ファクトチェックとは
SNSなどで誰でも情報拡散の担い手になれる時代、真偽の定かでない情報が大量に広がっています。
どうやって真偽を見極めたらいいのか? 手助けになるのが「ファクトチェック」です。
ファクトチェック(Fact-Checking/真偽検証)とは、「社会に広がっている情報・ニュースや言説が事実に基づいているかどうかを調べ、そのプロセスを記事化して、正確な情報を共有する営み」です。
日本にファクトチェックを根付かせたい
わたしたちFIJ=ファクトチェック・イニシアティブは、ファクトチェックをジャーナリズムの重要な役割のひとつと位置づけ、社会に誤った情報が拡がるのを防ぐ仕組みを作っていこうと、2017年6月、ジャーナリストや専門家ら10人の呼びかけで発足したNPOです。
「フェイクニュース」が流行語のようになり、誤った情報の問題が広く認識されるようになりましたが、日本においてファクトチェックの担い手はまだ非常に少ないのが現状です。世界各国での先進的な取組みに学びながら、ファクトチェック推進・普及のための様々な活動に取り組んでいます。
これまでにも多くの個人・団体のみなさまのご参加・ご支援をいただき、おかげさまで一定の成果と、それを実現するための基盤作りが実現しました。またこの7月には認定NPO法人としての新たなスタートも切ることができました。今回のキャンペーンで、みなさまには、このわたしたちの活動の継続とさらなる発展を中長期にわたり支えていただきたく、お願い申しあげる次第です。
活動を支える仕組みとつながり
新型コロナウイルスに関連して、世界中で数多くの誤情報・偽情報が飛び交っています。FIJでは2月に特集ページを開設し、内外の疑わしい情報についてご紹介しています。また、リニューアルした英語版サイトや、スマートニュース米国版への記事配信など、日本に関わる誤情報についての世界に向けた発信も始まりました。
この活動は3つの仕組みとつながりに支えられています。
1つめは、国内の疑わしい情報を収集・共有するための2つのシステムです。「FCC(Fact-Checking Console)」は、AIを活用してネット上で疑わしいと指摘されている情報の収集を常時行っています。また昨秋より稼働を始めた疑義言説データベース「ClaimMonitor2」には、FCCからの情報や一般の方からの通報などを集積し、これに関連情報を付加してFIJと協力関係にあるメディア(メディアパートナー)やFIJの会員に提供しています。
▲FCCシステム概念図
2つめは、海外の団体との繋がりです。台湾やインドのメディアに協力し、彼らがキャッチした日本や日本人に関する疑わしい情報について記事化が実現しています。また、世界各国のファクトチェック団体のネットワーク組織であるIFCN(国際ファクトチェックネットワーク)がまとめた疑わしい情報のデータベースにアクセスし、その中から重要な情報を抄訳し特設サイトでご紹介しています。
そして3つめは、これらを通じて得た情報を共有し、情報発信につなげていく仕組みです。いま展開している「国際協力プロジェクト」では、学生を中心とした十数名のスタッフが、国内調査/海外調査/情報発信等のグループに分かれ、ローテーションを組んで作業に当たっています。数多くの情報の重要度を評価しつつ共有する作業や、迅速な調査レポートの作成、ウェブサイトの更新などに、若い力が不可欠な貢献を果たしています。
信頼できる情報の提供を続けていきます
今回の新型コロナウイルスについての取り組みでは、わたしたちが目指してきた、市民とメディアの協働モデルがようやく本格的に動きはじめました。 日々コンスタントに情報収集と調査・発信を行い、「メディアパートナー」として協力関係にあるメディアやジャーナリストに無償で情報を提供し活用してもらう仕組みが稼働しています。
わたしたちFIJは、こうした取り組みが社会には常に必要であり、わたしたちのような独立した団体が使命感を持って取り組みを続けていくことが重要と考えています。
今回の感染症流行のような、不正確な情報に対する不安が特に大きくなる時期には多くの方からご注目をお寄せいただいております。しかしFIJのこれまでの3年間の活動期間だけでも、大きな災害、選挙などの政治の節目、ヘイト問題等の社会を分断させる動きなどが相次ぎ、信頼できる情報は常に求められています。
ファクトチェックの成果を日々ご提供すること、そして活動を通じて若いスタッフが市民として、また新しい時代の報道を担う立場へと成長すること。みなさまにはぜひこうした成果・成長、そして「誤った情報に惑わされない社会」の実現への長い道のりを、マンスリーサポーターとして支えていただきたく、お願い申しあげます。
ご寄付を「誤った情報に惑わされない社会」づくりに
より多くのメディアや個人が参加するファクトチェックのネットワークをひろげるために、今後も以下の事業を続けてまいります。ご寄付は、調査・発信の仕組みの維持と、日々これに携わるスタッフの確保、そして国内外の専門家に知見をお寄せいただくために、有効に使わせていただきます。
・疑義言説の収集ー共有システムの運用
・ファクトチェック関連情報の発信(ウェブサイト・SNS等)
・セミナー・シンポジウム等イベントの開催
理事長ごあいさつ
瀬川至朗(早稲田大学政治経済学術院教授)
2016年のアメリカ大統領選挙では、「ローマ法王がトランプ候補の支持を表明」などのフェイクニュースが多く共有され、拡散したことはご存じだと思います。フェイクニュースや真偽不明の情報がSNSを通じて急速に拡散する時代になり、市民が健全な判断をしにくくなる状況が生まれています。米国や欧州、そしてアジア諸国などでは、そうした情報環境の変化に対応して、ファクトチェックの取り組みが盛んになっています。
ファクトチェックの推進は、以下の3点に資すると考えています。
①誤報・虚報の拡散防止
②ジャーナリズムの信頼性向上
③言論の自由の基盤強化
FIJは、日本におけるファクトチェックを推進・普及するためのプラットフォーム団体です。ファクトチェックを行う組織や個人をサポートし、ファクトチェックの担い手を増やし、育てていきます。それにより、誤情報や偽情報に惑わされにくい社会の構築に向けて貢献したいと考えております。
ご支援とご協力を、どうぞよろしくお願い申し上げます。
2020年1月、韓国のファクトチェック関係者らとともに。