ボイスチェンジャーがないと話せない・親が死んでも葬儀屋への電話ができないひきこもり達 ~ネット配信者が仲介役に~

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【生きづらい人がより生きづらくなった余裕がない社会】

 

 

原科さんはバブル経済を謳歌した世代だ。

 

「昔もひきこもりはいたと思うんですよ。だけど、1980年代くらいは、企業にも余裕がありましたよね」
原科さんは工場でライン作業の仕事をしていたが、当時は1ラインに12人くらいいた。
「なので、2人休んだとしても、人を補充しないでも仕事が回りました。だけど、時代とともに、その人数が減っていきましたね。そういった社会の余裕のなさもひきこもりが増えた原因でしょう」

 

昔だったら、遊びの中でも「おみそ」と呼ばれる存在がいた。「おみそ」「おまめ」「おとうふ」と地方によって呼び方は異なるが、自分たちよりも幼い子や劣る子が鬼ごっこなどの遊びに入ったとき、その子だけは鬼にならないなど、別ルールを作るというような遊び方があった。

 

会社の中にも「おみそ」的な存在が許されていたのは、企業に余裕があったからだ。

 

職場で全体的なバランスを考えて動けない人、どうしても多数派と同じようにできない人を受け入れる余裕があった。

 

しかし、バブル経済が崩壊し、世の中は「おみそ」的な存在を受け入れる余裕を失った。採用される人数はどんどん減り、即戦力が求められ、マルチタスクを当たり前に求められる。職人の世界が消滅していったのも、原因の一つだろう。

 

そうして「みんなと同じことを同じようにする」ということができない人たちは行き場を失った。

 

「行き場を失って外に住んでいるのがホームレスの人たち。家にひきこもって親の世話になっているのがひきこもりたち。昔からおみそ的な存在の人は一定数いたけど、それを受け入れる余裕が社会になくなりましたよね」

 

日本経済の低迷や、働き方が変わったことは、ひきこもりの増加に大きく影響しているだろう。

 

「ひきこもりの人たちの生きる道を政治家の方たちとも話しますが、なかなか解決策がない」

 

ひきこもりにリーチできている原科さんでも、そう思うという。

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