[3-56] 内閣総辞職級災害
爆発が起きていた。
クルスサリナから迸る無数の光が地を乱打し、ガス田と火薬庫と花火工場が同時に火事になったかのような絢爛で滅茶苦茶な爆発を巻き起こす。
ただし、その様子は先程までと明らかに違った。
狙いが定まっていない。定めていない。もしくは、この場にある全てが彼女の攻撃目標。
大地も。街も。青軍兵も。亡国兵も。非戦闘員も。ルネも。
全て全てを狙った光の雨が天より降り注ぐ。
「見境を無くしてる……!」
『障壁展開! 対砲撃と同様の防御態勢を取ります!』
すぐさま亡国軍陣地には光の屋根がいくつも展開された。
青軍側も可能な限りの防御態勢を取るが、防衛設備は街に隣接した陣地にしか無い。
特に悲惨だったのが黄巾力士と共に突撃してきた部隊で、虎の子の黄巾力士すら見捨てて這々の体で陣地へ逃げ帰っていく。残された黄巾力士は防御用の魔力が尽きた機体から順に四散していった。
もちろん亡国側も無傷ではなく、障壁を展開できる砲撃陣の近くに居た兵以外は雨宿りを求めて逃げ惑うこととなった。
『姫様! あれでは魔力が尽きるよりも先にクルスの身体が……』
「擦り切れるわよね、これ」
サーレサーヤの亡霊が切迫した声を上げる。
クルスサリナを操る『父祖』とやらの意識は、どう考えても彼女の肉体を道具としか考えていない様子だが、だとしても先程までこんな無茶な攻撃はしてこなかった。
ならおそらく、何か理由がある筈だ。こんなやり方ではあまりにも迅速にクルスサリナの身体を使い潰してしまう、とか。
そうなってしまえばルネはサーレサーヤとの契約を果たせない。
何より、放っておけば自滅するとしても彼女を放置しておける状況ではない。
「エヴェリス! 地脈制御術式がここに欲しいんだけど何秒で準備できる!?」
『
「ごく狭い領域でいいから、完全にこっち側の制御下において、あの『映し身』もどきをそこに誘い込んだら地脈とのリンクが切れて機能停止するはずよね!?」
『保証はしないけど多分ね!
……しょうがない、私がそっちに
んで100秒でいいなら請け負うけど』
「いいわ、そうして! あとは私がどうにかするから!
……≪
通信を切って、即座にルネは飛び立つ。
戦場の上空に浮遊するクルスサリナ目がけ、ルネは銀の流星となって猛進した。
『あああ! あああああああ壊れろ壊れろ壊れ壊れ壊れろぉ!!』
「そう言う自分がもう壊れてるじゃないの!」
デタラメに攻撃を繰り返す彼女に一直線に飛んで行ったルネは、片腕を閃光に焼かれながらもコンタクト。
剣で斬るでも刺すでもなく、ただ抱きついた。
「≪
『う……!?』
ルネから放出された魔力がシャボン玉のように展開されて二人を包み込んだ。
クルスサリナは地脈から魔力を受け取って力を振るっている。
言うなればワイヤレスで地脈に接続されている状態だ。
然るに、その接続を断てばいい。
ひっきりなしに放たれていた魔力の閃光が止まり、戦場は途端、静まりかえる。
魔力供給を受けられなくなったクルスサリナは魔法攻撃を止め、ルネを振りほどこうと空中でもがいた。
その外見からは信じられないほどの力だったが、デュラハンの姿を取ったルネもまた小さな身体と裏腹な怪力を誇る。抱き潰さぬよういくらか手加減しつつも、ルネはしがみつく手を緩めなかった。
しかし。
そちらではなく、二人を包む魔力の障壁が火花を散らして揺らぎ始める。
――
魔力を垂れ流して全ての魔法を遮断する≪
……はずだった。普通なら。
相手は地脈そのものと言うべき存在。
無線接続とは言え、クルスサリナはその魔力を直接流し込まれている状態だ。
それを対魔法攻撃用の防御魔法で遮断するのは、ただ単純に、ルネの側の出力が足りない。
『う……ぁ…………』
ドクン、とクルスサリナの肉体が脈動したように思った。
「くっ……」
『……あ、あああああああっ!!』
閃光と共に、自爆したかと錯覚するほどの圧力をクルスサリナは放つ。
魔力供給を遮断しきれないと判断したルネは咄嗟に自分の身だけを守るよう魔法を切り替えていた。
無傷ながらも弾き飛ばされたルネは空中で何度か回転する間に姿勢を整えて地に降り立つ。
――エヴェリスの準備は……!
後方、地面から数十センチ浮かんだ所に青白い光が刻まれ、魔法陣が描画されつつあった。
インクの代わりに光が迸り魔法文字を描き出していく。
「あと何秒!?」
『20!』
「分かった、もう行くわ!」
再び光の噴水と化したクルスサリナにルネは向かって行く。
そのクルスサリナが、彼女を含む天地が、縮んでいく。
いや、ルネが大きくなっているのだ。
「ルオオオオオオオオッ!!」
ルネは咆えた。人ならざる
ルネの姿は、銀の鱗とたてがみを持つ巨大な翼竜へと変じていた。
かつてテイラ=ルアーレの戦いにおいてルネが吸収したワイバーンの骸だ。
あれ以後、ルネは一度も肉体を乗り換えていない。未だにルネの一部として残っていたそれを呼び覚まし、ルネはワイバーンゾンビに姿を変えたのだ。
迫り来るルネ目がけ、クルスサリナは収束させた閃光を放つ。
「ゴアアアアアアッ!」
対してルネは赤黒き死の閃光のブレスを吐き、迎え撃った。
聖邪の閃光が正面からぶつかり合って空は色彩を失う。
そのせめぎ合いの中、ルネは羽ばたき、ひたすら羽ばたき、攻撃を押し返しつつクルスサリナとの距離を詰めた。
「……アアアアアア!!」
彼女の身体に剣の如き牙が触れるかという刹那。
ブレスを止めたルネは、叩き付けるように首を振り、クルスサリナに食いついて丸呑みにした。
『ええ!?』
傍らで成り行きを見守っていたサーレサーヤが驚愕する。
「≪
魔力を遮断する障壁を再度展開し、ルネはそのまま飛んだ。
ほぼがらんどうだった腹の中で、強烈な魔法が炸裂する。外からの魔力を防ぐだけで出力限界なのに、内からの攻撃はまともに防げない。ずん、と大きな音がして腹が熱くなったように感じ、飛行がぐらつく。
さらに肉体を内部より乱打する物理的衝撃。
銀色の鱗が飛び散り地に落ちる。
滑空か墜落か。
ルネが向かって行く先には……丁度書き上がった魔法陣。
――自壊も厭わぬ想いの暴走。あなたは意思の力で神の思惑を超えた……
このままでは危険だと察したのか、クルスサリナは全力で抵抗する。
ルネの腹の中で何かが何度も爆発し、白輝の閃光がルネの脇腹をぶち抜いて片翼にも穴を開けた。
――そこにだけは一欠片の敬意を払いましょう。
ラグビーかアメフトのように肩から突っ込んで、ルネは大地にハードランディングした。
しかし大地に直接描かれたわけではない魔法陣は、ルネをすり抜けて包むように宙に浮かび続けている。
ルネの肉体が内部からの圧力で爆散した、その直後。
魔法陣は目も眩むほどの青白い輝きを放ち、それきり、今度こそ本当に全てが静まった。
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