3. 発覚6ヶ月前・突きつけられた離婚

夏休みの間は花梨ちゃんも夏休みで、楓花さんが実家の家事をすることになっていた。 その為、私は矢代のお昼御飯は作らなくていい。 義母に電話してお婆様の様子を伝えて終わり。 『あっ、杏ちゃん？』 「はい」 『今朝、航大にちゃんと話しておいたからね』 「あっ…すみません」 『仕事そこそこに、家庭を大切になさいって』 「お義母さん…」 『ちゃんと伝えてあるから大丈夫よ』 車の中で電話を済ませ、私はその後買い物に出掛けた。 久しぶりの夫婦だけの夜。 航大の大好きなスペアリブを作って、テーブルコーディネートも頑張った。 シャンパンが好きな航大へ、奮発してシャンパンも購入してきた。 家では普段スパークリングワインばかりだけど、今日くらいはと思って。 身なりも整えた。 きっと久しぶりの夜になる、下着も新しいものを…。 航大の車の音がすると、私は玄関まで迎えに出た。 「おかえりなさいっ！」 彼に声を掛けたけど、航大は何も返して来ない。 玄関で靴を脱いで、リビングへ向かう航大を追った。 「お疲れ様、お風呂先に入る？」 航大を追い掛けて問い掛ける。 航大は、ダイニングテーブルの前に立って、料理を眺めていた。 「…航大？」 ダイニング側に居る航大の後ろ姿に、リビング側に居る私が呼び掛ける。 まだ、ナイーブ航大は継続中な様子… 「…お袋に何言った？」 航大はこちらを見ずに呟くように言った。 「えっ？」 「お袋に何言ったんだよっ！？」 声を上げてこちらに振り向いた航大。 大きな声にビクッとなり、 見たことない航大の恐い顔に身体が硬直した。 「自分の思い通りにならなかったら、すぐ人任せか！？」 航大は大きな声で話を続けた。 「自分一人じゃ何も出来ないんだな！？」 こんな顔見たことない。 こんな大きな声、上げられたことない。 「もう、うんざりなんだよっ！！」 持っていた鞄を床に投げ棄てた航大。 「杏、離婚してくれ」