2011-11-09
はばたくチカラ
中学生・高校生の部活File
志望校選択の理由のひとつになる「部活動」。さまざまな部活動を通じて輝いている先輩方の姿を編集部が取材します。
暁星中学・高等学校 競技かるた部
部員数 |
中学生 22名、高校生 10名 |
部活動の特徴 |
日々の練習を通じて、技術の向上と、精神の鍛錬を目指しています。年に何回か開催される競技会・昇段試験を通じ、段位の取得を個々の日常の目標にしています。チームワークを育み、団体戦での全国大会出場、そして上位進出をクラブの共通目標とし、毎日楽しく練習しています。 |
暁星中学・高等学校のかるた部は約20年の歴史があります。自身も競技かるたの世界で活躍されている田口貴志先生が顧問になってからは、16~17年が経ちます。全国高校選手権では今年、4年連続6回目の優勝に輝きました。
中学からかるたを始める生徒がほとんどですが、皆毎日楽しく練習しています。
今回は、日常の練習風景の紹介と、全国大会に出場した室伏君(高1)、坪井君(高1)、佐野君(高2)のインタビューをお届けします。
●競技かるた部練習風景
《中学生の練習風景》読み札の歌が読み上げられた瞬間、札が飛ぶ。10分の1秒を争う瞬間。
《高校生の練習風景》上の句が読み上げられる時、もっとも緊張感が高まる。
お手つきをしないよう、注意深くすばやく札を取る!
練習後は、部員揃って打ち合わせ。
●白熱した部活動の練習時間を動画で体感!
●全国高校選手権に出場した在校生にインタビュー
-なぜこの部活に入部されましたか?
- 坪井くん
- しっかり部活ができそうなところを選びました。とにかく何かで勝ちたかったんです。小学校のときはサッカーと野球をやっていたので、中学でもスポーツをするつもりでしたが、当時の選択肢にかるた部はありませんでした。でも、新入生歓迎会のとき流れていたビデオで、競技かるたの名人戦に出ていた田口先生の姿を見て、とても感動したんです。それで入部を決意しました。
- 佐野くん
- 入部した理由は、部の雰囲気がよかったからです。 「やるときは一生懸命やる」けれども「遊ぶときは遊ぶ」という雰囲気に惹かれました。 実際に入部してみても、皆仲が良いです。
- 室伏くん
- 僕は小学生のとき聖歌隊に入っていて、全国優勝を経験しました。そのときの達成感に喜びを覚えて、中学校でも何かで全国優勝したいと思っていました。そこで、競技かるた部を選びました。
-普段はどのくらい練習しているのですか?
- 室伏くん
- 平日は2試合、土曜は3試合練習します。ちなみに、1試合は90分程度です。大会前は日曜日も練習しています。
-それだけの長時間、練習を続けたり集中力を維持するのは大変ではありませんか?
- 佐野くん
- もう慣れました(笑)。でもやっているうちに、だんだん集中力は上がりますね。
- 坪井くん
- 辛いのは初めだけですよ。いまは楽しいです。
- 室伏くん
- 最初はがんばろうと思っても、集中力が途切れることがありました。いまは集中するポイントがわかってきたので、その分集中力も長く続いています。僕の集中力には、リズムみたいなのがあるみたいです。
-練習するにあたって、辛い時期はありませんでしたか?
- 佐野くん
- 僕は、辛いよりも楽しかったです。練習を重ねていくうちに、徐々にのびていく感覚がありました。
- 室伏くん
- 僕も、基礎練習を繰り返しているうちに、ある日突然、思ったとおりに身体が動くようになっていました。
-普段から何か心がけていることはありますか?
- 室伏くん
- テレビの音を小さくして、耳を悪くしないようにしています。小さい音も聞きとりたいからです。たとえば「お」ではじまる 「おとにきく」「おもひわび」が読まれるときは、「お」の次の音が聞こえるか聞こえないかの時点で、どの札かわかりたいんです。
- 佐野くん
- 僕も耳には気をつけています。大音量で音楽を聞くのは恐いです。それと、腰が痛くなるので注意しています。
- 室伏くん
- かるたをしていると、体のいろいろなところが痛くなります。とくに関節が痛くなりますし、つきゆびなんてしょっちゅうです。だから、身体の管理はしっかりしています。
-全国大会では緊張しませんでしたか?
- 佐野くん
- いつもと違う雰囲気で、かえってそれが良い緊張感になりました。
- 室伏くん
- 1試合目はさすがに緊張しました。
- 坪井くん
- 僕も、1試合目は緊張してちょっとうまくいかなくなってそのまま雰囲気にのまれてしまいました。調子は悪かったのですが、自分のなかでこうすれば勝てるっていう方法でやっていました。自分の実力には上と下の波があると思います。下のレベルのときでも勝てるくらいにしたいと思っています。
-全国大会前にくじけそうになったことはないですか?また、大会に勝ってから自分が変わったと感じたことはありますか?
- 佐野くん
- くじけそうになったことはありません。勝ちたいと思う気持ちのほうが強いです。大会を終えて、「努力すればうまくいくんだなぁ」という自信が付きました。
- 室伏くん
- ポジティブになりました。かるたの試合は男女や年齢、関係なく行うのですが、いままでは大学生の男の人と当たると「勝てないな…」と諦めていましたが、最近では勝つことができるようになりました。 つい最近の大会で、一昨年の日本2位の女性と対戦しましたが、最後の1枚ずつが残るところまでいけました。結局負けましたが、自分の実力がのびたなと感じました。
- 坪井くん
- 今まで面倒臭いとか、やらなくてもいいかなって思っていたことに対しても「頑張ろう」と、しっかり取り組むようになりました。練習の中で多少辛いことにぶちあたっても、苦しくなくなりました。練習を続ければ必ず勝てるようになりますから。
-全国優勝して頂点をとってしまいましたが、次の目標は何でしょう。
- 室伏くん
- 名人になりたいです。毎年一回、日本一を決める大会があって、そこで優勝すると名人になれるんです。
- 佐野くん
- 今年の夏果たせなかった、大きな大会(※)の三連覇を来年こそ実現したいです!
※全国高等学校小倉百人一首かるた選手権大会、全国高等学校総合文化祭、全国職域学生かるた大会 - 坪井くん
- 僕も三連覇したい。いろんな大会を勝ち続けたいです。
-最後に、暁星高校の魅力について教えてください。
- 佐野くん
- 暁星高校は第二志望校でしたが、入学試験のときに学校の雰囲気が良いなあと感じました。
- 室伏くん
- 暁星の良いところは、生徒同士はもちろん、先生ともすごく仲が良いところです。小学校・中学校から入ってくる子ともすぐ仲良くなれます。あと、がつがつ勉強する雰囲気はないです。
- 坪井くん
- 自由な雰囲気で気を許してふざけあえます。
●顧問の田口貴志先生にインタビュー
-先生がかるたを始めたきっかけは何ですか?
- 田口先生
- 小学校のときのかるた大会で覚えている札が取れて、とても嬉しかったことがかるたとの出会いです。中学高校時代は競技かるたを見ていて、実際にはじめたのは大学からです。
-かるたの魅力はどんなところでしょう。
- 競技かるたは、なにより札が取れた瞬間がおもしろいです。 試合中は緊張して辛いんですが、その分、札を取る1枚1枚に達成感があります。試合に負けたときでも、「今回は、●枚取れた」という達成感がありました。狙った札を素早く取ったときは、サッカーのシュートや野球のクリーンヒットと同じような気持ちよさが味わえます。
――競技かるた未経験の生徒を全国優勝まで導いていらっしゃいますが、生徒を伸ばす秘訣は何ですか?
- かるた部の顧問になって16~17年が経ちますが、最初は始めたばかりの中学1年生を指導するのに苦労しました。「明日までに、10枚だけ札を覚えてきなさい」と生徒に宿題を出しても、なかなか覚えてこなかったり、覚えた札を忘れちゃったり(笑)。そこで、覚えなくても競技かるたができる方法を考えました。この札は、取り札に「決まり字」という、その次の句を聞かなくても、歌を特定できる字を大きく書いたものです。最初はこれを用いることで、かるたを取る楽しみを感じてほしいと思ったのです。
かるたに愛着が出ると、「もっと覚えなきゃ」という気持ちが出ます。
-
練習では、同じ学年のレベルができるだけ均等になるように指導しています。実力が近いと全体的にもライバル意識が芽生え、チーム皆が強くなっていきます。休む子や辞める生徒もいなくなり、競争もあって…というよい状態ですね。
また、部活動にはできるだけ顔を出すようにしています。中学生の時にかるたの楽しさを伝え、信頼関係を築きたいと思っていますので。そして高校生で全国大会をめざすときは、自発的に練習に取り組めるよう、突き放します。できるだけ厳しく接しますが、今までの信頼関係があれば大丈夫ですし、自分のノウハウやアドバイスにも耳を傾けてくれます。
中3~高1は、伸びる時期ですが、同時に思春期で難しい時期でもあります。 そんなときでも、競技に楽しく取り組んでほしい。とにかくかるたを好きになってほしいと思っています。そうすれば自ずと部活を好きになり、そして学校も好きになるからです。