◆症状酷似、難しい初診
連日の暑さで熱中症患者の搬送が続く中、岐阜県内で今月中旬、当初は熱中症と診断されていた70代の男性が、新型コロナウイルスに感染していたと確認された事例があった。発熱はあったものの、せきの症状はなかったため、本人も熱中症を信じて疑わなかったという。県医師会常務理事で感染症担当の磯貝光治医師(53)は「発熱や全身の倦怠(けんたい)感など、熱中症と新型コロナには似た症状があり、初診ですぐに見極めできない場合もある」と診断の難しさを語る。
男性は中濃地域に在住。家族によると16日夜に37度台の熱が出て、翌日に医療機関を受診。熱中症と診断され、点滴治療を受けたという。平熱に下がったため、その日は勤め先の介護施設に出勤したが、再び37度台の熱が出たため18日から仕事を休んだ。点滴治療を続けていたが、数日後に39度台に熱が上がったため、紹介状を書いてもらい別の医療機関を受診。発熱が続いたことからPCR検査を受け、新型コロナの感染が判明した。現在は入院して治療を受けている。
新型コロナと熱中症について、磯貝医師は「発熱以外にも全身の倦怠感や頭痛など共通する症状は多い」と初診での見分けの難しさを挙げ、「一時的に熱が下がっても、しばらくして再度発熱するなら、新型コロナを含めた感染症を疑うべき」と指摘する。
また熱中症についても「症状の進行が早いことが多く、その意味では熱中症の方が怖い。特に高齢者は暑さやのどの渇きを感じにくく、内臓機能も低下していることが多いので熱中症の重症化リスクも高い。こまめに、十分な水分補給をして」と注意を促す。
男性の感染経路は不明という。医療機関を受診していても、すぐに新型コロナと判明しなかった事例を周知すべきとして、家族が取材に応じた。「本人は熱中症だと思っていたので、新型コロナに感染していると分かった時は驚きを隠せずにいた。高齢者は新型コロナにも、熱中症にも気を付けてほしい」と話した。