検針員として街を見守る元プロ野球選手
金田政彦さんのセカンドチャレンジ
取材が始まる前には毎回、聞き手として今回お会いする人はどんな人だろうかと緊張感をもちます。「はじめまして!よろしくお願いします!」という爽やかなあいさつで、ピンと張った空気を一瞬で和ませてくれたのが、今回ご紹介する金田政彦さんです。現在、北九州市小倉北区の西部ガス・カスタマーサービス株式会社北九州事業部に所属し、検針員として勤務する彼。実は、元プロ野球選手という異色の経歴の持ち主です。そんな金田さんの第二の挑戦について伺いました。
金田さんは2016年に入社しました。
ドラフト2位でオリックスに入団。現役時代の華々しい実績
幼い頃から父親とほぼ毎日キャッチボールをしていたという金田さん。「父は『巨人の星』の星一徹みたいな人で、野球に関してそれは厳しかったですね」と振り返ります。父親と二人三脚でトレーニングを続けながら、小学4年生で野球部に入部。左利きの投手として活躍します。中学、高校でも野球部に入り、当時の監督の勧めで日産自動車九州硬式野球部へ入部しました。社会人野球を経て、1992年ドラフト2位でオリックス・ブルーウェーブに入団。ついにプロ野球選手として歩み始めます。
1995年にはウエスタン・リーグで最多勝、1998年には4勝負けなしで月間MVP獲得。
1996年のペナントレース、2連覇のかかった試合では、イチローのさよならヒットで優勝を果たします。そのときの勝利投手を務めたのが金田さんでした。そして、2002年にオリックスで2度目のオールスターゲームに出場し、その年の最優秀防御率のタイトルも獲得しています。ここまで聞くだけでも、華々しい経歴です。
2005年に東北楽天ゴールデンイーグルスに一期生として入団し、翌年36歳で現役を引退します。こうして金田さんは14年にわたるプロ野球選手としての人生に幕を下ろしました。
現役時代の金田さん。身長177cm、体重65kgと細身でありながら、サウスポーの投手として活躍してきました。
プロから転身。異分野へ飛び込んだ理由とは?
現役を退いた金田さんは、これまで築いてきた"人との縁"で、大手総合スポーツ用品メーカーに入社します。ここでは営業職として慣れないデスクワークに奔走しながら、プライベートで少年野球チームのコーチとしてのキャリアもスタート。金田さんがコーチを務める少年野球チームは、金田さん就任後、めきめきと成績を伸ばします。2015年には、県内の大会で3位入賞を果たすほどに成長。さらに、2017年には全国規模の選抜大会で、金田さんが監督を務め、優勝を手にしました。「自分の人生は、野球抜きでは語れません。だから野球に恩返しがしたい。未来ある子どもたちに野球の楽しさを伝えていくことが、これからの自分にできることだと思いました」。
その頃、金田さんは仕事とコーチの二足のわらじを履き、多忙な日々を送っていました。少年野球チームの練習や試合は週末に行われることがほとんど。しかし、営業職では土日に出勤することも多く、思うようにチームを見ることができません。そこで、一念発起して転職を決意。すると、再び"人との縁"で検針員という仕事を紹介され、仕事とコーチを両立できる現職に就くことになりました。
入社して2年後、ついに金田さん率いる北九州選抜少年野球チームは、全国規模の少年野球大会(今泉杯)で優勝を果たします。
北九州の少年野球チーム『中井フェニックス』の集合写真。一番右がコーチを務める金田さんです。
第二の人生で臨んだ2つの挑戦
ひとつは、少年野球チームでコーチとして子どもたちを率いていくという挑戦。もうひとつは、検針という新たな仕事での挑戦でした。以前はガスの種類すらわからなかったという金田さん。入社後、検針という仕事の奥深さを知ります。
軒先のガスメーターの数字を確認し、その数値をハンディターミナル(データ収集用の携帯端末)に打ち込む作業。各家庭やビルなど併せて1日300〜500軒という膨大な数をこなします。「1日に4時間ほど歩き、一軒一軒、多くて7桁の数字を確認します。検針というと数字に特化した仕事かと思いきや、それだけではありません。もうひとつ大事な役目が"保安"です」。訪問先でガス漏れがないかをチェックし、検針する数字を見て、いつもと大きく違っていたら家の中で何か異変がないかチャイムを鳴らして直接お客様に確認することもあると言います。訪ねる先で地域の人が安全に暮らしているか見守る役割も果たしているのです。
いつもお客様に寄り添っているのが検針員という仕事。金田さんは、「前職のスポーツメーカーでもベースボール担当だったので、ずっと野球の話ばかり。しかし、この仕事について野球以外の話をするのがとても新鮮でした。『いつもありがとう』と言ってお茶を出してくれる方もいらっしゃいます。地域の方々とコミュニケーションをとれることが大きなやりがいです」と話します。そんな金田さんが、新たな挑戦をするときや、困難にぶつかったときにいつも思い出すことがあるそうです。それは、現役時代にお世話になった仰木彬監督の言葉でした。
西部ガスは北九州市と連携した地域見守り活動にも参加しています。その印である『命をつなぐネットワーク』というバッジをつけており、今年3月時点で北九州東事業所に所属していた検針員は全員AED(自動体外式除細動器)の研修を受講済み。
仰木彬監督が教えてくれた『メリハリ』のある生き方
「現役時代、ずっと目をかけてくれたのが仰木監督でした。他の選手からも『金田が一番仰木さんを怒らせてきたよね』と言われるほど(笑)。何よりメリハリが大事だということを、身をもって教えてくれた人です。『遊ぶときは遊ぶ!仕事するときは仕事する!』と言われていました。試合が終わって一番に飲みに出るのが仰木監督で、外出から一番遅く帰ってくるのも仰木監督(笑)。そしてグラウンドにあがるとビシッと全体を引き締める。どんな困難にぶつかっても、仰木さんの姿を思い浮かべると集中力が高まり、乗り越えていけますね」。
"メリハリ"をつけて集中し、切り替えていく。そうした教訓を胸に刻んだ金田さんは、仕事でも功績を残します。社内で実施される表彰式で、事業部の推薦を受け、その年に活躍した社員に贈られる西部ガスグループ賞を受賞。新たな仕事でも、少年野球チームのコーチでも、100%の力を注ぐ背景には、仰木監督の教えがありました。
「野球と同じく、仕事でも一人一人の良いところを伸ばして働くことが大事だと思っています」と話す金田さん。
一見違うことでも繋がっているし、失敗は悪いことではない
「現役時代の体力づくりは、1日2万歩ほど歩き回る検針という今の仕事の糧になっています。そして、この仕事で足腰を鍛えられることは、少年野球チームでのトレーニング代わりになっています。一見違うことでもすべて繋がっているんですね」と金田さん。
また、現役時代の華々しい実績の影には、数多くの挫折があったと金田さんは教えてくれました。社会人野球時代の厳しい下積み生活や、成績の伸び悩み...。「自分は今までたくさんの失敗がありますよ。でも、失敗して立ち上がって...を繰り返して進んでいると自信にもなります。また立ち上がれたなって思えるんです。その経験を通して人に喝を入れてもらったり、応援してもらったりしながら、"人との縁"も生まれます。そうして今の仕事にも繋がっていますし、周りの仲間にも恵まれました。居心地のいい職場があり、プライベートも充実させられる。ここは、私の第二の人生を切り開いた場所だと思っています」。
金田さんの直属の上司である白石係長とともに。職場で楽しそうに話す2人をみると、"居心地の良さ"というのも納得でした。
西部ガス・カスタマーサービス株式会社 北九州東事業所
〒803-0828 北九州市小倉北区愛宕1丁目5番1号
TEL:093-582-6835
FAX:093-582-5746
HP:http://sg-cs.jp/
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読者のみなさまから よせられた 感想をご紹介します
元プロ野球選手の方がいるとは驚きました。 現役時代の体力が現在に役に立っている…何事もいつか役に立つんですね。野球指導も頑張ってください!
なつこ
プロ野球選手として、コーチとして、検針員として大活躍!すごいなあ!人生すべてが繋がってますね!金田さん、笑顔が素敵ですね(^^)そして、検針員さんが1日にそんなに沢山の検針をしてくれていたなんて知りませんでした。検針員さん、いつもいつも、ありがとうございます!
あきぼう
第2の人生を送る上で、大きな決断をしなくてはいけない瞬間は誰にでも訪れると思います! 次のステップに挑戦する姿はカッコいいですよね!
とんとん
仕事とプライベート(コーチ)の両立.. やりたい事を どちらかと選ばず どちらもやり遂げるあたり.. 元野球選手のプライドを感じました◎ わたしも人との縁を 大切にしていきたいなと思います。
くま
元プロ野球選手がいるとはびっくりしました。
もちこ
プロ野球選手という夢を叶えて終わりでなく その後も夢に向かって 挑戦したり 後に続く子供たちに 受け継がせたり、、とても素敵な人生を歩んでいらして かっこいいです。自分も やりたいことをして悔いのない人生 歩みたいです。
yosh!
プロ野球選手の経歴もあり、検針員としてもプロとなり、すごいです!努力したからこその結果ですね!この記事を読んで私もやりたいことに向かって努力して頑張ろうと思えました!ありがとうございます。
ゆぴ
元プロ野球選手がいるのは驚きでした!「未来ある子どもたちに野球の楽しさを伝えていくこと」というのが素敵だなと思いました!
りー
常に努力を忘れない、金田さんとても素晴らしい方だと思います。 仰木監督の教えである「メリハリ」 私も「メリハリ」のある生活をするように心がけていますが、なかなか難しいですね。
nanana
プロ野球選手からの転身で検針員としても大活躍されているんですね!プロ野球選手時代に培われた体力はこれまでの努力の賜物。検針員のお仕事にも役立っていて何事も努力したことは決して無駄にならないなと改めて思い知らされました。
うめぼし
野球の現役を離れても、それを生かして頑張っている姿は何よりかっこいいです。
ひろぽん
プロ野球で活躍されてたなんてすごいですね。検針員としても活躍されて、仕事もプライベートも充実させられるなんてすごいです。
もも
プロ野球選手として活躍していたところから検針員として活躍していて全く違う業種なのに笑顔が素敵で素敵だと思いました。
みちの
野球選手から第二の道へ進む事はとても勇気のある事だと思いました。しかし、笑顔で楽しそうに仕事に取り組んでいる姿は見ているこちらも笑顔にさせてくれますね!
みほ
元プロ野球選手が検針に訪れている事に気がついたらビックリしそうです!
ひでと
オリックスの仰木監督、私もその野球人としての姿勢、哲学、とても好きな方でした。金田政彦さんはドラフト2位という、輝かしいプロデビューから、たくさんの挫折もそこからの学びも得て、今検針員とししてのお仕事にも誇りを持ち、前向きに生きておいでで、本当に得な人生を送っておいでで羨ましいと感じます。これからも、野球選手を目指す子供たちのロールモデルとしても、たくさんの人を笑顔になさってください。応援しています。
KOXIA