宮崎県種雄牛 精液が流出 7道県へ 海外転売の恐れ
2020年07月14日
 宮崎県の県有種雄牛「耕富士」などの精液が、不正に県外へ流出していたことが、県への取材で分かった。家畜人工授精師が必要な精液証明書を添付せず、7道県の授精師に渡していた。県は当該の授精師4人を家畜改良増殖法に基づき3カ月~1年の業務停止処分にした。本来は宮崎県内でしか使えない精液だった。専門家からは、精液が不当に海外へ流出していないか懸念する声が出ている。
 
県によると2016~18年、授精師の1人が、精液ストロー約120本を精液証明書を付けずに県内の別の授精師に譲渡した。その中には、県を代表する種雄牛「耕富士」「満天白清」のものが含まれる。受け取った授精師は、このうち約40本を2人の授精師に渡した。そこから北海道などの人工授精師にさらに精液が渡ったもよう。
家畜改良増殖法では、証明書なしに精液を譲渡、使うことは禁止されている。県は「違法性を認識した上で授精師は譲渡していた」(家畜防疫対策課)とみる。
県は、県種雄牛の精液使用を県内に限っている。管理・供給するのは県家畜改良事業団。不正流出を防ぐため、11年にはスマートフォンなどを活用して精液の使用状況を随時報告するシステムができた。事業団が供給した精液のうち、不使用のものは在庫扱いになり、使用実態の把握は難しいという。県は「(不正譲渡は)各授精師のモラルの問題だが、精液の管理システムを見直す必要がある」(同)と話す。
和牛精液の流通に詳しい、神戸大学大学院の大山憲二教授は「証明書を添付せずに流出した精液で生まれた子牛を、繁殖もと牛として国内で登記することは難しい」と指摘。「最も懸念されるのは海外流出の可能性だ」と警鐘を鳴らす。
農水省は、家畜遺伝資源の不正競争防止法を今秋に施行予定。精液などを不正に取得、利用した場合の刑事罰化や差し止め・損害賠償の請求措置などを盛り込む考え。
 県によると2016~18年、授精師の1人が、精液ストロー約120本を精液証明書を付けずに県内の別の授精師に譲渡した。その中には、県を代表する種雄牛「耕富士」「満天白清」のものが含まれる。受け取った授精師は、このうち約40本を2人の授精師に渡した。そこから北海道などの人工授精師にさらに精液が渡ったもよう。
家畜改良増殖法では、証明書なしに精液を譲渡、使うことは禁止されている。県は「違法性を認識した上で授精師は譲渡していた」(家畜防疫対策課)とみる。
県は、県種雄牛の精液使用を県内に限っている。管理・供給するのは県家畜改良事業団。不正流出を防ぐため、11年にはスマートフォンなどを活用して精液の使用状況を随時報告するシステムができた。事業団が供給した精液のうち、不使用のものは在庫扱いになり、使用実態の把握は難しいという。県は「(不正譲渡は)各授精師のモラルの問題だが、精液の管理システムを見直す必要がある」(同)と話す。
和牛精液の流通に詳しい、神戸大学大学院の大山憲二教授は「証明書を添付せずに流出した精液で生まれた子牛を、繁殖もと牛として国内で登記することは難しい」と指摘。「最も懸念されるのは海外流出の可能性だ」と警鐘を鳴らす。
農水省は、家畜遺伝資源の不正競争防止法を今秋に施行予定。精液などを不正に取得、利用した場合の刑事罰化や差し止め・損害賠償の請求措置などを盛り込む考え。
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 2020年08月27日
  
 
 青果卸の経営悪化 市場活性化流通一体で
  青果物を扱う全国の主要卸売会社の2019年度決算で、営業赤字を計上した卸が過半に上った。本紙が調査を始めた01年度以降、最も厳しい。市場流通に支障を来し、産地にも影響を及ぼしかねない。改正卸売市場法や新型コロナウイルス禍への対応など課題も山積みで、経営安定への事業構築が急務だ。
 日本農業新聞は01年度から、卸に事業報告書の開示を求め、分析してきた。19年度決算では、全国中央市場青果卸売協会加盟の81社と売上高が200億円以上の青果卸など計86社を対象とし、回答のあった67社をまとめた。
 調査では①売上高が前年度を下回る減収は61社(91%)で、9割は3年連続②営業損益で34社(51%)が赤字を計上し、前年度の35%から急増③卸売市場法の改正以前に農水省が健全性の目安にしていた「3期連続の経常赤字」「自己資本比率10%未満」「流動比率100%未満」に該当する青果卸が複数あり、財務内容の悪化が懸念されること──などが分かった。
 業績悪化は、野菜価格の長期低迷が主因だ。春先からの天候不順や五つの台風の上陸などがあったが、おおむね豊作傾向で供給過剰となった。19年度の主要野菜14品目の日農平均価格(各地区大手7卸のデータを集計)は過半の月で平年(過去5年平均)比1、2割安と落ち込んだ。産地の出荷市場の絞り込みに伴う利益率の低い買い付け集荷や、小売りを中心とした川下のバイイングパワーもあり、収益を悪化させたとみられる。
 注視すべきなのは、本業のもうけを示す営業損益の落ち込みだ。卸売り業務で利益の確保が難しい深刻な状況にある。これまで営業赤字は、売上高が小規模の卸や地方の市場でその傾向が見られた。しかし、今回は売上高の規模に関係なく、売上高がトップ10のうち4社が該当。地域別に見ても、集荷力が強い東京都中央卸売市場で営業する9社のうちの4社や、宮城県や神奈川県、大阪市、兵庫県、広島県といった中核都市の卸でも営業赤字が相次いだ。専門家は「大都市に林立する卸間の過当競争や経営格差の拡大という構造的な問題が表面化した」とみる。
 6月施行の改正卸売市場法では従来の取引規制が緩和され、市場間、卸売会社間の競争は一層激しくなる。1次加工や配送など、小売業者や加工・業務用のニーズに応える機能を充実させ、販路を確保し、集荷力や利益率を高めたい。
 新型コロナ禍で食の安定供給への関心は高まった。国産青果物の卸売市場経由率は8割で、農産物流通の中核を担い社会的必要性は揺るがない。しかし「既存の市場、卸の全てが存続できることを意味しない」と厳しい見方もある。市場流通システムの崩壊を防ぐには、卸や仲卸だけの努力では乗り切れないだろう。行政や産地、小売りといった流通関係者ぐるみで活性化策を探り、実行すべきだ。
 
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 2020年08月26日
  
 
 オカワカメおかゆ JAグリーン大阪
  JAグリーン大阪が販売する、特産のオカワカメを具材に取り入れたおかゆ。
 オカワカメは、ワカメのような食感が特徴の野菜。別名「雲南百薬(うんなんひゃくやく)」で、ミネラルなどの栄養価を豊富に含む。
 商品はオカワカメとJA管内産米「ヒノヒカリ」で作った。そのままレンジで温めて食べられる他、冷がゆもお薦め。保存期間は8カ月で、災害非常食にもなる。
 1個(250グラム)198円。同JAの直売所「フレッシュ・クラブ」で販売する。問い合わせは同直売所、(電)06(6747)1831。
 
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 2020年08月27日
  
 
 狙いは半農半X 焼き畑 復活ののろし 滋賀県長浜市余呉町中河内
 労力省き収入源に
 かつて全国各地で営まれていた焼き畑農業をよみがえらせようとする動きが広がっている。地域の伝統農業の継承や、放置里山林の再生など、地域によって狙いはさまざま。少ない労力で一定の収入が得られる点に着目し、「半農半X」の形で、山村での収入源の一つに確立しようとする取り組みもある。復活ののろしを上げる現場を取材した。(北坂公紀)
 
 滋賀県北部に位置し、福井・岐阜の両県と接する長浜市余呉町。豪雪地帯として知られ、国内最南端の「特別豪雪地帯」に指定されている。
 同町の山間部にある中河内地区では、1960年代ごろまで焼き畑農業が営まれていた。森林ではなく、ススキなどが生える草地で行うのが特徴で、雪崩の影響で木が生えない山裾の草地を活用。火を入れて赤カブや雑穀を4年ほど栽培した後、数年から十数年の休閑期間を設けて草地を再生し、再び火を入れるという周期を繰り返す。
 同地区に住む佐藤登士彦さん(83)は「それぞれの家ごとに、所有林や地区の共有林を焼いた。焼き畑は女性の仕事で、自家消費用の作物を育てた」と当時を振り返る。
 だが、高度経済成長期のエネルギー革命で、燃料の主役が木炭から化石燃料に移り代わると、地域の主産業だった製炭業が衰退。働き手が地域外に流出する中、焼き畑農業は次第に姿を消した。
 こうした中、同地区で2007年から復活に取り組むのが、研究者や住民でつくるグループ「火野山ひろば」だ。焼き畑農業を山村での暮らしの収入源の一つとして確立しようと模索する。
 今年は7月下旬に約4アールの山裾の草地で草木を伐採。天日で約1カ月乾燥させた後、今月22日に火入れ作業を行った。
 火入れ当日は、獣害防止のために周囲をトタン板で囲った圃場(ほじょう)の四隅にお神酒をまき、作業の無事を祈った後、圃場上方に横一列に着火。パチパチと音を立てながら火は徐々に下方に広がり、30分ほどで約4アールを焼き尽くした。
 圃場にはその日のうちに赤カブとソバを播種(はしゅ)。赤カブは地域の在来品種「ヤマカブラ」で、現在の栽培農家が1戸のみと絶滅にひんした種だ。焼き畑農業に適応した品種で、火入れ直後でも種がまけ、約80度の地温で発芽率が最も高い。収穫は11月中旬の予定で、収量は1アール当たり100キロ程度を見込む。
 滋賀県立大学の野間直彦准教授は「焼き畑農業は収穫まで基本的に放任で手間が掛からない。農薬・肥料費も不要で、カブだと4アールで数十万円の収入が見込める。作物や栽培規模を検討し、山村での『半農半X』の柱の一つにしたい」と展望する。/ 焼き畑農業は、国内では現在、およそ20地域で営まれている。江戸時代以前から長く続く山形県鶴岡市や宮崎県椎葉村のような地域もあるが、多くは近年復活させた。15年の島根県奥出雲町と熊本県水上村、12年の静岡市など2000年代以降の復活が相次いでいる。
 京都先端科学大学の鈴木玲治教授は「近年、全国で焼き畑農業を復活させる動きが目立つ。地域の伝統農業の継承や放置里山林の再生、農作物のブランド化、地域おこしなど狙いはさまざまだ」と分析する。
 
<ことば> 焼き畑農業
 森林や草地を焼き払って土地を切り開き、作物を栽培する農法。国内では1960年代以降に林業をとりまく情勢が変化するとともに衰退した。草木を焼くことで灰が肥料となる他、雑草や病害虫の駆除にもなる。作物の栽培期間は短期間で、必ず休閑期間を設けて植生を再生させるのが特徴だ。西日本・太平洋側は、ソバや雑穀、日本海側は、赤カブを主要作物として、それぞれ輪作することが多い。
 森林破壊につながるイメージが一部にあるが、多くは森林を耕地化する際の「焼き払い」と混同されている。焼き畑農業は持続的な環境利用システムとされている。
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 2020年08月28日
  
 
 人口減50万人超 国産需要増へ戦略急げ
  日本人の総人口の減少幅が初めて年間50万人を超えた。「50万ショック」は、少子高齢化の加速を裏付け国内産業に変革を迫る。人口減は需要減となり食料需給にも影響を及ぼす。政府は、米をはじめ国産農畜産物の需要拡大を含め、食料自給率向上へ戦略の強化を急ぐべきだ。
 人口は人の口と書く。口が減れば胃袋の数も少なくなり、食の国内消費に大きく影響する。一方で、食料自給率が38%(カロリーベース)という実態は、輸入品を国産に切り替える余地が大きいことを示す。
 総務省は、住民基本台帳に基づく今年1月1日現在の日本の人口が1億2427万1318人になったと発表した。前年に比べ50万5046人(0・4%)減少した。人口は2009年をピークに11年連続で減り、減少幅は1968年の調査開始以降、最大となった。
 減少幅は初めて50万人を超えた。1年間で鳥取県(約55万6000人)に近い人口が減ったことになる。地域別では東京など3都県が増え、首都圏の一極集中が続く。半面で、地方への田園回帰と「関係人口」の増加に伴う「にぎやかな過疎」の動きにも注目したい。新型コロナウイルス禍も影響する可能性がある。東京都の人口が、6月は前月より減った。人口構図を踏まえ対応を急がねばならない。
 少子高齢化を巡って、平成元年の89年には、1人の女性が一生に産む子どもの平均数を示す合計特殊出生率が、過去最低の1・57となった。直近の2019年の出生率は1・36と低下に歯止めがかからない。出生数は国の当初予想より早く90万人の大台を割り込み「86万ショック」との言葉も生まれた。
 こうした中、流通大手のセブン&アイ・ホールディングスは、米国3位のコンビニを約2兆2000億円で買収した。巨額買収の背景には、国内市場は大きな成長が見込めないとの判断があった。人口減の加速が企業戦略に影響を与えている表れだ。
 人口減、少子高齢化は農畜産物の需要も左右する。特に、ほぼ全量自給している主食用米の消費減は深刻だ。農水省は、人口減を踏まえ年間10万トンの需要減を見込む。これに加え、コロナ禍による外食など業務用需要の減少が長期化する恐れがあり、需給調整にも影響する。
 簡便化、健康・国産志向など食の現場の構造変化は、おにぎりや弁当など米の中食需要を増やし野菜サラダなど総菜需要を押し上げている。JA全農は、総菜で国産食材への切り替えを進めコンビニでの販売拡大を目指す。秋田県大潟村では、中食需要をにらみ来春稼働へ県内初のパックご飯工場計画が進む。
 人口が減っているのに自給率が低迷したままなのは生産基盤の弱体化を裏付ける。政府は、「50万ショック」と自給率引き上げの両にらみで政策実施を急ぐべきだ。関係団体と連携し、農業振興と主食用米からの転換に一層力を入れねばならない。
 
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 2020年08月30日
  
 農政の新着記事
 ポスト安倍 農政観は?
  安倍晋三首相(自民党総裁)の辞任表明を受け、後継総裁選びに向けた動きが活発化している。有力候補に挙がる同党の石破茂元幹事長、岸田文雄政調会長、菅義偉官房長官は農業・農政にどのような考え方を示してきたのか、振り返った。
 
石破氏 農相時には改革派
 ポスト安倍候補の3氏で最も「農政通」として知られるのは石破氏だ。農水政務次官を2度務め、08年発足の麻生内閣で農相に就任。14年発足の第2次安倍改造内閣からは地方創生担当相を務めた。農村部での知名度は高く、18年の総裁選では地方票の45%を集めた。
 ただ、石破氏は農相時代に米生産調整の「選択制」、JA・企業などでつくる「地域マネジメント法人」を提起するなど、改革派でも有名だった。後継となった場合、安倍首相が進めた生産調整見直しや農協改革をどう展開するか注目される。
 
岸田氏 消費者行政に精通
 逆に、最も農政のイメージから遠いのが岸田氏だ。12年発足の第2次安倍内閣から外相を長く務め、退任後は政調会長に就任。安倍首相が後任に据えたい「意中の人」とされてきたが、農業関係の要職は経験していない。
 だが、消費者行政推進担当相として消費者庁設置法案をまとめるなど、農業と関係の深い消費者行政は第一人者だ。岸田派には林芳正氏、宮腰光寛氏、小野寺五典氏、藤木眞也氏ら農政通が所属。こうした経験や人材が岸田氏の農政の鍵を握る。
 
菅氏 安倍路線の主導者
 菅氏は農水省の奥原正明元事務次官を重用し、安倍政権が進めた農政改革を実質的に取り仕切ったとされる。後継となれば、農政でも「安倍路線をそのまま引き継ぐのではないか」(自民党農林幹部)との見方がある。
 秋田県の農家出身の菅氏は、政府の農福連携や野生鳥獣の肉(ジビエ)に関する会議の議長なども務める。近年は同党農林幹部の森山裕国対委員長との関係も深めている。森山氏らの助言を受け、生産現場の理解を得られる農政を進められるかが課題となりそうだ。
 
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 2020年08月30日
  
 
 安倍首相辞意 持病再発 「負託応えられぬ」 農政課題残したまま
  安倍晋三首相は28日、首相官邸での記者会見で「総理大臣の地位にあり続けるべきではないと判断した」と述べ、辞意を表明した。持病の潰瘍性大腸炎の再発を理由とし、「国民の負託に自信を持って応えられる状態でなくなった」と述べた。歴代最長政権を築き、農業改革や大型貿易協定の締結を主導したが、生産現場の意向を踏まえない対応も多く、農政の在り方には課題を残した。
 
 辞意表明を受け、自民党は後任を選ぶ総裁選を実施する。後任には同党の岸田文雄政調会長や石破茂元幹事長らが意欲を示す他、新型コロナウイルス禍が続く中での政権の継続性を重視し、菅義偉官房長官を推す声もある。首相は後任について「私が申し上げることではない」と語った。
 会見で首相は、7年8カ月にわたる政権の成果として、環太平洋連携協定(TPP)や欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)、日米貿易協定を挙げて「日本が中心となって自由で公正な経済圏をつくり出すことができた」と述べた。
 
 自身が力を入れた「地方創生」については「パラダイムシフト(大きな変化)までは来ていない」と総括したが、コロナ禍による移住希望者の増加を受け「地方の魅力が見直されている」とも述べた。
 首相は第1次内閣時の2007年も潰瘍性大腸炎の悪化で退陣したが、12年12月に自民党の政権奪還に伴って首相に再就任。経済政策「アベノミクス」を看板に国政選挙で連勝を重ね、通算・連続在任日数ともに歴代最長となった。だがコロナ対応では迷走し、内閣支持率は下落傾向にあった。
 農政では農業の成長産業化を唱えて、米の生産調整の見直しや農協改革など多分野で改革を推し進めた。一方、TPPなどの大型貿易協定を相次いで締結した。
 就任前に比べ農業総産出額や農林水産物・食品の輸出額は伸びたが、農家数や農地面積など生産基盤は縮小。官邸主導の改革には生産現場から不満も出ていた。
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 2020年08月29日
  
 
 8月15日作柄 早場米 北日本やや良 北陸は平年並み
  農水省は28日、2020年産水稲の作柄概況(8月15日現在)を発表した。東日本を中心とした早場地帯19道県のうち生産量が多い北海道と東北の多くの産地で作柄が「やや良」、新潟県や北陸各県は「平年並み」で主産地の作柄は比較的良好に推移している。主食用米の作付面積は前年産から微減にとどまる見通し。今後の天候次第で需給が緩む可能性もある。
 平年を100とした作況指数で102~105に相当する「やや良」は北海道、青森、岩手、秋田、山形の5道県。101~99の「平年並み」は宮城、福島、新潟、富山、石川、福井、鳥取、島根の8県だった。茨城、栃木、千葉、長野、三重、滋賀の6県は98~95の「やや不良」。
 田植え期以降の天候に概ね恵まれ、全もみ数は一部を除き平年並み以上に確保される見通し。登熟の良否も北海道で「やや良」となった他、東北各県は平年並みとなった。7月の低温・日照不足などの影響は一部にとどまる見込みだ。
 同省によると、20年産の主食用米の作付けは6月末時点で25都府県が前年並みとする意向。平年作なら「19年産(726万トン)と変わらない生産量になる可能性がある」(農産企画課)。需給安定に向け、同省は主食用米から飼料用などへの用途変更を促す。関係する申請書の提出期限を9月18日まで延長している。
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 2020年08月29日
  
 
 水利施設の半数老朽化 水門は7割 管理省力が課題
  基幹的な農業水利施設の老朽化が進み、約7500カ所ある施設の53%で耐用年数を超過していることが、農水省の調査で分かった。10年間で11ポイント上昇し、用排水機場や水門は7割以上が耐用年数を超えている。同省は施設の長寿命化を進めるが、維持管理には土地改良区の体制強化や新技術の活用が欠かせない。
 農業の用排水に使われる施設で、受益面積が100ヘクタール以上の基幹的な施設を対象に調査。対象数は2018年3月時点で7582カ所に上る。同省は標準的な耐用年数として、ダムやため池などの貯水池は80年、取水堰(ぜき)が50年、水門が30年、用排水機場が20年、施設の操作機能などを持つ管理設備は10年と定めている。
 標準耐用年数が超過している施設は合計で4033カ所に上った。
 種類別に見ると、用排水機場は全体の75%に当たる2208カ所で標準耐用年数を超過。耐用年数を超えた施設の割合は10年で12ポイント上昇した。水門なども71%(789カ所)が超過し、割合も同18ポイント増加。貯水池は10%(126カ所)が超過し同1ポイント増えた。
 同省は「標準耐用年数を超過しても、ただちに問題になるわけではない」(設計課)と指摘する。一方で施設の老朽化に伴い、経年劣化などによる漏水などの事故は増加傾向。18年度は1109件発生した。
 基幹的な農業水利施設は国や都道府県が建設する。同省の試算によると、耐用年数を超過した施設を再建設費ベースで見ると5兆円に達し、今後10年で約8兆円に増える。更新には多額の費用がかかることから、同省は適切な維持管理による施設の長寿命化を重視する。
 ただ、多くの地域で施設の維持管理を担う土地改良区は高齢化が進む。組合員数も約350万人(19年度)と、10年で8%減った。施設の維持管理に支障が出る可能性もあり、土地改良区の体制強化が不可欠だ。農水省は効率的な施設の機能診断に向けて、小型無人飛行機(ドローン)を使って写真を撮り人工知能(AI)で診断するなど新技術の活用を目指す。今年度から現地実証を始め、施設を維持管理する際の省力化につなげたい考えだ。
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 2020年08月28日
  
 
 ヤギも盗難 「運びやすいサイズ」狙う 業界 全国に注意喚起
  栃木、群馬両県などで子牛や子豚を狙った連続盗難事件が相次ぐ中、栃木県では5月にヤギも盗まれていたことが分かった。犯人らは運びやすいサイズの家畜を狙っているとみられ、同県もホームページ上で、子牛と子豚に加え、ヤギ被害にも注意を促している。事件の広域化を受け、全国約1500の養豚農家らが加盟する日本養豚協会は、全国の会員に対し、頭数管理や防犯対策などの注意喚起に乗り出した。
 ヤギが盗まれたのは足利市の畜産農家(68)。草刈り用に飼っていた5頭のうち3頭が、5月に盗まれた。
 北関東の家畜盗難を巡っては、栃木県足利市の牛舎から子牛6頭が盗まれた他、群馬県では前橋、伊勢崎、太田、館林の4市の豚舎から計690頭が盗まれ、両県警などが窃盗事件として捜査している。
 自治体や業界団体は注意喚起を本格化した。日本養豚協会はメールで頭数確認などの徹底を要請。牛と違って豚は多産であることから、密集しがちな子豚はいなくなっても気付くのが遅れてしまいがちという。栃木県は防犯カメラやセンサーライトの設置に加え、防犯対策を取っていることを示すステッカーの表示などを求めた。
 690頭が盗まれた群馬県では、県畜産協会が注意事項を通知した。防犯カメラ設置の検討を要請した他、被害に遭った場合はすぐに警察へ通報するよう求めた。また、畜舎に泊まって寝ずの番を始めた農家もいるといい、犯人が動物の殺処分に手慣れているとみられることから、目撃しても接触せず、警察に通報するよう注意喚起した。
 養豚農家は豚熱対策として養豚場の周囲に野生動物が進入しないようフェンスを設けているが、人の侵入までは想定していない。防犯対策の強化には新たな出費が迫られそうだ。
 前橋市は27日、家畜の盗難防止へ生産者への支援事業を始めると発表した。防犯カメラなどを設置する場合の費用や、民間警備会社による市内養豚場の巡回費用を助成する。
 今後、生産者、JAや県と協議を重ね、詳細を詰める。同市農政部は「昨年度から豚熱対策として、ワクチン接種や防護柵などの支援しているが、これ以上の経済的損失や防疫体制に対する不安を取り除くため、早期に対策を検討したい」と話している。同市では、子豚を中心に盗難が相次ぎ、これまでに5戸、約580頭が被害に遭っている。
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 2020年08月28日
  
 
 日英 28日にも閣僚級協議 ブルーチーズ焦点
  日英両政府は貿易協定交渉の閣僚級協議を、28日にテレビ会議で開く方向で最終調整に入った。8月中の大筋合意を目指し、茂木敏充外相とトラス英国際貿易相が詰めの協議を行う見通し。農産品では、英国が優遇措置を求めるブルーチーズなどの扱いが焦点になる。
 茂木氏とトラス氏は今月6、7日にロンドンで、交渉開始後初となる対面での協議に臨んだ。「大半の分野で実質合意した」(茂木外相)上で8月中の大筋合意、来年1月1日の発効を目指すことを確認した。
 一方、農産品などの扱いは決着せず、英国が優遇措置を求めるブルーチーズなどを巡り、事務レベルで詰めの協議が続いている。
 日本側は、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)でブルーチーズを含むソフト系チーズの輸入枠を設けているため、英国枠の新設は認めない方針。英国側は、日欧EPAの輸入枠の未消化分を英国に振り向けるよう求めているもようだ。
 日本が英国に優遇措置を認めた場合、日米貿易協定など他の協定に影響する可能性もあり、両政府がどのような着地点を見いだすかが焦点だ。
 大筋合意した場合、両政府は9月にも協定を確定、署名したい考え。その後は1月1日の発効に向けて双方の議会承認手続きが必要で、日本政府は秋の臨時国会での承認を目指すことになる。
 
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 2020年08月26日
  
 
 安倍政権 連続在任最長 農政改革 問われる真価 成長めざすも基盤弱体
  安倍晋三首相は24日、第2次政権発足からの連続在任日数が2799日となり、佐藤栄作氏を抜いて「連続」でも歴代最長になる。首相は農業を成長産業と位置付けて多くの改革の旗を振ったが、目標通りではない。農業産出額や輸出額が伸びる一方、生産基盤の弱体化が進んだ。7年8カ月の「安倍農政」で農業がどう動いたか、農水省の統計から検証した。
 
産出額は増 成果を強調
 第2次安倍政権は2012年12月に発足。13年3月に環太平洋連携協定(TPP)交渉参加を表明する一方、同年6月に①全農地の8割を担い手に集積②農林水産物・食品の輸出額1兆円③農業・農村の所得倍増──などの目標を含む成長戦略を閣議決定。農業の成長産業化を「アベノミクス」に位置付けた。
 その実現に向けた改革として、首相は農地中間管理機構(農地集積バンク)の設立、農協改革、米の生産調整見直しなどを矢継ぎ早に進めた。農業総産出額や、農家所得に当たる生産農業所得は政権発足前より増え、首相は成果と強調する。
 だが、いずれも3年連続の増加後、18年に下落。増加した要因も、生産基盤の弱体化による供給力低下で需給が締まり、価格が上昇した影響とみることもできる。改革で成長産業化が進んだ結果とは認めにくい。
 
農家数急減 軌道修正へ
 
 政権発足前の2倍に増え、首相がやはり成果と誇るのが農林水産物・食品の輸出額だ。しかし、政府は農家所得にどれだけつながったかを説明できていない。「19年に1兆円」の目標には届かず、今年設定した「30年に5兆円」という新目標には、早くも非現実感が漂う。
 米生産費の削減、法人経営体数など他の成果目標も、道のりは険しい。担い手への農地集積率は57%に伸びたものの、増加は年1ポイント程度にとどまる。てこ入れのため、農地集積バンク関連法を19年に改正。首相の進めてきた改革が見直しを迫られるようになった。
 農業就業人口は7年間で3分の2に急減するなど、生産基盤の弱体化に歯止めがかからない。49歳以下の若手新規就農者は一時2万人を超えたが、直近は政権発足前と同水準。カロリーベースの食料自給率は18年度に過去最低の37%を記録した。
 ただ、今年3月閣議決定の食料・農業・農村基本計画では、中小規模の農家も含めて幅広く支援し、生産基盤を強化する方針を打ち出した。首相は6月、食料安全保障の強化に向けた政策の見直しを指示。農政を軌道修正したとの見方もある。
 首相の通算在任日数は既に昨年11月、憲政史上1位となっている。健康不安説もささやかれるが、自民党総裁の任期は来年9月。新型コロナウイルス禍が続く中で、農業の成長産業化と生産基盤の強化に道筋を付けられるか。最長政権の真価が問われる。
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 2020年08月24日
  
 
 ふるさと納税 “返礼品なし寄付”2倍 コロナや災害 「地域応援」意識高まる
  新型コロナウイルス禍や自然災害による影響が相次ぐ中、ふるさと納税を活用した地域支援の動きが加速している。返礼品を選択しない「品なし寄付」の件数が前年比2倍超となるなど、寄付金の使い道に重点を置いた寄付が増加。今後は、地元の農畜産物などの返礼品と併せ、寄付金の用途を明確にすることが、寄付の呼び込みにつながりそうだ。
 ふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンクによると、2020年1~6月に同サイトから行われた寄付のうち、返礼品を伴わない寄付が、金額ベースで前年同期比1・8倍、件数で2・4倍に増えた。
 同社は「新型コロナ禍をきっかけに、地域を支援したいと考える人が増え、寄付金の使い道に対する意識が高まった」と分析する。
 寄付金の使い道から寄付先を選ぶ「ガバメントクラウドファンディング」の利用も増加傾向にある。同サイトを通じた新型コロナ対策プロジェクトに対する累計寄付金額は、7月末までに5億600万円を超えたという。
 ふるさと納税を巡っては昨年6月、過度な返礼品競争を抑えるための法改正が行われ、返礼品を返礼率3割以下の地場産品に限るなどの新ルールが設けられた。同社は「地域を応援するという制度本来の趣旨に立ち返る機会となり、市場にも変化が生まれている」と指摘する。
 
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 2020年08月24日
  
 
 大豆生産 伸び悩む 牛肉は減産 農地整備が課題 生産努力目標 達成状況
  農水省は、食料自給率の目標達成に向けて設けた主要15品目の生産努力目標(2030年度)について19年度の達成状況をまとめた。主産地の天候不順で生産量が伸び悩み、大豆は目標を大きく下回った。牛肉は肉用子牛の出生が少なく減産。野菜や果実の生産量も停滞した。目標を下回る品目の増産には、生産条件の整備や農家の所得向上など課題が山積する。
 
 政府は3月に閣議決定した食料・農業・農村基本計画で、30年度のカロリーベースの自給率目標を45%に設定。19年度は38%と、過去最低だった前年度(37%)からわずかに上向いたが、低い水準にとどまった。生産努力目標を下回る品目が多かったことが響いた。
 特に目標との差が目立ったのは大豆だ。生産量は22万トンと18年度からほぼ変わらず、目標(34万トン)の65%にとどまる。主産地の九州で、台風や大雨、日照不足の被害が出た他、塩害も生じた。農水省は農地が分散して適期作業が難しいことも要因だと分析。対策として排水技術の向上に加え、農地の団地化を進める。
 牛肉の生産量は47万トンで、前年度を下回った。目標比は83%。新たな基本計画では目標を52万トンから57万トンに引き上げたが、減産となった。乳用種や乳用種と和牛の交雑種(F1)の生産が減少。性判別精液で搾乳用の乳用種雌を生ませる動きで肉用牛の出生が減った面もある。和牛だけでなく、比較的手頃な乳用種雄や交雑種の生産をどう支えるかが課題だ。
 野菜は前年度を上回る1166万トンだったが、目標(1302万トン)の90%にとどまった。増産には輸入品が多くを占める加工・業務用需要の奪還が欠かせない。農水省は実需が求める安定供給の実現へ、水田を活用した野菜の大規模生産を促す。米の需要減少も見据えた対応だ。
 果実は270万トンで前年度を下回り、目標の308万トンと比べると88%の水準だった。増産に向けて同省は、輸出拡大による海外需要の獲得などを進める考えだ。
 米とジャガイモ、テンサイ、鶏卵は目標を達成。米粉用と飼料用を除く米の生産量は774万トンと前年並みで、723万トンの目標比は107%。ジャガイモ、テンサイは、主産地の北海道で天候に恵まれ増産となった。米と同様にほとんどを国内生産で賄う鶏卵は、前年並みの生産だった。
 小麦は目標には達しなかったが、前年度を28万トン上回る104万トン。95万トンから108万トンまで大幅に引き上げた目標に対して96%となった。農水省は、天候要因だけでなく優良品種の導入などが奏功したと分析する。
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 2020年08月23日
  
 
 広瀬すずさん 「国産食べて」応援呼び掛け テレビCM
  女優の広瀬すずさんが国産食材を“食べて応援”するテレビCMが、24日から全国放送される。新型コロナウイルス禍で売り上げが減少した国産農林水産物の販売促進を目的とする、農水省の「#(ハッシュタグ)元気いただきますプロジェクト」の一環。広瀬さんは牛肉やメロンを食べ、笑顔で食事を楽しみながら、幅広い世代に生産者への応援を呼び掛ける。
 広瀬さんは、プロジェクトの推進役。生産者には「いつもおいしい食べ物をありがとうございます」と感謝するとともにコロナ禍の中で「こんな時だからこそ、日本のおいしい食べ物をいっぱい食べて、プロジェクトを盛り上げていきたい」とメッセージを寄せた。CMを見る人には「手間暇をかけて育った食材が今年は行く先を失っています」と話し、「日本を元気にしましょう」と呼び掛ける。
 インターネット販売のYahoo!ショッピングでは、24日午前に「#元気いただきますプロジェクト」特集ページを開設する。
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 2020年08月23日