消費の落ち込みで大きな打撃を受けている日本酒業界。このほど島根県内6つの酒造会社が集結し、特別なお酒が生み出された。コロナを乗り越え日本酒のアピールと需要喚起を狙う。
扶桑鶴などの銘柄で知られる明治36年創業の酒蔵「桑原酒場」。この日ここに集結したのは、島根県内6つの酒蔵の杜氏など酒造りに携わる人たち。開春や誉池月、扶桑鶴など6銘柄それぞれのお酒を持ち寄った。そして惜しげもなくタンクに入れていく。6つの蔵元のそれぞれのお酒をブレンドし、新たな商品として売り出すためだ。全国でも珍しく島根県では初の試み。企画したのは益田市で酒店を営む福原清輝さん。(金吉屋商店・福原さん)「日本酒を思い出してほしいというか、忘れちゃってるんじゃないかっていうくらい売り上げがおちているので。」新型コロナの影響で飲食店が休業したことを受け日本酒の消費が落ち込み、酒蔵は深刻な打撃を受けている。
こちら桑原酒場の売り上げも去年に比べて4月は5割減、5月は7割減と、大きなダメージを受けた。6月から徐々に持ち直してはきたというものの・・・。
(桑原酒場・寺井道典杜氏)「酒蔵、酒造業界もかなりの打撃を受けている。」(若林酒造・山口竜馬杜氏)「お米の生産を頼んでいる分、どう今年の冬を調整しようかと・・・」今年の仕込みに影響するほどの深刻さ。そんな中・・・(福原さん)「自分の力で何かできないかということで、皆さんにお願いしたら気持ちよく受けてくれたので、起爆剤になればなと思ってます。」
福原さんは毎年11月に益田で開催される日本酒のイベント「神楽酒」の実行委員長でもある。さまざまな蔵元の地酒を味わってもらいPRにつなげる、そんな取り組みに力を入れている。日本酒への熱い思いから、隣の山口県のブレンド酒にヒントを得て企画を立ち上げた。
今回作り出すのは「純米吟醸鍾馗」。鍾馗とは石見神楽の演目で、疫病を司る鬼を退治するいわばヒーロー。新型コロナ撃退への願いが込められている。それぞれの蔵自慢の酒をブレンドさせることによって、どのような味わいになるのか?参加した酒蔵は(池月酒造・末田誠一杜氏)「初めての試み。やってみないとわからない。僕らも楽しみ。」(桑原酒場・寺井道典杜氏)「酒蔵の力を合わせて心の癒しにできたらと思ってます。」(若林酒造・山口竜馬杜氏)「不安な状況の時に同業者とこうして集える機会を設けてもらって嬉しいです。今年の冬の酒作れるか不安があったんですけど、いろんな人と関わり合いもって意欲がわいてきました。」
(福原さん)「六つの酒が集まって複雑になる酒だと思う。いろんな味わいで楽しめると思う。鍾馗は絶対良い酒になると思う。コロナ終息と共に日本酒をのむ人が増えたらいいなと思います。」
コロナ撃退の思いもブレンドされた「鍾馗」。来月上旬に県内の酒店で発売されまる。