カスタマーレビュー

2020年8月26日に日本でレビュー済み
本書の記述内容は、端的に言えば【 雑さ 】が目立ちます。
例えば前書きで「男脳・女脳は科学的に疑問視されている」「息子たちが外部から学び、刷り込まれ男になっていくのではないか」という旨が書かれていましたが、どちらも科学的な説明や証明がなく、むしろ後者は『少年ブレンダ』の悲劇によって科学的根拠がほぼ否定されている現象です。
そして本書は、終始信頼に足る調査・研究を行ったわけでもなく、科学的な根拠の提示も乏しい。前書きで触れられた「人は女に生まれるのではない、女になるのだ(これは構造主義に敗れた実存主義的観点)」を信じ込むことでつづられた、育児論として専門性に乏しく、丁寧な解説も理論もないのないエッセイ的なものに読めました。
これに共感・影響されて育てられたら、男の子はたまったものではないのでは?

ところで、性教育反対、親学、江戸しぐさなどで教育への介入をもくろむ日本会議は、「女子供を黙らせたがる」という見方がありますが、皮肉にもこの本はそのミラーリング…すなわち「男・子共を黙らせたい」がための物にも見えました。

~~~以下長文です~~~

Twitterを中心に、著者の太田啓子氏を腐す声は残念ながら多いです。
ご本人に言わせれば「物言う女性が気に食わない」となるところでしょうが、ひとえに
【雑に萌え批判を展開し、ファンたちを不用意に傷つけすぎたこと】が原因です。
これは現に、『不快な表現をやめさせたい!?(紙屋高雪 著:かもがわ出版)』にて、「あいトリ問題」と同等に紹介された「宇崎ちゃん献血ポスター事件」における太田氏の言動が【雑】であると指摘されています。
「有害な男らしさが無意識に人を傷つける」という記述もありましたが、太田氏の【雑】な見識で多くの人が傷つき、今日も彼女への恨み節は止まりません。

本書の中では、Twitter上でのフェミニストに関心が高い「インセル(概ね非モテ男性は横暴だというレッテル)」についての記述があり、その中で「秋葉原事件の加藤智大もインセル」という見解が述べられていました。しかし彼を凶行へ駆り立てたのは【マンガ・アニメ・ゲーム、そして男女交際を異常に制限した母親の影響】が指摘されていますが、本書ではスポイルされていました。
そして太田氏は、ドラえもんの「(のび太に乱入されがち?な)しずかちゃん入浴シーン」を「性暴力的描写」の例に挙げ、ルパンの窃盗やコナンの殺人描写より悪質としていますが、「ルパンやコナンの窃盗・殺人は社会的認識としてそれが悪とされているが、ドラえもんはそうではない」という、裏付けも乏しいこじつけのような理由でした。
このような【雑】な説明で「メディアによってセクハラ男は育つ」とでも言いたいのでしょうが、そもそもこれこそが科学的に否定されている『メディア強力効果論』です。

(個人的な意見ですが、いくらドラえもんの当該シーンを見ても覗きや性犯罪を起こしたいとは思えません)
いわずもがな、ドラえもんのウリはしずかちゃんの入浴シーンではありません。着眼点がくだらないです。

さらに、マンガに関して、清田隆之氏との対談の中で、「少年漫画に弱い男の子が生きるためのロールモデルとなる主人公を」という件があったと記憶していますが、おそらく『はじめの一歩』の幕ノ内一歩や『弱虫ペダル』の小野田坂道など、既に多く世に出ています。少年マンガに対して無理解が目立ちます。これも【雑】な見識です。
あと清田対談の中では太田氏に対する脅迫の類がよく送られてくるという吐露があり、脅迫自体は決して看過できるものでなないにせよ、彼女が【恐怖】や【不条理】と感じる人がいることの証拠でもあると思います。そこに彼女は向き合うべきとも思いました。

あとの諸々の批判は、例えば御田寺圭(白饅頭)氏の著作・記事を見れば可能です。例えば男の子が弱さを見せられないのは女性含め(しばし女性から強烈に)社会から排除されるためと説明されています(婚活サイトを見れば明らか)。
『「許せない」がやめられない SNSで蔓延する「#怒りの快楽」依存症(坂爪真吾 著:徳間書店)』も合わせて読みたいところです。

最後に、『ゴールデンカムイ』江渡貝くんのモデル、エド・ゲインは幼少期に母親から執拗に男性性を否定され墓荒らしや殺人といった凶行に及び、前述の加藤も自分の興味、男性性を否定された人物という見方もできます。
あくまで私見ですが、男性性をむやみに問題視する『ジェンダー教育』の押しつけは、男の子を凶行に駆り立てるリスクが感じられます。
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