イラン、また核合意を破る ウラン濃縮の上限を「超過」
イランは7日、2015年の核合意の上限を超えて、ウラン濃縮度を引き上げると発表した。
核合意は、イランの核開発を制限する目的で、同国と欧米、中国、ロシアの間で結ばれた。しかし、アメリカは昨年5月、一方的に離脱し、イランへの経済制裁を再開。同国の経済は打撃を受けている。
離脱からちょうど1年後の今年5月、イランは残る中国、フランス、ドイツ、ロシア、イギリスの各国に、アメリカへの制裁解除の働きかけを要求。60日後をリミットとしていた。
60日後にも再び
その60日目に当たるこの日、イラン外務省のアッバス・アラグチ次官は記者会見で、数時間以内にウラン濃縮度を核合意で定められた3.67%を超すレベルまで引き上げると発表した。
また、今後も同国の要求が満たされなければ、再び60日後に、核合意のさらなる履行停止に踏み切る考えを明らかにした。
イラン政府の関係者はこれまで、ウラン濃縮度は5%近くまで上げられるとの見通しを述べている。同国ブシェールにある原子力発電所は、5%程度の「低濃縮」の燃料しか必要としないとされる。
一方、核兵器には濃縮度90%以上のウランが使われる。
イランはすでに、核合意の規定を上回る量の濃縮済みウランを貯蔵している。
「引き返せる」
イランは、核兵器開発の意図を強く否定している。
モハンマド・ジャヴァド・ザリフ外相は、イランの段階的措置は「引き返せる」と強調。ヨーロッパ各国の対応が条件だと述べている。
国際原子量機関(IAEA)の報道官は、「発表された進展について確認がとれ次第」、査察官らから本部に報告があると述べた。
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各国の反応は
アメリカのマイク・ポンペオ国務長官はツイッターで、「イランの核開発の拡大は、さらなる孤立と制裁につながるだろう」と述べた。
一方、ヨーロッパ主要国は、以前から次の手を相談してきたとしている。
ドイツは「極めて憂慮している」と述べ、これ以上、核合意を危険にさらす行動を取らないよう求めた。
イギリス外務省の報道官は、イランは核合意を破ったものの、イギリスは「完全に(核合意を)遵守している」と説明。イランに対し、今回の措置を停止するよう求めた。
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は前日、イランのハッサン・ロウハニ大統領と電話で意見を交換。核合意が廃棄された場合に起こり得ることについて「強い懸念」を伝えていた。
フランス政府は声明で、両首脳は「すべての関係国が対話を再開するための条件を、7月15日までに探る」ことで合意していたと述べた。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、イランの発表を、同国にとって「非常に、非常に危険な一歩」と表現。フランス、ドイツ、イギリスの各国に、イランへの制裁を繰り返し求めた。
BBCのジョナサン・マーカス防衛問題担当編集委員は、ヨーロッパの国々はイランとアメリカの板ばさみになっていて、打つ手がないと説明。核合意は消滅へ近づいているとみている。