無傷では実現できない感染対策と経済の両立
森田:経済と感染症対策の「両立」という言い方がされますが、日本の場合にはゼロリスクというのがあるべき状態になっているように思います。経済もまったく傷がつかず、感染者も減ることを目指すのが両立というふうに言ってるように思えます。
しかし、実際にはそんなことは起こらない。実際に重要なことは、トータルなダメージを最小化することです。でも、ダメージの話はなかなか言えないので、感染が広がるから移動しないようにと言いながら、他方でGo Toトラベルというキャンペーンを同時にやるという、そういう形で出てくるのかなと。
西浦:観光に関しては、僕も北海道と京都府という観光業と深く関係している地域にお世話になっているのでとても強く感じます。両方とも大打撃を受けている場所ですから。だから「感染しないように行ってくれ」と言うしかないのもよく分かります。
でも、感染者が増えれば増えるほど、今は関係者の皆さんの良心で社会資本として成り立っている病院経営が、いつ終わりを迎えるのかなというあたりがとても不安に思います。
感染者が増えると病院の負荷は入院管理の面でも経営面でも大きくなっていきます。感染者を受け入れている公立病院だけじゃなくて、他のところも含めて受け入れざるを得なくなりますし、受け入れると決めてないところで感染者が増えるのも大変難しいところだと思っています。それを防ぐには本来的には感染者を減らすのが最良の策なのですが・・・。
第二波で国や地方公共団体の要請で受け入れたところも、これ以上、支援もなしに負担ばかり要求されると、そもそも収入が減っているわけですから、第三波以降で協力してもらえるのか、長期的な視点で考えないと現場の信頼は得にくいかもしれません。(後編に続く)
(まとめ・前濱暁子、編集・藤田正美)