第8話『クラブ活動パニック』Part4 Part3に戻る
「『思い出したこと』ですか?」
「ええ。ちょっとど忘れしてましてね」
満面に柔和な笑みを浮かべる上条繁。だがその瞳の奥に猟犬と同じ鋭い輝きを斑は見た。
(こ…こいつ…いや…わかるはずはない。こいつはGFKの『腕』が見えていなかった。人形遣いではない。だからこいつには私が『斑信二郎』とはわかるはずはないっ。
なのに何故…恐怖を感じるッ…こいつに一度『殺された』からかっ)
「あー…先生。息子から聞いたんですけどね。何か学校に出てこない女の子がいるとか。同級生でバイト先の店長の娘さんとか」
あくまでとぼけた感じで尋ねる上条刑事。明はこの辺りを色濃く引き継いだか。
「小山ゆかりですね。ええ。捜索願は最近出てますが」
「率直に伺いますがね。先生…何か隠していませんか?」
斑は心臓の音が聞こえたのではと言うほど驚いた。
これが殺すつもりなら『殺人者の顔』を表に出せばよいが、隠すつもりなので余計にストレスとプレッシャーが掛かる。
「隠していると…言いますと?」
これは本心から尋ねた。だから自然な言葉になった。
「そうですね。この小山さんがクラスでいじめにあっていたとかは?」
「ああ(なるほど。こいつは小山ゆかりが『失踪』したの原因がいじめにあると見て教師がそれを隠蔽していると考えたか)。そう言うことですか。いえ。それはありません。小山は人懐こい性格で誰からも好かれていました」
事実だった。だからこの『失踪』は大きな波紋を呼んでいた。
そして調べてすぐばれるうそをつくよりは事実を述べたほうが騙せる。
斑はそう判断して誠実な教師のふりをして言葉をつむぐ。誰に聞いてもこの言葉を裏付けてくれるであろう。
「なるほど。ところでいろんな証言から、どうもこのお嬢さんもこちらの二人に追いかけられていたらしい。先生が一緒だったんじゃないんですか?」
「はい。そうです」
これは落ちついて返答できた。流れからみて予想できた質問だからだ。
「一緒に逃げていた理由は?」
「脱出のためですよ。私は小山をガードしながら一目散に安全なポイントまで逃げ込みました」
「それはどこです?」
斑は場所を正確に説明した。彼はそこがすでに取り壊しが進行しているのを知っていた。だから敢えて正直に話した。
彼は物的証拠を残していない自信があった。加えて取り壊しが開始するのを知っていたのでゆかりを殺す現場に選んだのも事実。
「そこまでは一緒だったわけですね。その後は」
「この二人かどうかはわかりませんが、追われてはいたようなのでそれをやり過ごしました。安全と思った時点で小山は自宅へと帰らせました。私自身はその後で学校へと戻って来ましたがすでに乱闘は終わってました」
実際はやり過ごしたのではなく二人の不良もここで文字通り消された。ゆかりも行き先は自宅でなく『あの世』だ。
だが中尾が無限塾に戻ったのは事実だ。この場合そのまま帰宅しては不自然なので敢えて偽装の為に戻った。
「なるほど…
(この教師と分れた後で消えた3人。小山ゆかりをこの二人が拉致監禁しているからいずれも連絡は取れないと言う線もあるか。事故の報告も調べたほうがよいし…しかし…なんか不自然だな。つじつまは合う。だが何かが変だ。何かを隠している)
先生。率直に申し上げますが…本当にそれだけですか?
乱闘が終わっていたと仰いましたね。これはウチの息子から聞いたんですがかなり長くかかったそうですよ。
やり過したにせよいささか遅いのでは?」
(こいつ…何かで疑っている…仕方ない。言うか)
「わかりました。妻には内緒にしていてください」
(妻?)なんでここで嫁さんが出てくるんだ? ベテラン刑事は疑問に思う。
「実は私は妻のほかに愛している女性がいます。そしてそのときにも密会していました」
言いにくそうにこの教師は言う。
「いわゆる『不倫』ですか…そんなときに? 不自然じゃないですかね?」
「そうでもなければアリバイが作れないでしょう」
万が一の場合を考えて構築していた嘘であった。
「はは…なるほど(不倫…ね。それなら隠すのももっともだが…)いや。長々と失礼いたしました。もう少し他を当たってみますよ」
「お役に立てず申し訳ありません」
「いえいえ。では」
上条刑事は立ち去っていった。残った斑は歯噛みしていた。
(くそっ。何だこの『敗北感』は。あの男。マリオネットマスターでもないのに私をここまで圧倒するとは…
誰もいない応接室。そこで殺人の達人は、滅多な事では出さない憎悪にゆがんだ表情を見せていた。
(この屈辱。どうやって晴らしてくれよう…)
校庭では三つの戦いが終盤へと差し掛かっていた。再び間合いの離れた姫子と友恵。
「期待したとおりに素晴らしい戦いができましたわ。それについては感謝します。
ですが私もまじんちゃんの応援があるので、これ以上は長引かせられません。次の攻撃で終止符を打ちます」
「わたくしもそれは同じです」
再び弓を番える姫子。
「その腕では一矢が限度でしょう。それで私を止められねばあなたの負けです」
「覚悟の上です」
それを聞いて笑みが漏れる友恵。嘲笑ではない。死力を尽くしてもらえたことが嬉しかったのだ。
「そうですか。まいります」
友恵はダッシュする。そしてジャンプする。
(例え先読みして矢を放ち跳んでいる私を撃墜しても、それは彼女の攻撃範囲をも逸脱している。
通常ならば弓の餌食だが今は精々がその一矢だけ。左腕と体全体を使えば右腕は添えるだけにとどめ薙刀を振るうことは可能にせよそれも届かない。でも私はどちらも貰わない。いずれも捌く)
そして友恵の読みは、半分当たり半分外れた。
確かに姫子は矢を放った。ただ斜め上ではなく真上にである。これには友恵も虚を突かれた。
(何の意味が? 体力をなくしてよろけてたまたま上に行ったということかしら?)
不自然な体勢ゆえに硬直も長い姫子。何とか薙刀に持ち替えたときはすでに友恵は着地して一本背負いの態勢だった。
攻撃される前に問答無用で投げ飛ばす。軸のぶれない見事な背負いだった。姫子はしたたかに地面に叩きつけられる。
友恵はそのまま再び同じ腕を取り完全な破壊を試みる。
苦しい中、姫子は言葉をつむぐ。
「さ…さすがですわ。谷和原さん。正確無比な投げ方です。でもそれが仇になりましたわ」
「仇? それはいったい?」
「あなたはわたくしの逆で近寄ってはじめて攻撃可能ですからね。当然わざわざわたくしの得意の遠間に離したりはしないでしょう。
そして続けて攻撃するならここから動いたりしないでしょう。それが仇となりましたわ」
「そんな戯言で私を翻弄するのは無駄ですよ。一度やられていますからね」
「ええ。だから良いのです。今度は本当なのですから」
「たわごとは…」
後は言葉にならなかった。何かが友恵の右肩に当たって、その衝撃で言葉を失う。瞬間的にその物体を見る。
(これは…先ほど北条さんが天に向けて射った矢。
くっ…普通のときは突き刺さるのを防ぐためのゴムの先端が、この場合は重しとなって風の影響も少なくしてこの場にブーメランのように戻ってくる。
私がこの場に投げ飛ばすのを見越して…おしゃべりはこの矢が戻るまでの時間稼ぎと、私の注意を引きつけるため…)
後悔先に立たず。たちあがった姫子はすでに薙刀を左腕にたたえ『溜め』ができていた。神気が発動する。
『桜花乱舞』
竜巻のように続けざまに回転しての薙刀攻撃。
衝撃で投げがうてなくなった友恵は素直に逃げを選択したが巻き込まれてそれもかなわず。
「きゃああああーっっっっ」
華麗なる舞いの竜巻に巻き込まれて、ダメージが大きい。
投げられる事には慣れていても打撃には耐性がなく戦闘不能に。
そして姫子も片膝をつく。両者とも援護に回れる状態ではなかった。
姫子vs友恵は姫子の大逆転勝利だった。
逆上したみなみの『双子座(ジェミニ)』に翻弄される綾那だったが、それを捌いたりよけたりして何とかしのいだ。みなみは何とか落ちついて攻撃もやんだ。
「ああ…びっくりした。こうなったら…ごめんね。みなみちゃん」
綾那は決着をつけるべく彼女のマリオネット。『マドンナ』をみなみに近づける。相手の体力を吸収する大技。
『ピンクカーミラ』
女吸血鬼を意味するカーミラと言う名をつけられた技だ。ところが意識的か否か。みなみはその場から動いてしまった。
「ええええーっっっ!? そんなぁ。けっこう精神力使うんだよー。しばらく出せないじゃない」
自分の弱点をべらべらとばらす当たりはこの娘の頭の弱さを物語っていた。
「う…どうしてみんな私をいじめるの。みんな…みんな…ひどいよぉ」
どうも苛められっ子だったせいか被害者意識が強い。落ちつきかけていたのにまた泣き出す。そして跳んだ。
『塔(ザ・タワー)』? いや。それの強化版だ。綾那に命中したのに続けて跳んでまた落下。それを都合4回繰り返した。
その名は『蠍座(スコーピオン)』。まさにさそりの毒の尻尾のように突き刺さる。
だがこの攻撃は綾那が使い果たした神気を高めるのに一役買った。落ちついたところで攻撃がやむ。
「ようし。今度こそ決着だよ」
かなり荒々しい…とてもじゃれ合いで済まない戦闘をしているのに、あくまでスポーツライクな綾那は明るく宣言する。
神気が高まるとしゃがんだみなみの肩の上で逆立ち。
スカート姿なのだが(ちなみにまだセーラー服)ブルマーをつけているのはこの技を想定してのものだ。
逆立ちした状態でカポエラのように展開した足を回す。そのままみなみの首をねじる形だ。続いて反対方向に。
そのままみなみの眼前に降りて胸板にキックをみまい、それを踏み台に宙返り。顎へのキックと続く。
首をねじるのが単体では『ネッククラッシュ』で、胸板と顎を蹴るのが『ブレストクラッシュ』と言う技だ。
神気を高めることで連続して放てる。この連続技をこう呼ぶ。
『クラッシュオール』
小柄な綾那の体全体の荒業。それだけみなみの力の強さを認めたということか。だがみなみの気の弱さまでは考えてなかった。
「う…いたい…もうやだァァァァァァァァ」
とうとうしゃがみこんで本格的に泣き出してしまった。
「あああっ。ごめんっ。泣かないでみなみちゃん」
恐ろしく閥の悪くなった綾那は宥めにかかる。
綾那vsみなみ。ノーコンテスト。
そして元もとのバトルも大詰めに入っていた。
久子の突進を止めた真理だが、さすがに次の攻撃に移る前には逃げられていた。
「惜しい。それほどの力を正義に使えば…」
「だからアタイは悪じゃないと言ってるだろーが」
しかしお世辞にも正義とは言えるキャラクターではない。
「黙りなさい。私は悪の天敵。すなわち正義。その私に刃向かう。それすなわち『悪』だからあなたは悪なのです」
「……オメーが難癖つけてこなけりゃこんな喧嘩もしてないよ……」
さすがに真理もげんなりとしてきた。
「見えます。正義が支配する世界が…」
陶酔している久子。完全に友恵とは似たもの同士と言うことだ。
「ダメだな…話し合いの通じる相手じゃねーや。だったら来いよ」
真理は両腕をだらりと下げて待つ。
「テメーの正義とアタイの主張。どっちが正しいかの勝負だ」
「望むところです。正義こそ力。悪の栄えたためしはありません。いきます」
いうなり久子は高々とジャンプした。さすがにこれには真理も驚いた。なにしろ真理が見上げるほど高い。
「最大のジャンプで高度をつけ、最大のキックで勢いをつけてあなたを倒します。正義の怒り」
(あの技か…単純な突進技より変則的な分だけ威力は弱くても防ぎにくい…が…最大のジャンプとキックをこの間合いでとなると)
宣言通り久子は壁を思いきり蹴り速く飛ぶ。そう。真理の身長より遥かに高くどう見ても真理のいない軌道を勢いよく。
真理は何もしない。できないのでなくその必要がないのだ。
久子は真理の予想通り、遥かに真理を飛び越して誰もいない地面にダイビング。
「ほんぎゃああああああっ」
見本にしたいくらいの自爆だった。
「うあ…これはちょっと…おーい。生きてるか」
何しろ顔面でグラウンドの土がえぐれ溝が3メートルにわたって掘られていたのだから。
真理vs久子。久子の自爆。真理の判定勝(?)だった。
無限塾からの帰路。上条繁は携帯電話を取り出していた。
「もしもし。大久か。俺は気になることができたんで高校生の失踪をもうちょっと追う。そう係長に伝えてくれ。
それと悪いんだが無限塾の中尾勝と言う教師についてわかる範囲でいいから調べてくれ。何かが引っかかるんだ。何かがな」
ベテラン刑事といえど直感一つで勝手に民間人の調査をするのははばかられる。それでも調べずにいられない。
そんな雰囲気を中尾から感じ取っていた。
彼はスーツの内側に電話をしまうと再び捜査へと没頭する。
「姫ちゃん」
一対一の戦いゆえに手出しをせず見守っていた七瀬。みずき。榊原が駆け寄る。七瀬は姫子と友恵のダメージを治療した。
「う…うん…北条さん…私は負けたのですか?」
わずかにだが気絶していた友恵。倒れたままの友恵の手を取り優しく微笑む姫子。
「良い戦いでしたわ」
「いいえ。偉そうなことを語っておいて弱点は私の方が思い知りました。それは『慢心』。傲慢でした。恥ずかしいです」
「自信があるのはよいことですわ」
「北条さん。私は今一度やり直します。また戦っていただけますか?」
「今度は野試合ではなく、道場で試合としてなら」
姫子の優しい返答に表情を輝かせる友恵。
「ああ…まじんちゃんに負けない素晴らしい人ですわ。拳で語り合って、結ばれる友情」
(どっちかと言うとそのシュミを先に直したほうがよさそうだが)
思うだけで口に出さない榊原。もちろん姫子は否定はしない。にっこりと微笑み言う。
「そうですね。これからはお友達としてお付き合いですね」
さり気なく「お友達」とけん制している姫子であった。
「私ね、私ね。自分で自分がいやなの。泣き虫だし、弱いし、すぐ風邪引くし、走ればクラスで必ずビリだし、三角関数はちんぷんかんぷんだし」
「そんなのボクだってちんぷんかんぷんだよ」
かなり奇妙な展開をしていたのがこの戦いだった。
やっと泣き止んだと思ったら、悩み事相談室になっていた。ひたすらみなみの言葉に答える綾那であった。
「こんな私だから誰もお友達になんてなってくれないと思ってたの。
でもね、久子ちゃんと友恵ちゃんが誘ってくれたから、勇気を出して正義クラブに入ってみたの。
でもね…負けちゃったんだよね。私って何の役に立たないんだね。結局、痛くて泣いちゃったし」
「大丈夫だよ。友達ならボクがなってあげるから」
「本当?」
「うん。だって強いとか弱いとかじゃないもん。友達なんて」
頭が弱いといわれる綾那だが、それだけに真っ正直でもあった。嘘偽りのない真っ直ぐな瞳でみなみを見つめる。
「嬉しい」
みなみは感動して綾那に抱きついてきた。
「ちょ…ちょっと。ボクは女の子とそう言う事はしないよ。するなら…」
顔を赤くして上条のほうを見る。まだトラッカーと何かを議論しているがなんか妙に和やかになっていた。それでみなみは察した。
「何? 恋の悩み。待ってて。占ってあげる」
「え? 本当。お願い」
唯一、得意と自負する占いに及んだので自信に溢れるみなみ。綾那は綾那で上条との恋の行方を占ってもらうために真剣だった。
そして…痙攣する久子の後頭部をわしづかみにして地面から引き剥がす真理。
「い゛だい゛の゛…どっ゛でも゛い゛だい゛の゛」
泥だらけの顔で半べそで言う久子。しかし容赦しないのが真理の恐ろしさ。
「ここで一発締めとかねーとテメーはしつこそうだからな」
「村上。もうそれくらいにしてやってくれないか?」
大人の男の声がする。振り返ると柔道着をまとった藤宮博がいた。
「正義クラブのメンバーの不手際は私の不手際。この通り謝ろう」
大の男に深深と頭を下げられては、さすがに真理も怒りが失せる。久子を放す。
「麻神。突っかかるならよく調べてからにしろ。村上。すまないがしゃがんでもらえないか」
意図がわかったので素直にしゃがむ真理。そのつむじを久子に見せる。
「金髪に染めているのなら生え際は黒いはずだ。しかし村上は全てが金色。産まれついてのものだ。正義を守るのなら心と命の両方守るべきだろう」
敬愛する教師に諭されて、久子は神妙な表情になる。しかし自らの過ちに気がついた彼女は、藤宮同様に頭を下げた。
「ごめんなさい…」
「…わかりゃ良いよ…それに、ひと暴れしてここんとこのもやもやがすっきりした。それに対してだけは礼を言うぜ」
真理は和解の記しとして握手を求めた。久子もおずおずと手を差し出し堅い握手を…
「いたいいたいいたいぃぃぃぃぃぃ」
「ああっ。ごめん。力が入りすぎた」
真理の握力で小さな手を握られたら女の子ではたまったものではない。みんなが集まってきた。
「八方丸く収まったでござるな」
「あれ? 上条くんは?」
トラッカーを止めに行った筈の上条はどこだと探したら
「いやぁ。オメー見所があるぜ。その年でファーストガンダムの良さがわかるか」
「そうですね。後のも良いけどやっぱり最初のが一番ですよね。運転手さんもそう思います?」
すっかりオタク話で意気投合した二人だった。
放課後。七瀬と綾那の協力で元気を取り戻した正義クラブ3人娘は、グラウンドで居残り特訓中だった。
「電光藤宮キィィィィィィィッッッッックゥゥゥゥゥ」
アメフトばりの重装備の防具をつけた久子に、藤宮の必殺技が炸裂する。まともに食らってしまい吹っ飛ぶ久子。
「どうした。受け止めるんじゃなかったのか? 打倒村上はどうした」
容赦なき怒声が飛ぶ。
「はいっ。勘違いにせよ私の正義が通じませんでした。それが悔しい。だから彼女をまず超えます。もう一度お願いします。先生」
「よし。よく言った。いくぞ」
暑(苦し)い師弟の特訓は続く。それをビデオで収めている友恵は陶酔している。
「ああ…目標にまい進するまじんちゃん。素敵ですわ。そうだわ。今度は北条さんもお招きして上映会を開きましょう」
そして傍らのみなみは
(綾那ちゃん…私くじけないからね…でも…ダメかも)
もって生まれた弱気の虫はちょっとやそっとでは治りそうではなかった。
職員室。テスト問題を作成しているものの心はそこにない中尾。
(追い詰められた屈辱。以前に殺されひどい生活を余儀なくされた礼…ただ焼き殺すだけじゃ気がすまん。
貴様の息子を嬲ってお前にも苦痛を与えてやる。上条繁。
幸い奴らは何かにつけて目立つ。好意を持つものと同じだけ反感を抱くものもいるだろう。
いるはずだ。この斑信二郎の手先となる奴が…)
殺人鬼の不気味な独白が、無限塾に嵐を呼ぶのは間違いなかった…しかし。まずは外からの敵を迎える必要にもさらされていた無限塾であった。
次回予告
ついに悪漢高校総番が無限塾へ乗りこんできた。その圧倒的なパワーは四季隊と比べ物にならない。それを迎え撃つ男。彼と総番の遺恨とは? そして総番はどうして無限塾を狙うのか?
次回PanicPanic第9話『激突』
クールでないとやっていけない。ホットでないとやってられない。