公共下水 道などの社会インフラの維持修繕に向けられつつある。石破氏は「政府 として必要な公共事業はやるが、公共事業で多くの雇用と所得を確保 し、地方が活性化することはない」と述べた。
製造業を中心とした企業誘致については「円が安くなっても自動車 や電気製品は消費者がいる中国やインド、東南アジアで作った方がい い。企業はそう簡単に帰ってこない」と予想した。
政府は60年に人口1億人程度を確保する「長期ビジョン」を掲げ る。実質GDP成長率は50年代に1.5-2%程度を維持する。その達成 のために農林水産業の成長産業化や起業の地方拠点化などの重要業績評 価指標(KPI)の設定などを盛り込んだ総合戦略を取りまとめた。こ れらを基に地方自治体が地方版総合戦略を策定する。
地方が自ら
石破氏は「総合戦略は19年度までの5カ年計画だが、発現していく のはおそらく20年後、30年後だ。この5年間でその流れを不可逆的なも のに変えていく」と述べた。地方は自由に使える資金が欲しいというの が要望だとしながら「お金を何に使うのかが分からなければバラマキ だ」として地方自治体に発想の転換を求めた。
安倍政権が地方に着目するきっかけの1つは、増田寛也元総務相が 全国約1800の自治体のうちほぼ半数の896自治体が消滅する恐れが高い と警鐘を鳴らした昨年5月の「増田ショック」だ。40年までに20歳か ら39歳の若年女性が50%以上減少して地方の人口が急激に減ると予想、 東京への一極集中に歯止めを掛けるため地域の拠点都市への投資を促す 報告書をまとめた。
安倍晋三首相は5日の記者会見で地方創生について「重要なことは 地方が自ら考え、行動して変革を起していくことだ。国も予算や人材等 あらゆる方策を使って応援する」と発言した。政府は今年度補正に3275 億円、来年度に1兆3991億円の関連予算を計上している。
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