ボイスチェンジャーがないと話せない・親が死んでも葬儀屋への電話ができないひきこもり達 ~ネット配信者が仲介役に~

動画障害者ルポ

【愛の鞭・暗黙の了解が理解できない生きづらさ】

 

 

様々な支援者の声を聞くと、ひきこもりの中には相当数の発達障害者がいるのではないかというが、原科さんも発達障害の特性を感じることは多いという。

 

「そういう話をすると、ひきこもりのイメージを固定しすぎているとよく批判されるのですが。礼儀もしっかりわきまえていて、話していても何も違和感がない人でも、仕事になると人間関係などでつまずいてしまうという方も多いです」
ひきこもりたちはコミュニケーションが苦手だ。

 

「申し合わせたわけじゃないのに共通項が見えることがありますね。例えば、この人は顔が笑っているけど、目が笑っていないからお金を貸したらいけないとか、そういうことって全体的な雰囲気から何となく分かるじゃないですか。ひきこもりたちに聞くと、まず分からないといいます」

 

つまり多数派の人たちが、暗黙の了解で分かることがひきこもりたちには分からない。

 

分からないから騙される。
分からないから人が怖い。

 

様々な場面でつまずいた結果、家にひきこもらざるを得ない人たちがたくさんいる。

 

「愛の鞭って分かるか聞いて回ったことがあります。ほとんどのひきこもりが、愛の鞭を理解できず暴力は暴力だと答えます。先生にビンタされたら、暴力でしかない」
学校生活において、教師による愛の鞭としてビンタをされ、それが卒業後にいい思い出話となることもあるのではないか。

 

しかし、ひきこもりたちの多くはそれは暴力でしかないと認識する。

 

そして、自分が叩かれていなくても友人が目の前で叩かれたことを映像のように記憶し、毎晩夢に見てうなされる・トラウマになってしまうというケースもある。もちろん、ひきこもりにも程度の差があるので、全員が全員そうではない。

 

「『ご飯を一緒に食べませんか?』と言われたときにどう思うか聞いてみたことがあるんです。何て答えたと思います?」

 

多数派と言われる人であれば、仕事の付き合いで関係を深めるため、異性を誘うためなどの理由で、一緒に食事をすることを口実にすることも多いだろう。

 

しかし、ひきこもりたちは
「ご飯を食べるってことは白米だけ食べて、おかずは食べないのか?」
と回答した。

 

この回答で分かるように、暗黙の了解やノンバーバルなコミュニケーションが理解できない。

 

「ご飯を食べる」イコール「白米を食べる」と額面通りとらえるのだ。それでは社会生活でつまずくことが多いのはうなずける。

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