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夏休み前の一週間は忙しかった。
旬の学校の個人懇談に行ったり、
航大の父から夏が開けた9月から航大を昇進させると発表があったり…
航大は将来的に矢代の会社を継ぐ人間。
だから、誰よりも昇進は早い。
本人はナイーブな性格も持っていて、航大の父からの内示に肩を落としていた。
「俺なんが、部長になるのなんか早すぎるんだよ…」
ナイーブ航大が顔を出した。
航大の気持ちもわかる。
小さい頃から知っている従業員を部下に持つって難しいことだと思う。
しかも今回義父が航大を指名したのは、営業部長の席だった。
義父には義父の考えがあるのもわかるし、恐らく義父も通った道なのだろうけれど、航大が少し可哀想だった。
「営業部長になったら、出張も多いんだよ…」
自宅が大好きな航大にとってそれも憂鬱のようだ。
「頑張って…。私も出来ることは何でもするから…」
寝室のベッドに座り、肩を落とす航大の手を握って、私は地べたに膝つき彼を見上げた。
「…ん」
小さく返事した彼。
180センチの高身で、鍛えられたガッチリした身体の彼が弱音を吐くのは、この寝室の中だけ。
寝室の扉を出たら、彼は強い父になり、夫になり、男になる。
だからからなのかもしれない。
旬に入らないようにときつく注意したのは…。
私は立ち上がって彼を抱き締めた。
航大のこんなギャップも私は愛している。
昇進→出張→浮気の図式
理想の夫婦だよね。杏ちゃんは包容力のある女性。外で男として強くある為に弱音を吐ける場所を作ってあげて。妻の鏡✨ナイーブでお家大好き航大可愛い🎵なのに昇進と出張が多くなったことが切っ掛けかな?