入院勧告やめる?新型コロナ、無症状者への措置緩和を検討 感染拡大の恐れも
2020年8月28日 05時55分
政府は新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けや運用の見直しの議論を始めた。「指定感染症」として入院勧告など必要な措置が多く、医療機関や保健所の業務を圧迫しているという声があるからだ。無症状や軽症者の入院勧告をやめることなどが想定されるが、措置の緩和は感染拡大につながる可能性があり、慎重な判断が求められる。(原田遼、藤川大樹)
◆「医療機関や保健所に負担」
加藤勝信厚生労働相は25日の記者会見で「医療機関や保健所の負担につながっているのではないかという指摘をいただいている」と発言した。厚労省の助言機関「アドバイザリーボード」に対し、指定感染症の解除を含めて議論を求めるようだ。
6月以降、全国の新規感染者は1000人を超える日も多く、新型コロナ専門病床を備える医療機関や保健所への負担は増している。東京都内のある保健所の担当者は「濃厚接触者の追跡や健康観察など、3、4月と比べ何倍も負荷がかかっている」と明かす。
◆一部措置を「エボラ相当」に変更
エボラ出血熱や重症急性呼吸器症候群(SARS)などの感染症は、その感染力や症状の重さによって「1~5類」「新型インフルエンザ等」に分類され、入院勧告や就業制限など取るべき措置が決められている。
まだ、未解明の部分が多い新型コロナは1月の閣議決定で、暫定的に「指定感染症」に位置付けられた。当初はSARSなどが含まれる「2類相当」の措置を取ることとし、患者に入院勧告や就業制限をできるようにした。
感染拡大を受け、さらに無症状者にも入院勧告(実際の運用はホテル療養)をするよう一部の措置を「1類相当」に変更。感染力の強い「新型インフルエンザ相当」の濃厚接触者への外出自粛要請もすることになった。厚労省幹部は「現在の運用は、いわばオーダーメード」と説明する。
◆功罪両面「慎重に議論」
では、措置をどこまで減らすべきか―。致死率が25~90%とされるエボラ出血熱に比べ、新型コロナ感染症の致死率は日本では約2%。「1類相当」の措置は不要とみる向きもある。
一部には、季節性インフルエンザと同じ「5類相当」にすべきだという意見もあるが、新型コロナの感染実態がつかみにくくなることを、厚労省の担当者は危惧している。また、入院勧告をやめれば、医師が入院が必要と診断しても応じない患者が出てくる可能性がある。知らない間に、高齢者らに感染させ、重症者や死者が増える懸念もある。
入院勧告とセットとなっている治療費の公費負担をやめ、入院費などで患者の自己負担が生じる可能性もある。アドバイザリーボードのメンバーの1人は、医療現場の負担軽減と感染拡大防止の両面の観点から、「慎重に議論を進めていきたい」と話した。
新型コロナを巡る主な動き | |
---|---|
1月15日 | 国内初の感染者を確認 |
28日 | 2類相当の指定感染症に閣議決定 |
2月14日 | 無症状者にも入院勧告をするように変更 (1類相当) |
3月27日 | 感染が疑われる人に外出自粛要請が可能に(新型インフルエンザ相当) |
4月7日 | 東京など7都府県に緊急事態宣言 |
5月25日 | 緊急事態宣言を全面解除 |
7月29日 | 全国の1日の新規感染者が1000人を超える |
PR情報