新型コロナ対策を検討する政府の分科会や専門家の集まりが、この夏の感染拡大は「ピークを過ぎたものと見られる」との見解を相次いで公表した。
たしかに感染者の数はこのところ落ち着きを見せている。だが医療逼迫(ひっぱく)に直結する重症者は依然増える傾向にあり、まだまだ気を抜くことはできない。
状況の分析と対策には正確な実態把握が不可欠だが、「重症者」の定義が、厚生労働省と東京都など一部の自治体とで違っていたことが最近になってわかり、人々を驚かせた。
それぞれの現場を踏まえた自治体独自の取り組みは尊重すべきだ。だが用語の定義や基準がバラバラでは、議論が成り立たない。こんな食い違いが見過ごされてきたことは、行政への不信を深める。
自宅で療養する軽症・無症状の感染者がかなりの数に上ることも気がかりだ。自治体が用意したホテルなどでの宿泊療養が原則なのに、19日時点での自宅療養者は全国で3千人を超え、宿泊療養者の倍以上に当たる。
検査を以前よりも幅広く実施しているため、症状のない感染者が多数見つかり、宿泊療養を嫌がる人も増えているという。厚労省は今月上旬、先の原則を維持しつつ、一定の条件を満たした場合、調整にあたる保健所の判断で自宅療養を認める方針を示した。
本人の希望に柔軟に対応するのは良いが、なし崩し的に広がっていくのは望ましいことではない。かたや、宿泊先の調整に時間がかかり、自宅で待機しているケースもあると見られる。
どんな事情で自宅にいるのか。療養に専念できているか。容体が急変した際、即応できる態勢が取れているか。家庭内感染の恐れはないか――。実態を調べて必要な措置を講じなければ、自宅療養者の増加が新たな被害を招きかねない。
幸いこのままピークアウトできたとしても、インフルエンザとの同時流行が予想される冬への備えは怠れない。7月以降の感染者の急増に宿泊施設の確保が後手に回り、危うい状況に陥った自治体もある。教訓を踏まえ、どんな日程で作業を進めるか、検討を急いでほしい。
宿泊療養が原則といっても、様々な事情で難しい人は現にいる。そうした人たちへの手当ても並行して進める必要がある。
たとえば、感染者が外出しなくても済むように、一部の自治体は食事の配送や業者の紹介を進めている。スマホのアプリ機能を利用して健康観察を充実させようという試みもある。こうしたサービスを全国に広げて、だれもが安心して療養できる環境を築いていきたい。
トップニュース
速報・新着ニュース
あわせて読みたい
PR注目情報