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“空飛ぶクルマ” 有人で試験飛行 初めて公開 愛知 豊田

“空飛ぶクルマ” 有人で試験飛行 初めて公開 愛知 豊田
ドローンのように空を移動することができる「空飛ぶクルマ」を開発する東京のベンチャー企業が、愛知県豊田市で行っている有人での飛行試験の様子を報道陣に初めて公開しました。
トヨタ自動車の出身者などが創業した東京のベンチャー企業、「SkyDrive」は、「空飛ぶクルマ」の有人での試験飛行を去年12月から愛知県豊田市で行っています。

今回、実験の様子が初めて報道陣に公開され、この会社が開発した全長およそ4メートル、高さおよそ2メートルの機体にパイロットが乗り込みました。

そして、操縦かんを動かすと、機体の四隅につけられた8枚のプロペラが回転して2メートルほど浮かび、時速4キロの速さで試験空間を1周していました。

「空飛ぶクルマ」は交通渋滞の解消や物流サービスの効率化などにつながるとして、世界で開発が進められていて、会社によりますと有人飛行試験に成功したのは、国内ではこの会社が初めてだということです。

この会社では2023年度から大阪などで、タクシーサービスを始める計画で、2028年度からは自動運転の空飛ぶクルマの実用化を目指すとしています。

「SkyDrive」の福澤知浩代表取締役は「飛んでいるところを見ると、どんな感じで生活が変化するのかや、モビリティの変化を実感すると思う。一緒になって、空飛ぶクルマが当たり前に普及するような世界を作りたい」と話していました。

早くも激しい開発競争に

空飛ぶクルマはまだ実用化の前ですが、アメリカの証券会社は2040年ごろには、世界全体で150兆円を超える市場規模の産業に成長すると予想しています。

次世代の交通システムの一翼を担うことへの期待もあって、国内外の企業が相次いで機体や運航システムの開発に乗り出しています。

国内では今回の「SkyDrive」のほか、トヨタ自動車がアメリカで空飛ぶタクシーの開発を手がけるベンチャー企業「ジョビー・アビエーション」に出資をして、機体の量産化技術などで協力しています。

また、川崎重工業やNEC、ANAホールディングスや日本航空なども、機体や運航システムの開発を進めています。

海外ではアメリカのライドシェア大手の「ウーバー」が、4年前に空飛ぶタクシーを運航する構想を打ち出し、ことし1月には韓国のヒョンデ自動車と共同で、乗客4人が乗れる空飛ぶクルマのコンセプトモデルを披露しました。

ベンチャー企業による開発も活発になっています。

ドイツのベンチャー企業「ボロコプター」は去年10月、シンガポールでパイロットが搭乗して、空飛ぶタクシーの試験飛行を行いました。

将来的には市街地に整備した離着陸用の専用スペースの間を、パイロットなしで移動できるようにする計画です。

中国のドローンベンチャーの「イーハン」も、人を乗せて飛行の実証実験を行うなど、開発競争がはやくも激しくなっています。

実現すれば「空の移動革命」

「空飛ぶクルマ」に明確な定義はありませんが、国が実現に向け作った行程表では、電動のプロペラを使ってヘリコプターやドローンのように垂直に離着陸し、パイロットなしで遠隔で操縦する乗り物とされています。

滑走路が要らず移動が効率的になることや、乗用車より部品の数が少なく、整備のコストを抑えられることも期待されていて、実現すれば「空の移動革命」になると注目されています。

経済産業省や企業で作る官民の協議会は、2023年の実用化を目標に据え、2025年の大阪万博で来場客を運ぶことも構想しています。

実現には多くの課題

ただ、実現には多くの課題があります。

人を乗せるため航空機並みの高い安全性や騒音を小さくすることが求められます。

航続距離を保つためバッテリーの性能の向上も欠かせません。

今回の有人飛行試験の成功は実用化への重要なステップですが、「SkyDrive」の岸信夫最高技術責任者は「まだ3合目だ。技術的なめどはついてきたが、今後は、具体的な飛行用途に合わせた新たな試験機を開発し、前例のない審査にクリアするハードルが残っている」と話していました。

現在、実験などが行われている機体はヘリコプターより小さく、人を乗せることができないドローンよりも大きいのが特徴です。

会社では、機体の四隅にある8枚のプロペラのうち、万が一、1枚が故障しても飛行を続けられるように開発を進め、飛行時間を現在の3倍の30分程度まで延ばせるよう、バッテリー性能の改善を進めています。

また、航空機と同じように型式証明などの審査を行う基準づくりや、離着陸場の整備、飛行する空域の調整など、制度面の整備もこれから必要になってきます。

官民の協議会は今年度中にも、必要になる制度を詳しくリストアップして、実用化に向けた行程表をより具体化させることにしています。

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