世界のどこかにあるというカルボナーラの樹を求め、僕らは集まった。 スイスのルガール湖から山風に乗って、その豊かな香りが鼻をくすぐるのだから仕方ない。 「あなたが本当に見つけたいと思っているならだけど」とレオニーが僕に言う。 「ちょっと! ラサールの嘘つき! あたしおいしいカルボナーラ食べようっていわれたからおしゃれして来たのに、こんな山道ハイヒールで歩かせる気!?」 よそ行きなワンピース姿でエミルが僕に詰め寄ってきた。 彼女が不満を漏らすのも無理はなかった。しかし、動機はそればかりではなく、昨晩、交わした痴話喧嘩が動機の一つであることも、容易に想像がついた。 「まーまーエミルもラサールも。いい加減に喧嘩しなやっ」 そう2人を呆れた顔で見つめると、このメンバーの中で唯一、年長のユミルが2人の肩を軽く叩くと「さー噂のカルボナーラの樹がある?と言われている頂上まで。もうすぐなんやから」 そう明るく笑いかけると彼等に先に進もう!と促してみせた。 ──そこまで書いて、その先が浮かばず俺が唸っていると、横から佐伯京太郎がデスクトップの画面を覗き込み、「おまえなー、それじゃラノベ大賞無理だって」と茶々を入れた。 その言葉に怒った俺は、佐伯にラジオを投げつけた。 ラジオは一瞬にして壊れてしまい、俺の唯一の情報源がなくなった。 投げつけた直後、左伯は倒れた。俺は五千円のラジオと、親友を失った。 するとラジオから、不気味な声が聞こえて来る。 「カルボナーラの樹は、もうすぐそこや」 それは間違いなく、考えていた通りのユミルの声だった。 「カルボナーラは1944年のローマ解放で生まれた終戦と平和の料理やで。喧嘩なんか似合わん味や」 「そうだね、この美味しそうな香りに喧嘩なんて無粋だよ」と、レオニーの笑い声も聴こえる。 壊れかけのラジオから、砂嵐混じりで声が聴こえる。 いや、聴こえた、だ。たしかに俺の耳には聴こえたんだ。 「……言いたい事はそれだけか?精神鑑定に持ち込みたいにしても雑な妄想だな」殺風景な薄暗い部屋で、淡々とした口調で刑事が言った。 私の巧妙な殺人計画は、小さな綻びから瓦解することになった。 刑事が再び問い詰めて来た「なぜだ?なぜ佐伯京太郎をradioを用いて殺害したんだ?」 私は静かに刑事を見つめ、そして、沈黙のなか、radioカルボナーラ殺人計画の最終段階へと進んでゆく。 「何故、radioを用いて殺したか。それはradioがそこにあったから。何故、そこにradioがあったかというと、そこに……」 さてみなさん、この続きは映画館でご覧ください。以上、ありがとう名画サロンでした。次のコーナーは何ですか?レオニーさん? レオニーの返事は無かった。 私は急いで、レオニーの控え室に向かった。部屋のドアを開けると、そこに居た、否、有ったのは死んだレオニーだった。レオニーの頭からは樹が生えていた。その樹にはカルボナーラの実が実っていた。 まさに私の計画通りだ。 私はその実を割って、中から出てきたカルボナーラを食べる。すると私の頭の中に浮かんだのは、スイスのルガール湖の景色。私に、本当のカルボナーラの美味しさと、殺人の味を教えてくれた場所だ。 たちまち私は、口の中に広がる味を頼りにトリップする。 最後に一人。ユミルを殺すために。
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