コンテンツにスキップする

何も言わずに働け、コロナ巡り「言論統制」か-従業員の信頼揺るがす

チーズケーキ・ファクトリーで働くリンゼー・ラック氏は、これから「父の日」ブランチのシフト勤務が始まるという時に、同僚が新型コロナウイルスに感染したと上司から伝えられた。飲み物を作りながら同氏は、この知らせを何人かの同僚に話した。1カ月前のレストラン再開後、店舗スタッフの感染は心配されていた。ラック氏は勤務時間が終わって事務室に寄ったが、そこでは上司ともう1人の管理職が待ち構えていた。

  ゼネラルマネジャーの上司からは、今回の感染者発生を同僚を含め誰にも言ってはいけないと告げられた。感染した従業員が最後に勤務した時に一緒に働いたスタッフにのみ、会社側が伝えているという。次に誰かが感染しても知らされないままかもしれないと感じたラック氏は、全米労働関係委員会(NLRB)に苦情を申し立てた。ウイルス検査の結果を待ちつつ休暇を2週間取り、その間にチーズケーキ・ファクトリーで働き続けるべきか考えた同氏は、陰性の検査結果が出ると、生活のために結局仕事を続けた。

relates to 何も言わずに働け、コロナ巡り「言論統制」か-従業員の信頼揺るがす

リンゼー・ラック氏

写真家:ブルームバーグビジネスウィークのCaitlin O’Hara

  小さな子供たちを抱え、近くには高齢の母親も暮らす同氏は「自分が家族にどんなリスクをもたらしているのかが分からない」と話す。チーズケーキ・ファクトリーに13年間勤めてきたが、従業員に「無制限のほほ笑み」を約束するこの会社が本当に自分を守ってくれるのか、信頼が突然に相当薄らいだという。

  チーズケーキ・ファクトリーは発表文で、新型コロナを話題にすることを禁止してはいないが「個人の健康に関する秘密を守る義務を果たす上でバランスを取っている」と説明した。同社の弁護士はラック氏にNLRBへの苦情を取り下げるよう求めたが、それと引き換えに従業員には健康と安全について話し合う権利があると同氏が働く店舗に掲示する条件を出した。同氏はNLRBへの申し立てで企業が懲罰的損害賠償を課される公算はまずないと理解し、最終的に同意したという。

  NLRBおよび米労働省・職業安全衛生管理局(OSHA)に提出された苦情によると、過去数カ月間にさまざまな業界の多数の米雇用主が従業員に対し、新型コロナ感染症例の情報を共有したり、懸念さえ示さないよう求めたり、これに反したとして報復したりしている。

  そのような指示があったと指摘する従業員の雇用主にはアマゾン・ドット・コムやカーギル、マクドナルド、ターゲットが含まれるが、アマゾンとマクドナルド、ターゲットはこうした指摘を否定。カーギルは、健康に関する情報はプライベートなものだと考えていると説明した。

relates to 何も言わずに働け、コロナ巡り「言論統制」か-従業員の信頼揺るがす

アマゾンの倉庫でのデモ(5月)

Photographer: Lucas Jackson/Reuters

原題:
Shut Up and Work: Covid Gag Rules Leave Everyone in the Dark(抜粋)

(原文は「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」誌に掲載)
    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE