民主党政権は、30日に予定されていた防衛白書の閣議了承を、直前の28日になって9月に先送りする決定を急遽行いました。
既に約940万円をかけて、1万4千部以上を印刷しているにもかかわらずです。

仙谷官房長官は記者会見で、韓国の哨戒艦沈没事件を巡る動向を加える必要などを延期理由に挙げましたが、これは表向きの口実です。
防衛白書は毎年、わが国固有の領土である北方領土や竹島の領土問題が依然、未解決のまま存在していると記載しており、韓国はそれに抗議してきた経緯があります。
日韓併合100周年を来月に控え、その直前に竹島の記述がある防衛白書を発表することで、韓国を刺激したくないとの配慮に他なりません。

また、同じく領土問題を抱えるロシアに対しても、目先の摩擦を避けようとしてきました。
日本が降伏文書に調印した9月2日を事実上の対日戦勝記念日とする法律をロシアは成立させました。
終戦日である8月15日以降に対日参戦し、北方領土を不法占拠したロシアを正当化する意図があることは明らかです。
この問題でも、政府はロシアに通り一遍の抗議をしたに過ぎません。

領土問題は国益に直結する重要事項です。
立場は異なれども、お互いに堂々と主張をし、解決のために議論を積み重ねていかなければなりません。
一時しのぎで論点を隠すようなことをすれば、余計に信頼を損なうものです。
事なかれ主義の対応がどれほど軽率なことか、外交姿勢を大いに反省すべきです。

そもそも民主党政権は、国民の生命と財産を守るという政府の根本使命を理解していないと思います。
今月7日には、韓国に対する新たな戦後個人補償の検討を示唆する発言を仙谷官房長官が行いました。
日韓両国間の戦後処理は、昭和40年に締結した日韓基本条約とそれに伴う協定により、日本は韓国にある財産資産を全て放棄する代わりに、韓国側も賠償を放棄することを合意し、決着した問題です。
日本は協定に基づき、当時の韓国の国家予算の倍以上の膨大な経済協力支援も行いました。
この支援をもとに、韓国はインフラ整備などを行い、その後に漢江の奇跡といわれた高度経済成長を成し遂げたのです。
いたずらに蒸し返し、相手に期待をもたせるべきではありません。
同じく歴史問題を抱える中国など、他国との間にも波及する可能性もあります。

日本として主張すべきは毅然と主張しなければ、将来に禍根を残すことになります。
日本の国益を見据え、野党の立場から厳しく監視していきます。