香川に行って飲んでみたい! おすすめの日本酒(地酒)【四国編】

香川に行って飲んでみたい! おすすめの日本酒(地酒)【四国編】
出典 : mTaira/Shutterstock.com

香川県といえば「讃岐うどん」が有名ですが、酒造りも古代から盛に行われている県でもあります。瀬戸内海に面し、温暖な気候に恵まれている香川県には、いったいどのような地酒があるのでしょうか。香川の地酒の特徴と、香川の代表銘柄を紹介します。

  • 更新日:

香川の「さぬき酒」は神話にもゆかりあるお酒

香川の「さぬき酒」は神話にもゆかりあるお酒

AndyLai/Shutterstock.com

香川県には、古代より酒造りを行っていたと伝えられる神話があります。ここでは、その一部を紹介しましょう。

香川県は「さぬきうどん」で知られるように、かつては讃岐(さぬき)国と呼ばれていましたが、その讃岐国を治めた国造(くにのみやつこ)の祖先が、ヤマトタケルの弟である神櫛王(かみぐしおう/かんぐしおう)です。神櫛王は、十二人の王子とともに、この地で酒造りを行っていたとされています。

神櫛王とともに酒造りを行った者のなかに、ヤマトタケルの子である武殻王(たけかいこおう)がいますが、その四世孫にあたる黒丸という人は、芳醇で黒く澄んだお酒を造る名人だったとか。その酒に感銘を受けた帝は黒丸に「酒部」の姓を与えたと伝えられています。

また、奈良時代の天平年間には、神櫛王の後裔にあたる益甲黒麿という人物が、おいしいだけでなく、病人を癒し長生きさせる酒を造ったとして、同様に帝から「酒部」の姓を賜ったとの記録が残されています。

このように、香川県には、おいしい酒を造る先人の神話がいくつも残されていて、清酒発祥の地ではないかとも考えられています。

香川県独自の酒造好適米と豊かな水源

香川県独自の酒造好適米と豊かな水源

Sasaken /Shutterstock.com

香川県は、昔から稲作が盛んに行われている地域です。酒米の作付けも多く、香川県が独自に栽培している酒造好適米「オオセト」や、香川大学農学部によって2006年に開発された「さぬきよいまい」なども知られています。
また、近年、本格的な栽培が始まった「おいでまい」は、本来は飯米として開発された米ですが、香川県下の蔵元では、この「おいでまい」を使った日本酒造りもすすめられています。

酒造りにおいて、米と同じくらい重要なのが水です。日本で一番小さな県である香川県は、河川の本数が少なく、さらに温暖な瀬戸内海気候の恩恵を受ける代わりに、年間を通じて雨が少ない地域でもあります。
しかし、香川県には県南部に広がる讃岐山脈によって、質のよい水が得られる湧水地が存在しています。香川県内の6つの蔵元では、それぞれが醸す日本酒に合う水や、土地に縁のある水源を仕込み水にして、酒造りを行っています。

香川の人気銘柄

香川の人気銘柄

NaturalBox /Shutterstock.com

香川県には日本酒の蔵元が6つあり、それぞれ水や米などにこだわりをもって酒造りを行っています。そのなかから、まずは代表的な5銘柄を紹介しましょう。

財田川に舞い降りた鶴の姿から名づけられた銘酒【川鶴(かわつる)】

「川鶴」は、明治24年(1891年)の創業以来、観音寺市に蔵を構える川鶴酒造が造る日本酒です。蔵の裏手に流れる財田川に鶴が舞い降りた姿にちなみ、「川鶴」と命名されました。
初代の理念である「川の流れのごとく、素直な気持ちで飲み手に感動を」という精神は、今も蔵人一人ひとりに息づいています。また、「酒造りは米作りから」というポリシーのもと、自社田園にて米作りにも注力。そうして醸されるお酒は、濃醇さと素朴さをあわせもつ、どこかほっとする味わいで、地元はもとより首都圏でも人気を博しています。

製造元:川鶴酒造株式会社
公式サイトはこちら

金刀比羅宮の御神酒を造り続ける歴史ある蔵元が醸す【金陵(きんりょう)】

「金陵」を醸す西野金陵は、寛政元年(1789年)に香川県琴平で創業した由緒ある蔵元。西野金陵が醸す酒は、江戸時代から「讃岐のこんぴら酒」といわれ、金刀比羅宮の御神酒に用いられてきました。仕込み水には、中硬水の「八幡の恩湧(やはたのおんゆ)」と、軟水の「昭和井戸」を使い、清らかな雫のような日本酒を造ります。
「金陵」は、キリっとした飲み口とまろやかなコクが特徴で、心地よい余韻もたのしめると評判。2018年の全国新酒鑑評会では、「金陵 多度津蔵」と「金陵 八幡蔵」の2商品が金賞に輝きました。

製造元:西野金陵株式会社
公式サイトはこちら

現代の名工の名を冠した香川を代表する銘酒【国重(くにしげ)】

「国重」は、寛政2年(1790年)創業の綾菊酒造の代表銘柄のひとつで、綾菊酒造の名誉杜氏であり、「現代の名工」にも選ばれた国重弘明氏の名を冠した日本酒です。
なかでも酒造好適米「山田錦」を精米歩合35%まで磨き上げた「大吟醸 国重」は、至極の味わいと高評価。2016年4月に高松で行われたG7情報通信大臣会合における総理大臣主催レセプションにおいて、乾杯酒に選ばれた誉れ高い日本酒です。まさに香川を代表する銘酒のひとつといえるでしょう。

製造元:綾菊酒造株式会社
公式サイトはこちら

みずみずしさと熟成の深みを感じる旨口の無ろ過純米酒【金戎(きんえびす)】

「金戎」は、「金陵」で知られる西野金陵が造る銘柄です。香川県の酒造好適米「オオセト」や「雄町」を使って醸す「金戎」の特徴は、無ろ過で瓶囲いし、低温貯蔵して出荷すること。これにより、搾りたてのフレッシュな味わいと、熟成による深みのある味わいの両方をたのしめる日本酒に仕上がるのです。
この濃醇でみずみずしい旨味を堪能するには、冷や(=常温)や冷酒がおすすめ。食中酒にも適しているため、食事と一緒にたのしめば、食席をより華やかに彩ってくれるでしょう。

製造元:西野金陵株式会社
公式サイトはこちら

蔵元の伝統と技術を活かした地元の人に愛される銘酒【綾菊(あやきく)】

「綾菊」は、「国重」で紹介した綾菊酒造の代表銘柄です。この蔵元では、“郷土を愛する心”を酒造りの原点とし、名誉杜氏である国重氏に薫陶を受けた宮家秀一杜氏を中心に、継承された伝統と技術、人と自然を大事にしながら酒造りに取り組んでいます。
香川県産の良質な酒造好適米と地元綾川の伏流水を使う「綾菊」は、奥ゆきがありつつ、すっきりと飲みやすい口当たりが特徴のお酒。日本酒初心者にもおすすめと評判で、地元を中心に多くのファンに愛されています。

製造元:綾菊酒造株式会社
公式サイトはこちら

香川のそのほかの注目銘柄

香川のそのほかの注目銘柄

gori910 /Shutterstock.com

香川県は蔵元の数こそ多くはありませんが、各蔵元がそれぞれのコンセプトのもとに、特徴ある酒造りに挑戦しています。香川の蔵元が送る、個性的豊かな5銘柄をピックアップします。

小豆島唯一の蔵元が手造りで醸すやさしい純米吟醸酒【ふわふわ。】

「ふわふわ。」という、かわいらしい酒名の日本酒を醸すのは、小豆島で唯一の蔵元である森國酒造です。2005年創業という新しい蔵元ですが、高松市で130年以上続いた池田酒造が前身で、日本では珍しい島仕1込みの蔵元として、小豆島の気候と豊富な湧き水を活かした酒造りをスタートさせました。
森國酒造では、手造りによる良質な酒造りを大切にし、ラベルも1本1本手作業で貼っています。そうしてできた「ふわふわ。」は、果実の香りがする穏やかでやさしい味わい。シンプルでオシャレなラベルにも注目です。

製造元:森國酒造 小豆島酒類販売株式会社
公式サイトはこちら

小さな蔵元が醸す個性に満ちた無ろ過熟成の酒【悦凱陣(よろこびがいじん)】

「悦凱陣」は、明治18年(1885年)に琴平町で創業した、丸尾本店が造る日本酒です。今では希少な木製の甑(こしき)を使い、無ろ過で熟成するのが丸尾本店の酒造り。タンクごとに味が異なり、骨太で芳醇な旨味を基本としながら、年ごとに違った表情がたのしめるのが特徴です。
代表銘柄である「悦凱陣」は、個性に富んだ味わいが魅力の日本酒のため、素材の味がしっかりした料理と組み合わせてたのしむのもおすすめ。小さな蔵元ながら、グルメ漫画で紹介されたことで、一躍全国に名が広がりました。

製造元:有限会社丸尾本店
公式サイトはありません

まるでヨーグルトサワー! 女性酒造家が開発した新時代の酒【讃岐くらうでぃ(さぬきくらうでぃ)】

「讃岐くらうでぃ」は、「川鶴」で紹介した川鶴酒造の女性酒造家、藤岡美樹氏が企画・開発した注目の銘柄です。そのコンセプトは、鶏肉をニンニクなどのスパイスで味つけし、オーブンなどでじっくり焼いた、香川の郷土料理「骨付鳥」と一緒に飲んでおいしい酒。通常の3倍の麹を使って醸すことで生まれる風味は、まるでヨーグルトサワーのようにさわやかです。アルコール度数を抑えたことで、ジョッキで飲める日本酒として評判で、20代や30代のリピーターが多い、新時代の日本酒です。

製造元:川鶴酒造株式会社
公式サイトはこちら

「夜を明かすほどたのしく飲んでほしい」という願いが込められた生酒【月中天(げっちゅうてん)】

「月中天」は、「金陵」「金戎」を造る、西野金陵が醸す日本酒です。印象的なその銘柄は、中国の故事「壷中天(壷を覗くと天国が見える、転じて酒を飲んでこの世の憂さを忘れるたのしみ)」を引用したもの。「月の中=夜」に「天=天国=たのしむ」ためのお酒として、夜に仲間たちと集って酒を酌み交わす宴をイメージして命名されました。
「月中天」は、香川の酒米「さぬきよいまい」を100%使用した生酒で、熟したマスカットのような香りが特徴。軽快な味わいは、肉料理にもぴったりです。

製造元:西野金陵株式会社
公式サイトはこちら

ほろ酔い気分の笑みがこぼれる、香り華やかな吟醸酒【ふふふ。】

「ふふふ。」は、「ふわふわ。」を造る小豆島唯一の蔵元、森國酒造が造る吟醸酒です。55%まで磨いた広島の酒米「千本錦」を、無ろ過で仕上げる「ふふふ。」は、華やかな香りと旨味を存分に感じつつも、すっきりとしたあと口が持ち味のお酒。飲み飽きしないため、飲みすすめるうちに、「ふふふ」と笑みがこぼれそう。
森國酒造には、ほかにも純米酒「うとうと。」、本醸造「びびび。」など、独特のやわらかい語感がたのしい銘柄や、「小豆島の輝」など瀬戸内海の景色を思い起こさせる名前の銘柄がそろっています。

製造元:森國酒造 小豆島酒類販売株式会社
公式サイトはこちら

伝統を引き継ぎながらも、冒険心にあふれた銘柄がそろう香川のお酒。日本酒らしい日本酒から、ライトで飲みやすい新感覚の日本酒まで幅広くたのしめます。うどんだけではなく、日本酒巡りの旅として、香川に訪れてみるのもよいですね。

香川県酒造組合 香川県酒造協同組合

おすすめ情報

関連情報

日本酒の基礎知識

徳島に行って飲んでみたい! おすすめの日本酒(地酒)【四国編】

徳島に行って飲んでみたい! おすすめの日本酒(地酒)【四国編】
出典 : Artem Mishukov/Shutterstock.com

徳島県は海の幸や山の幸に恵まれた、自然豊かな地域です。県をあげて日本酒のブランド化が推進され、個性際立つ蔵元と地酒が数多く存在します。良質な水と食材に育まれた徳島の日本酒の魅力を、人気の銘柄とともに見てみましょう。

  • 更新日:

徳島の豊富で清涼な水と旬の食材が育てるお酒

徳島の豊富で清涼な水と旬の食材が育てるお酒

YMZK-Photo/Shutterstock.com

徳島県は、四国のなかでもっとも東に位置し、瀬戸内海と太平洋に囲まれ、「鳴門の渦潮」で知られています。かつては阿波国(あわのくに)と呼ばれ、この地の伝統芸能である「阿波踊り」は、日本を代表する踊りとして世界的な知名度を有しています。

また、徳島県はその約8割を山地が占め、豊富な水源にも恵まれています。吉野川や那賀川、そして国土交通省から“四国随一の清流”と認められている穴吹川など、水質のよさで知られる河川が何本も流れているのです。この良質な水こそが、徳島県の日本酒がおいしいと評される源になっています。

また、瀬戸内海側は晴れる日が多く、太平洋に面した地域は四季の移り変わりがはっきりしているため、徳島県内ではさまざまな農産物の栽培が盛んです。なかでも阿波市は、酒造好適米の最高峰とされる「山田錦」の産地として有名で、そこで栽培された山田錦は「阿波山田錦」と名づけられ、徳島固有の特徴をもちます。この阿波山田錦も、徳島県の地酒の個性を生み出す要素といえるでしょう。

徳島の日本酒にある二大ブランド「阿波十割」と「LED夢酵母」

徳島の日本酒にある二大ブランド「阿波十割」と「LED夢酵母」

kitsune05 /Shutterstock.com

徳島県の蔵元が加盟している徳島県酒造組合は、徳島産の日本酒について、2つのブランドを掲げています。いずれも日本酒造りに欠かせない原材料に関するもので、ひとつは「阿波十割」、もうひとつは「LED夢酵母」です。

「阿波十割」とは、徳島県内の蔵元が、徳島県産の酒米と徳島県内で採取された水を100%使って醸した純米酒のこと。味、香り、バランスなど、さまざまな項目について審査を行い、合格した日本酒のみ「阿波十割」の酒として認定されます。

一方、「LED夢酵母」とは、徳島県立工業技術センターが開発した、LEDを使って育てた新しい酵母です。フルーティな香りと強い発酵力が特徴で、この酵母で醸すと、果物のように軽やかでフレッシュな香りがたのしめる日本酒を造ることができます。

徳島県下には酒造組合に加盟している蔵元だけでも24あり、ひとつの蔵元で複数の銘柄を造っているところも少なくありません。徳島の地酒を飲む機会があったら、ラベルに「阿波十割」と「LED夢酵母」のロゴがあるかどうか、チェックしてみるとよいでしょう。

徳島の人気銘柄

徳島の人気銘柄

kathayut kongmanee/Shutterstock.com

徳島県には、規模の大小を問わず、個性豊かな蔵元がたくさんあります。なかでも人気のある銘柄を紹介していきましょう。

活きのよい鯛が踊るラベルが目印【鳴門鯛(なるとたい)】

「鳴門鯛」は、鳴門市において200年以上の歴史をもつ老舗蔵、本家松浦酒造場が醸す代表銘柄です。その酒名は、激流を遡ることで肉質が引き締まり、上質な脂も乗って美味とされる「鳴門海峡の鯛」にちなんで名づけられました。
とくに、圧力をかけずに醪(もろみ)を搾る「袋搾り」で造られた数量限定のお酒、「鳴門鯛 純米大吟醸 雫搾り」は秀逸。熟れたバナナを思わせる芳醇な香りと、袋搾りならではのクリアな口当たりは、思わず笑みがこぼれるおいしさです。

製造元:株式会社本家松浦酒造場
徳島の日本酒【鳴門鯛(なるとたい):本家松浦酒造場】老舗蔵元が醸す海外でも人気の銘柄

「芳乃川」こと吉野川に由来する名をもつ銘酒【芳水(ほうすい)】

「芳水」は、かつて吉野川が漢詩で「芳乃川(よしのがわ)」「芳水(よしのみず)」と詠われたことから命名された日本酒です。蔵元は、その吉野川南岸に位置する井川町に蔵を構える、芳水酒造。大正2年(1913年)創業の歴史をもつ蔵元と同名のお酒は、酒米にこだわり、米のもつ特徴を活かして磨き上げられ、吉野川の清らかな水を使って造られています。
気品のある香りと、つややかでふくらみのある味わいが持ち味で、さらりとした飲み口がクセになる旨さ。全国新酒鑑評会では何度も金賞に輝いた実績をもつ、実力派の日本酒です。

製造元:芳水酒造有限会社
徳島の日本酒【芳水(ほうすい):芳水酒造】清流吉野川にあやかった芳香美味なる清酒

家族経営の蔵元が米と水だけで造る素朴で力強い酒【旭 若松(あさひわかまつ)】

「旭 若松」は、徳島県那賀郡那賀町に佇む、家族3人で営む那賀酒造が造る日本酒です。規模は小さいですが、創業は享保10年(1725年)、現当主は11代目という歴史をもつ蔵元。「米と水だけで造る酒」を、ひたむきに造り続けていて、麹の一部には、自家田園で栽培した米を使うというこだわりようです。
「旭 若松」のラインナップは、火入れ原酒、火入れ加水、生酒の3種類のみで、いずれも芳醇旨口な味わいと、素朴で力強い風味が同居する杞憂な味わいです。

製造元:那賀酒造有限会社
徳島の日本酒【旭 若松(あさひわかまつ):那賀酒造】江戸時代から続く“米と水だけの酒造り”から生まれ

ポップなラベルとフルーティな味わいの「日本酒らしくない日本酒」【三芳菊(みよしきく)】

「三芳菊」を造る三芳菊酒造は、明治22年(1889年)に創業という老舗蔵ですが、その酒造りのポリシーは、日本酒の常識や古い考えに捉われず、飲む人に喜ばれることだけを考えること。そうした考えから生まれた代表銘柄「三芳菊」は、「フルーティでおいしい」「日本酒じゃなくてワインのよう」と評価され、従来の日本酒とは一線を画す飲み口です。
また、日本酒とは思えないキュートな絵柄のラベルも特徴で、とくに女性からの支持が高く、ソーシャルメディアを通して「三芳菊を飲む女子会」が人気を集めるなど、独自の日本酒文化を築いています。

製造元:三芳菊酒造株式会社
徳島の日本酒【三芳菊(みよしきく):三好菊酒造】ラベルも味も個性的な我が道を貫く日本酒ブランド

歴史ある蔵で醸し出される徳島ブランドに注目【御殿桜(ごてんさくら)】

「御殿桜」を醸す斎藤酒造場は、徳島県の県庁所在地である徳島市内にある蔵元。昭和14年(1939年)の創業ですが、もともと100年ほど前からあった蔵元を、斎藤家が買い取って酒造りを始めました。
木造の大きな梁が渡された蔵には、大きな蒸し窯やタンクが並び、搾りは昔ながらの槽搾りで行うなど、手造りによるていねいな酒造りが斎藤酒造場の魅力。代表銘柄である「御殿桜」は、徳島県産の米と剣山系の伏流水、そしてLED夢酵母を使って造られた、まさに徳島らしい1本です。

製造元:有限会社斎藤酒造場
徳島の日本酒【御殿桜(ごてんさくら):斎藤酒造場】昔ながらのていねいな仕事から生まれる阿波の地酒

徳島のそのほかの注目銘柄

徳島のそのほかの注目銘柄

taa22 /Shutterstock.com

徳島県には、ひたむきに日本酒造りに情熱を傾ける蔵人や、その酒造りを熱心に支える販売者や消費者が数多くいます。そんな人々の想いが形となった、注目の銘柄を紹介しましょう。

但馬杜氏が寒仕込みで手がける鑑評会でも常連酒の逸品【今小町(いまこまち)】

「今小町」は、徳島県産の山田錦と徳島酵母、そして四国山系の中硬水の水質をもつ伏流水で醸すお酒です。蔵元である中和商店は、もともと刻み煙草の製造を生業としていましたが、煙草が専売となったことから大正15年(1926年)に酒造業に転身したのだとか。
蔵を構える三好市池田町は、周囲を山に囲まれた土地で、四国のなかでも冬の寒さは厳しく、寒仕込みにはうってつけの土地柄。その自然の恵みを活かしながら、但馬杜氏を中心とした蔵人たちが、真心を込めた酒造りを続けてきました。繊細かつ米の旨味が際立つ「今小町」は、全国新酒鑑評会でも受賞常連のお酒で、過去に幾度も金賞に輝いています。

製造元:合名会社中和商店
公式サイトはこちら

有志と蔵元の協力で蘇った、名杜氏の名を継ぐ格調高い酒【高柿木(たかがき)】

「高柿木」は、日本酒販売専門店が加盟する「酒と食 匠の会」の特注銘柄で、造り手は先に紹介した「芳水」の芳水酒造です。名杜氏として引く手あまただった高垣克正氏が芳水酒造に移ってきた際、できるだけ長くとどまってほしいという有志の想いから、杜氏の名に由来して立ち上げたのが始まり。高垣杜氏が他の蔵元に移籍したことで、いったんは廃番となりましたが、高垣氏の後を継いだ竹内杜氏の手によって、見事復活を果たしました。骨格のあるフルボディの味わいが格別の「高柿木」は、販売店の思い入れも強い逸品です。

製造元:芳水酒造有限会社
公式サイトはこちら

日本酒好きの有志による棚田の米作りから始まる限定酒【お殿田(おでんでん)】

「お殿田」は、徳島県の日本酒好きが集まる「棚田で地酒を造る会」の有志約30人が、自分たちが納得する酒を造りたいという想いで米作りを行い、「今小町」の中和商店が日本酒に醸したというレアなお酒。つまり、消費者が生産者にブランド構築を提案するという、究極のプライベートブランドといえるでしょう。
1997年に初代「お殿田」が誕生して以降、最新で21代目となりますが、会員限定品のため流通はごく限られた限定酒。「こんな酒造りをしている人たちもいるのか」という例として、知っておいてほしい銘柄です。

製造元:合名会社中和商店
公式サイトはこちら

徳島県には、蔵元の歴史や規模にかかわらず、志と勢いを感じる地酒がそろっています。個性的な蔵元や、日本酒を愛して止まない人々が育む徳島の日本酒を、ぜひ味わいに行ってみたいものです。
徳島県酒造組合

おすすめ情報

関連情報

日本酒の基礎知識