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渡辺酒造の酒造り
標高600メートルの高冷地飛騨ならではの厳冬寒造り
当蔵のある飛騨古川は、東は「乗鞍岳」「穂高岳」西は白山連峰に囲まれた高冷地です。冬は大変寒く、氷点下15度まで下がり、毎年1月~2月にかけて蔵がすっぽり埋まるほど雪に覆われます。降雪により空気は清浄化され、雪に埋もれた酒蔵は、酒造りに好適な室温が大きな変化もなく保持されます。この環境のもとで清酒の醪(もろみ)は低温長期の発酵経過をたどり、きめ細やかで香りよい酒ができあがります。困難を乗り超えてきた飛騨びとの力強さと酒造技術は、飛騨の厳しい寒さから生まれたのです。
日本酒の味に大きく関わってくるのは水です。飛騨古川は宮川水系と荒城川水系がぶつかる水の豊かな土地で、市街地中には清らかな水に鯉が泳ぐ用水路が引き巡らされています。仕込み水に使う水はミネラル豊富な中硬水で飛騨山脈を水源とする荒城川水系伏流水を敷地内の深さ55メートルの自家井戸から汲み上げて使用しています。硬水の仕込み水はミネラル成分(カルシウム・カリウム)が麹や酵母の栄養分となり、出来あがった酒をまろやかでキレの良い味わいに感じさせます。また蓬莱の自家井戸水はその水質もさることながら水量が豊富なため水温が常に一定に保たれ日々の酒造りを安定したものにしています。
水と並ぶ原材料の米ですが、こちらも地元飛騨で収穫された旨みたっぷりの酒造米「飛騨ほまれ」を中心に使用しています。近隣に所在する中山間農業研究所にて高冷地に適した優良な米づくりを研究しています。飛騨ほまれの特長は、軟質で最高級山田錦に匹敵する心白の大きさです。蓬莱が目指す綺麗な甘口、上質な癒し感を演出するにはピッタリのお米なのです。蓬莱では定番の普通酒、蓬莱上撰や小町桜にも飛騨ほまれを贅沢に使用しています。その他に全国の優秀な農家さんとネットワークを築き、兵庫県産山田錦や愛山、秋田県産亀の尾、岡山県産赤磐雄町、山口県産穀良都、北海道産吟風を使用、多様な米の品種による酒造りにもチャレンジしています。
平成28酒造年度原料米使用実績
岐阜県産飛騨ほまれ | 6,900俵 |
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岐阜県産飛騨みのり | 85俵 |
兵庫県産山田錦 | 1,056俵 |
兵庫県産愛山 | 54俵 |
秋田県産亀の尾 | 54俵 |
山口県産穀良都 | 55俵 |
北海道産吟風 | 54俵 |
岡山県産山田錦 | 2,100俵 |
岡山県産雄町 | 400俵 |
岡山県産赤磐雄町 | 54俵 |
福井県産越の雫 | 107俵 |
酒造りで大切なのは「酒をつくる人間」。渡辺酒造店の蔵人は全員が杜氏の技量を持つ酒造り職人集団です。昔ながらの古式酒造法と時代の最先端を行く吟醸造りをうまく合わせて13人という大所帯でじっくりと酒造りを行っております。現在、10月から翌年4月までの間に一升瓶で55万本の酒を造りますが、これ以上の量は造れませんので、すべてのお酒が限定酒です。私たちの酒造りは、いまだに人の手に多くをたよっています。古い木の道具を使い、じかに感じる香りや手触りを大切にしています。一本一本に魂を込めて皆様に「蓬莱に出会えてよかった!」と感動していただける美酒を目指して仕込んでおります。
その昔、斐陀の国府が置かれ、江戸期には、天領として中央の文化が流入した飛騨古川。冷涼な高原盆地であるが、稲作の改良と工夫が重ねられ、飛騨の穀倉地帯が築きあげられました。かって上米は飯米や酒造米として売りさばき、農民は、麦飯やいりご(くず米)の草餅などで米を食い出しました。これに、大量に漬け込んだ切り漬け、長漬け、ひね漬などの漬物や味噌などの発酵食品がよく食べられていました。なかでも朴の葉に味噌をのせて、囲炉裏で焼きながらごはんのおかずに食べる「焼き味噌」はたいへんおいしく、「味噌菜(さい)三年身上をつぶす」といわれるくらい酒と食がすすみます。飛騨人は浄土真宗に深く帰依し、殺生を好まず、一大行事の報恩講や年取りには、白飯、野菜や山菜の煮しめ、品漬け、豆腐料理がなによりのごっつぉうでした。私たちの酒は都内の有名地酒専門店や銘酒居酒屋に並ぶことはありません。けれども日々の生活にいろどりを添える慶びの一献として、飛騨びとの慎ましい暮らしの中にそっと寄り添っていけたら、といつまでも願っています。