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 市販の自動運転車が、全国の公道を当たり前のように走る日が来るのも近いかもしれない。

 特定の条件のもと自動運転を認める改正道路交通法などが4月に施行され、5段階に分かれる自動運転のうち「レベル3」が法的に解禁された。

 渋滞中などで高速道路の同一車線を乗用車が最高時速60キロで走り続ける場合、システムに運転を任せて運転者は携帯電話を使ったり、読書をしたりすることができるようになった。ただし、道路状況が変わるなどして、システム側から交代するよう求められたら、直ちに運転に戻る必要がある。

 自動運転技術を巡っては、世界規模で開発競争が繰り広げられている。世界を引っ張る形で自動運転が解禁されたことは、国内メーカーの技術開発を後押しすることにつながるだろう。すでにホンダは、レベル3の自動運転車を近く発売する方針を示している。

 人口の減少が続く国内で地方の交通手段を確保するにも、物流システムを維持するためにも、自動運転が有用な技術であることは間違いない。

 7月には国土交通省が、最寄り駅から自宅までといった限定的で近距離の移動を自動運転車に担わせるためのガイドラインをまとめた。今年度中に地域を限って実用化する目標に向け、メーカーなどに参入を促す。2025年度ごろまでには、無人自動運転サービスを全国各地に広げるのが政府の目標だ。

 新しい技術の普及に向け、今後の見取り図を示すことは必要なことだ。しかし技術や制度の進展ほどには、自動運転の利用に対する国民の理解が広がっているとは言えない。目標の実現を優先して性急に導入すれば、混乱を招くおそれもある。

 例えば、事故が起きたときの責任の所在だ。レベル3の自動運転は人が運転する前提の考え方が踏襲され、運転者に安全運転義務が課される。しかしシステムから運転の引き継ぎを求められたとき、瞬時に交代できるのか。代わろうとしている間に事故が起きたら、誰の責任なのか。

 システムの欠陥で事故が起きた可能性がある場合、加害者側が負った損害賠償をメーカーに負担するよう、保険会社が請求することが想定される。しかし、手続きがスムーズに進むかどうかはまだ分からない。

 政府や自動車メーカーは、バラ色の未来を描くだけでなく、自動運転の利点と限界、リスクなどの情報をできる限り提示すべきだ。その上で、導入を進めていくにはどんな備えが社会に求められるのか、皆で考えなければならない。

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