ウシオ電機は、新型コロナウイルスの不活化に有効とみて開発中の222nm紫外線技術について、人体への安全性と殺菌・ウイルス不活化効果の両立を立証したと発表した。神戸大学との共同研究で、人間の皮膚に222nm紫外線を直接照射し、安全性を確認した。従来、マウスを対象とした研究では皮膚や目に照射しても影響がないことを確認していた。
ウシオ電機の照射装置を使って露光量が500mJ/cm2の222nm紫外線を人間の正常皮膚(背中部)に直接照射。被験者20人全員とも、急性障害である紅斑は発生せず、皮膚の常在菌は殺菌されていた。研究成果は、2020年8月12日付で米PLOS ONE誌に掲載された1)。
ウシオ電機は米Columbia University(コロンビア大学)の特許を活用し、人体に有害な波長域(230nm以上)を大幅に除去できる222nm紫外線光源モジュールを開発。これによって、人体への安全性と殺菌・不活化効果の両立を実現した。今回の研究結果によって、「病院や学校、商業施設や交通機関など有人環境下での222nm紫外線を用いた紫外線殺菌・不活化がさらに現実的になった」(ウシオ電機)という。
同社は222nm紫外線が新型コロナウイルスにも有効とみており、照射モジュールの製品化を急ピッチで進めている。当初は21年の発売を計画していたが、新型コロナ感染拡大を受けて多くの引き合いがあることから、発売を20年9月に前倒しした。
従来、殺菌・不活化用途には同じUV-C分類される254nm紫外線が主に使われていた。しかし、254nm紫外線を人体に直接照射すると、10mJ/cm2程度の露光量で紅斑が現れることから、人体への直接照射は難しいとされていた。また、222nm紫外線であっても前述したようなフィルターがない場合、230n~320nm領域でスペクトルが存在しており、人体に直接照射すると50mJ/cm2で紅斑が出現、63mJ/cm2以上で細胞のDNAにダメージが入ることが報告されていた。
1)Fukui T. et al., "Exploratory clinical trial on the safety and bactericidal effect of 222-nm ultraviolet C irradiation in healthy humans," PLOS ONE, https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0235948