厚労省はCOCOAを死ぬ気で普及させるべき
森田:私は以前、携帯電話のGPS位置情報を使って感染者を早い段階から特定できれば二次感染を防ぐ非常に有効な方法ではないかと言って、個人情報を使うなどとんでもないと怒られたことがあります。ただ、それもだいぶ現実的になってきました。接触確認アプリ「COCOA」は私も入れていますけれど、あれについてはどう思われますか。
西浦:実際のところ、クラスター対策におけるGPS位置情報の利用に関しては早期から検討しておりまして、3月前半の頃から強烈にお願いをしていました。複数の国の水面下情報で、GPS位置情報がかなり有効に機能したことをうかがっていましたので。しかし、やはり個人情報の関係で、ほぼご法度のような状況でお話が進んでしまいました。それはアプリがあったためでもありますが・・・。
実は、他国で開発されたアプリ「TraceTogether」を実装すべく、他に先駆けて熱心に試験運用に取り組んでいたアツい気持ちを持つベンチャーがありました。その会社を含めた複数社がアプリを試験的に開発し、内閣官房の特命チーム「テック」もスムーズな導入を期して頑張っていました。
その中で、厚労省によってCOCOAというアプリが紆余曲折を経た上で実装されるんですけれど、普及率がまだ10%程度にしか達してないと思います。COCOAの実装によってGPS使用の願いが一時的に消え、アツい気持ちを持ったベンチャーの若者たちが涙しました。COCOAを死ぬ気で普及してくれないと、この話は日本の官僚体制による大変不幸な失態になってしまいます。
でも、この話は後退してはいけない。どれぐらいの人が接触確認に登録すればどこまで封じ込めできるかというシミュレーションは英国の先輩の研究結果で出ています。学術誌「Science」にシンガポールでの取り組みが紹介されたのですが、流行制御のためのアプリの必要普及率も計算している、という衝撃的な内容でした。