3. 発覚6ヶ月前・突きつけられた離婚

午前0時になっても、航大から連絡がない。 居酒屋に到着して、メンバーと合流するとLINEが来たのは18時前だった。 もう6時間も経過している。 気の許す友達と話し込んでいる？ 会場はタクシーでも帰って来られる距離ではある。 優子さんに連絡を取るにも、もうこんな時間だ…。 もう少し早く連絡してみたら良かったな… そんなことを思いながら、スマホを触っていると、LINEのタイムラインに気付いた。 4時間前に優子さんのタイムラインがアップされていた。 〈娘が発熱…。知恵熱でありますように…〉 そんな文面と共に、39℃の体温計の写真がアップされていた。 二葉ちゃんが発熱したんだ…。 〈まだ熱下がらない？〉とコメントをすると、優子さんは間もなく〈下がらない。症状的に手足口病かヘルパンギーナっぽい。見分け方わかる？〉と返信があった。 私は優子さんに電話を掛けた。 『もしもし、杏ちゃん？ごめん。わざわざ電話くれたの？』 「ううん、大丈夫？口の中に赤い水ぶくれがあるんですか？」 『そうなのよ。泣くし喚くしグッタリ～。さっきやっと寝たのよ』 「お疲れ様、優子さんも辛いね」 旬は手足口病もヘルパンギーナも経験がある。 幼い頃は季節病には必ず掛かってしまう子だった。 「手足に水ぶくれはないですか？小さいポツポツした感じ。手のひらとか太ももとか…」 私の問い掛けに、彼女は唸りながら二葉ちゃんを観察している様子。 『あっ、あるっ！！足の裏に！！』 優子さんが声を上げた。 「じゃぁ、多分手足口病。でも念のため明日病院に行った方がいいかもです」 『ありがとうっ！昨日一緒に遊んだお友達が手足口病みたいで二葉も一緒かもと思いながらももし違ったらと思って…』 「そうだったんですね…」 優子さんは安心した口調で、こそこそ話ながら移動してる様子。 『ありがとうね』 普通の声の音量になる。 「…あの、ひとつ聞いていいですか？」 『うんうん。何？』 「ご主人、まだ帰宅してませんか？」 『あっ、そう言えば…。帰って来てないっ！！』 その言葉に少しホッとした。 『杏ちゃんとこも？ 』 「はい…。ちょっと心配になっちゃって」 『羽伸ばしすぎだよね。男連中は！』 私は笑った。 「すみません…。今、航大ナイーブになってて…。神田さんに聞いて貰ってるのかも…」 『あっ、パパも言ってた。なんか航大を元気付ける秘策があるとか何とか』 航大は神田さんにも相談していた様子だ。 『あっ！噂をすれば帰って来た！！』 優子さんのその声に私達はお互い「またね」と電話を切った。 会場から神田さんの家までの方が近い。 航大はもう少し時間がかかると思った。 〈駅まで迎えに行くよ～〉 航大にLINEを送る。 既読にならない。 電車の中で寝てるのかもな…。 私はスマホを手に持ったまま、リビングのコーナーソファに深く座って身を沈めた。 少ししたら連絡もくるだろうと、連絡を待った。 そして、いつの間にか眠ってしまっていた。