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 コロナ感染者に対する差別的な言動が後を絶たない。人権を傷つける見過ごせない行いであるだけでなく、感染拡大を防ぎ社会経済活動を維持していくうえでも大きな障害になる。

 最近では、運動部などで起きた集団感染を公表した高校と大学が理不尽な非難を浴びた。島根県の私立高では、関係ない生徒の写真もネットに掲載され、奈良県の私大の学生たちは、教育実習の受け入れ先やアルバイト先から参加や出勤の見合わせを求められたという。

 この2校に限らず、施設や企業などが感染者が出たことを明らかにするのは、接点があった人々に注意を促し、拡大を抑えるためだ。だが公表すると激しい攻撃にさらされるとなれば、事実を隠す方向に流れ、感染経路の追跡もできなくなる。

 オンライン講義を続ける大学からは「こんなふうに袋だたきにされては、感染リスクを引き受けて対面授業を再開することなど、とてもできない」との声も聞かれる。学校の正常化を妨げ、若者の日々の生活、そして将来にも暗い影を落とす。

 奈良の大学の地元首長は「世間さまに謝れという圧力が、私たちの心をむしばんでいく」と述べ、萩生田光一文部科学相は感染者や学校を責めないよう求めるメッセージを出した。

 危険と隣り合わせで患者の治療にあたる医療従事者を、周囲から排除する動きや風評被害も続く。感染者の多い地域からふるさとに帰った人が、帰省した事情などお構いなしに批判される事例も見られた。

 大切なのは、差別や中傷を許さない姿勢を社会全体で示し、必要な手当てを講じることだ。

 岩手県では、感染した個人を特定したり非難したりするSNS上の投稿を見つけると、その画像を人権侵害の「証拠」として保存している。長崎県は相談窓口を設け、必要に応じて弁護士を紹介して費用を支援するほか、悪質な書き込みがないかを調べるネットパトロールを始める。差別を禁じる条例を制定する動きも各地に広がる。

 コロナ対策にあたる政府の分科会もワーキンググループを作り、この問題にどう対処していくか議論することを決めた。自治体の取り組みとの連携も求められよう。感染情報の公開が差別・偏見やプライバシー侵害につながっているとの指摘もあるが、だからといって過剰な縛りをかければ、別の不安や行政への不信を引き起こしかねない。慎重な検討が必要だ。

 感染する可能性は誰にでもあり、感染者を責めたところで何の安心も安全も得られない。コロナの時代にどう向き合うか、一人ひとりが問われている。

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