コロナと大学 学生の声に耳を傾けて
2020年8月28日 08時08分
コロナ禍で大学のキャンパスが遠い存在となっている。緊急事態宣言が解除された後もオンライン授業が主流で、新入生は友達をつくることもままならない。大学は学生の苦悩に耳を傾けてほしい。
#大学生の日常も大切だ
インターネット上では、「#」(ハッシュタグ=同じ話題を共有するための目印)を付けて、大学生たちとみられるつぶやきが発せられている。「うつ状態」「もう限界」との言葉も見られ、心配になる。四人に一人が休学を視野に入れているという、学生団体の調査結果も話題となった。
小中高校は再開しているのになぜ大学だけがという疑問や、オンライン授業を受け続ける苦痛、経済的な不安など、さまざまな要因が絡み合っているのだろう。
大学側の事情も理解はできる。大講義室での大人数の講義は、新型コロナウイルスの感染リスクへの懸念が強くなる。集団感染が発生した大学がバッシングを受けたことや、感染者が二十代に多いことも慎重になる背景にはある。
しかし学生の不安、不満をくみとることは、オンラインでもある程度可能だ。これまで大学側は慣れないオンライン授業の準備などで手いっぱいだったかもしれないが、事態の長期化を想定すれば、一人ひとりの学生に向き合うことに本腰を入れる必要がある。
宇都宮大学は八月上旬、ホームページ上での「学長から学生のみなさんへのお手紙」という形で、上級生がオンライン上で一年生と会話するピアサポーター制度の充実や、オンラインでのホームルーム開設などの方針を伝えている。
感染状況にもよるが、対面授業を部分的に再開する大学も増える見通しだ。オンライン授業との併用で、新たな学びの形の試行錯誤が続く。知の拠点として、今の苦悩の中から生み出された知見や教訓を社会に発信してほしい。
大学封鎖(ロックダウン)は世界的な課題でもある。国際労働機関(ILO)は学業や就労の機会の縮小などにより「ロックダウン世代」が出現する懸念を示している。
本来は、生まれた時からインターネットが利用可能な環境で育ち、デジタル社会の新たな枠組みをつくり出していく潜在能力を秘めた世代だ。能力が十分に発揮できない環境に置かれることは、長期的には社会にとっても大きな損失となる。
政府も傍観するのではなく、大学とともに、若者を支えていくすべを探り続ける必要がある。
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