島根の日本酒の選び方 日本酒ライターに聞いた
日本酒ライターの関 友美さんに、島根県の日本酒を選ぶときのポイントを3つ教えてもらいました。
醸造方法で選ぶ 熟成タイプorフレッシュタイプ
唎酒師/日本酒ライター/コラムニスト/蔵人/フリーランス女将
島根県は全体的に「熟成」の文化が根づいたエリアといえます。もともと日本酒は冬場につくったお酒をタンク貯蔵して、暑い夏場を越え徐々に味わいが円熟してくるのを楽しむ嗜好(しこう)がありました。近年では好まれる味わいの変化や、冷蔵設備、流通網の発達によってお酒ができたらすぐに瓶詰めして冷蔵庫に保管されることも多くなりました。どちらも正しい日本酒の楽しみ方です。
島根県の日本酒は、もとの「熟成」を踏襲(とうしゅう)する熟練者向けのタイプと、現代の「フレッシュ」をウリにする初心者向けのタイプが存在します。「熟成タイプ」は3カ月~数年の貯蔵を経て味をまろやかにしてから出荷する、味わいがおだやかなお酒のことを指しています。それぞれがどちらのお酒なのか? 注意しながら選ぶ必要があります。
必ず記載があるわけではないのですが「お燗向け」「温めておいしい」「燗酒コンテスト受賞」などの記載がラベルにある場合、「熟成タイプ」であることが多いです。蔵ごとの特性もありますから、この後紹介するおすすめ商品も参考にしてみてください。
簸上清酒『純米吟醸 山廃 七冠馬』
島根県産の「佐香錦」を使用して作られた『純米吟醸 山廃 七冠馬』です。シンボリ牧場と縁戚関係にある酒蔵で、1985年に名馬シンボリルドルフが実際に七冠を飾ったことを祝して命名されました。味わい深い冷酒を探している人にぴったりの1本です。
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唎酒師/日本酒ライター/コラムニスト/蔵人/フリーランス女将
「熟成タイプ」のお酒には、米由来の穀物香がしたり、長期間熟成してカラメル臭がするものなどが存在します。
人の嗜好はそれぞれなので「はじめて日本酒を飲む」という人のなかにも好む人もいますが、どちらかといえば日本酒初心者にすすめたいのは「フレッシュタイプ」のやわらかなりんごのような吟醸香や、バナナや南国フルーツにも似た華やかな酵母由来の香りがするものです。
香りは人の食欲(飲みたい欲)を大きく左右するもの。ネットでも、商品情報やレビューを慎重にチェックして選びましょう。
吉田酒造『月山 特別純米 出雲』
フレッシュなタイプの『月山 特別純米酒 出雲』です。 地元産の佐香錦と五百万石を原料に、「日本一柔らかい水」といわれている硬度0.3の超軟水を使用してつくられた日本酒。すっきりとしながらも華やかな香り、米本来の旨味を優しく感じられます。
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唎酒師/日本酒ライター/コラムニスト/蔵人/フリーランス女将
島根県で栽培されている酒造好適米は、「改良雄町(おまち)」、「改良八反流(はったんながれ)」、「神の舞」、「佐香錦(さかにしき)」「五百万石(ごひゃくまんごく)」の5種類がメインです。発酵するときに米が溶けやすいものは濃醇な味わいに、硬く溶けにくいものは端麗な味わいになりやすいといわれています。
このなかだとこのようになります。
・濃醇な味わい「改良雄町」
・やや端麗な味わい「改良八反流」「神の舞」「佐香錦」
・端麗な味わい「五百万石」
ただ、できあがるお酒は酒蔵のつくり方によっても違います。選ぶときのひとつの目安程度にしてください。
旭日酒造『純米酒 十旭日 五百万石』
五百万石を自社精米するなど、米にこだわりをもってつくられています。米の旨味が存分に味わえます。
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ここまで紹介した、島根県の日本酒の選び方のポイントをふまえて、日本酒ライターの関 友美さんに選んでもらったおすすめ商品をご紹介します。
王祿酒造『超王祿 本生』
酒蔵 | 王祿酒造 |
---|---|
原料米 | 五百万石 |
タイプ | フレッシュ |
アルコール度数 | 15度以上16度未満 |
日本酒度 | - |
酸度 | - |
容量 | 300ml、720ml、1800ml |
近年島根酒のレジェンド王禄(おうろく)という貫禄
日本酒ファンのなかで知らない人はいないほどの、大人気銘柄。蔵元の石原丈径さんが実家である蔵に戻ってから、再興を目指して酒づくりの手法や味わいの独自性の追求をした結果、現在の酒質に行きつきました。
1.全品無濾過、2.生・あるいは生詰、3.全量瓶貯蔵、4.ブレンドしない、5.限定生産、6.徹底したマイナス5℃の温度管理をかかげる「王禄」は島根では異色の存在です。いくつかの商品がありますが、この『超王禄』は「王禄」のさらに先を目指したお酒として位置づけられ、初心者にもぜひおすすめしたい一本!
ぴちぴちとしたフレッシュな味わい、米の旨味も感じるのに辛口で酸も強めでスッキリタイプの純米酒。もちろんつめたーく冷やして飲むのが正解です。
吉田酒造『月山 特別純米 出雲』
出典:Amazon
酒蔵 | 吉田酒造 |
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原料米 | 佐香錦、五百万石 |
タイプ | フレッシュ |
アルコール度数 | 15度 |
日本酒度 | ±0 |
酸度 | 1.5 |
容量 | 300ml、720ml、1800ml |
超軟水より引き出された味や香りの旨口純米酒
フレッシュなタイプの島根酒「月山」です。吉田酒造からのぞむ山「月山」には、難攻不落として有名になった富田城がありました。かつてその年の一番いい仕上がりの酒を「月山」と名づけ、最高の酒として富田城の殿様へ献上していたそうです。この歴史背景になぞらえて「殿様へ献上していたような最高の酒を、常につくりつづける」と「月山」と命名されました。
紹介する『特別純米酒 出雲』は、「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」の最高金賞も獲得した旨口のお酒です。地元産の佐香錦と五百万石を原料に、「日本一柔らかい水」といわれている硬度0.3の超軟水を使用してつくられました。
このような超軟水ではなかなかキレのいいお酒はつくりにくいのですが、吉田酒造は水質を操作することなく醸造の技術力でカバー。っきりとしながらも華やかな香りと米本来の旨味を優しく感じられるお酒すに仕上げられています。
富士酒造『出雲富士 純米 山田錦 白ラベル』
酒蔵 | 富士酒造 |
---|---|
原料米 | 山田錦(島根県産) |
タイプ | フレッシュ |
アルコール度数 | 16度 |
日本酒度 | - |
酸度 | - |
容量 | 1800ml |
冷酒からお燗まで食事と合わせて楽しむ純米酒
人と人との縁を結ぶといわれている出雲大社のお膝元で酒をつくり続けてきた富士酒造。地元産の米を中心に使用し、それぞれの特徴を最大限活かす製造方法を採っています。
この純米酒は、フレッシュとまではいわないまでも熟成タイプではなく、おだやかでバランスの取れた甘みと酸味が特徴のお酒です。島根県産山田錦を100%使用し、上品でややすっきりとした酒質に仕上がっています。
冷たくひやしてもおいしいですが、器を手で包んであたためて飲んだり、お燗して飲むとまた違った表情を見せてくれます。旨味と旨味の相乗効果によって、食が進む一本。さまざまな食事とあわせて楽しみたい人におすすめしたいお酒です。
旭日酒造『十旭日 純米吟醸 佐香錦55 おりがらみ生』
酒蔵 | 旭日酒造 |
---|---|
原料米 | 佐香錦(島根県産) |
タイプ | フレッシュ |
アルコール度数 | 15度以上16度未満 |
日本酒度 | +9 |
酸度 | - |
容量 | 1800ml |
米の個性を活かしさまざまな表情を見せてくれる酒蔵
とにかく米それぞれの特性が出るような酒づくりや商品構成にこだわっているので、フレッシュな新酒から、熟成酒、昔ながらの蔵付き酵母をつかった生酛(きもと)づくりまでさまざまなバリエーションを持ちます。
使用する原料米は、主に奥出雲産のもので、丁寧に自家製米されます。実は自家製米するための精米機を持つ酒蔵は少なく、多くの場合は委託精米に頼っています。そうするとベストなタイミングで精米できなかったり、せっかくこだわったお米にほかのお米が混じったりする危険性も。決して安くはない機器ですが、それを所有する旭日酒造の米に対する想いを感じてもらえるのではないでしょうか。
今回紹介するのは、蔵のなかでもライトタイプのお酒。島根県産の佐香錦を使って、やや甘いような吟醸香が鼻に優しい純米吟醸。さわやかかな? と思ったのもつかの間、米の旨味を含んだジューシーさが口いっぱいにひろがります。そのあとは口の中に残らず後キレするので、次々と飲めてしまう不思議なお酒。瑞々しい夏のお酒を求める人にぴったりです。落ち着きを放つ味わいの熟成タイプ。
簸上清酒『純米吟醸 山廃 七冠馬』
出典:楽天市場
酒蔵 | 簸上清酒 |
---|---|
原料米 | 佐香錦(島根県産) |
タイプ | - |
アルコール度数 | 17度以上18度未満 |
日本酒度 | +5 |
酸度 | 1.5 |
容量 | 720ml、1800ml |
七冠を祝して命名された縁起のいい島根酒
1712年創業の、300年を超える歴史ある酒蔵です。その名を聞けば、競馬ファンが心躍る縁起のいい銘柄。実はシンボリ牧場と縁戚関係にあって、1985年に名馬シンボリルドルフが実際に七冠を飾ったことを祝して命名されました。
馬だけでなく、最近では全国新酒鑑評会や広島国税局鑑評会で優秀な成績をおさめるなど酒の品質も折り紙つきです。島根県産佐香錦を使って昔ながらの山廃仕込みをしたので、通常のものより乳酸の含有(がんゆう)が多くまろやかな鼻に優しい香りは、飲みたい気持ちをくすぐってくれるでしょう。
味わい深い冷酒を探している人にぴったりの一本です。
旭日酒造『純米酒 十旭日 五百万石』
出典:楽天市場
酒蔵 | 旭日酒造 |
---|---|
原料米 | 五百万石 |
タイプ | 熟成 |
アルコール度数 | 15度以上16度未満 |
日本酒度 | +3.0 |
酸度 | 1.5 |
容量 | 720ml |
じっくりと米の旨味を味わう山吹色の日本酒
米にこだわり、それぞれの米の特性を生かした酒づくりをする旭日酒造の、純米酒。島根県産の酒米「五百万石」を自社所有の精米機で精米して使用しています。ふくよかな熟成タイプのお酒。穏やかな香りのあとには、米由来のしっかりとした旨味を感じます。
グラスに注ぐと「ちょっと黄色いな」と思いますが、これが日本酒本来の色です。炭ろ過によって色と旨味を取ることのないお酒は、美しい山吹色をしています。このしっかりとしたお酒は、必ずしも冷蔵庫に入れなくてもいいのが強みです。お酒は紫外線がもっとも苦手なので、冷暗所であれば抜栓したあとでも常温で保管しておくことができます。常温やぬる燗でじんわりと楽しんでほしい一本です。
李白酒造『李白 純米吟醸 生酛仕込 こだわり』
出典:Amazon
酒蔵 | 李白酒造 |
---|---|
原料米 | 山田錦 |
タイプ | 熟成 |
アルコール度数 | 15度 |
日本酒度 | +3 |
酸度 | 1.4 |
容量 | 720ml、1800ml |
おすすめ商品の比較一覧表
通販サイトの最新人気ランキングを参考にする 島根の日本酒の売れ筋をチェック
楽天市場、Yahoo!ショッピングでの島根の日本酒の売れ筋ランキングも参考にしてみてください。
※上記リンク先のランキングは、各通販サイトにより集計期間や集計方法が若干異なることがあります。
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唎酒師/日本酒ライター/コラムニスト/蔵人/フリーランス女将
長い歴史が培(つちか)った、奥深い島根酒の魅力
日本酒発祥の地ともいわれる島根県。神々が集まって酒宴を開いたという記載もあります。そんな島根県にはここで紹介した以外にもぜひ飲んでもらいたいお酒があります。
日本酒ファンのかた、お燗好きのかた、もっと個性的な日本酒をほっしているというかたはぜひ「天穏(てんおん)」「開春(かいしゅん)」「玉櫻(たまざくら)」「扶桑鶴(ふそうづる)」「隠岐誉(おきほまれ)」なども試してみてください。どれも個性的で、日本酒らしい日本酒です。ネクストステップとして押さえておきたいお酒の数々でしょう。
※「選び方」で紹介している情報は、必ずしも個々の商品の安全性・有効性を示しているわけではありません。商品を選ぶときの参考情報としてご利用ください。
※商品スペックについて、メーカーや発売元のホームページなどで商品情報を確認できない場合は、Amazonや楽天市場などの販売店の情報を参考にしています。
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日本酒アドバイザーや飲食店勤務を経て、現在は「とっておきの1本をみつける感動を多くの人に」という想いのもと日本酒の魅力を発信するさまざまな活動をおこなっている。 記事執筆、セミナーや講演、酒蔵での酒造り、各地の酒場での女将業など、あらゆる場所、あらゆる手段で日本酒の美味しさと日本文化の豊かさ、日本の各地方の魅力を伝えている。