先日、何の前触れもなく娘の機嫌が悪くなり、自分の部屋の鍵をしめてしまったので「こっちの部屋で寝るからね。何かあったら声をかけて」と。しばらくすると娘が部屋から出てきて、ベランダの柵に捕まりました。またか。
驚いて「こっちへおいで、話しよう。どうしたの、何があった?」と言っても無視。よじ登るような仕草を見せるので力ずくで引っ張ったけどすごい力。仕方がないので夫を呼び、2人で部屋の中へ連行。死にたい死にたいと騒ぐので、夫がついに警察ホットラインとやらに相談。すぐに警察へ電話をするように言われ(当たり前だ)、呼んでしまったのでした。
警察がワラワラと7人ほど現れ、狭い我が家にズラリと立つ異様な光景。娘は自室に閉じこもり、部屋の鍵をかけて籠城。色々事情を聞かれた後、電話をしながら上司の指示を仰ぐ警察の方。「ドアを壊して突入して確保するように言われたのですが」。大人数で来たのはそのためだった。ソファを動かし、娘の部屋の前に全員で立ちはだかる。
いやいやいや、そういうんじゃないんです、やめて!!
警察は本気で仕事している。自閉症の事情などわかってもらえるはずもない。
そして鍵がこじ開けられた。娘が「お母さん!」と叫ぶ。
「私の事、面倒くさいって思ってるんでしょ。いなきゃよかったのにって。私なんか生まれなきゃよかった。死にたい。どうして警察なんか呼んだの!どうしてこんなに人がいっぱいいるの。鍵をこじ開けるなんてひどいいいい」。泣きすぎて呼吸がおかしくなり、せっかく飲ませた薬も吐く娘。
「死んだらあかんのよ。みんなあんたのこと絶対死なせちゃだめだから必死なの。だから鍵こじ開けるの。お父さんが警察呼んだのもただそれだけ。死んでほしくないの。お父さん恨んじゃだめ」。
私と娘がそんなドラマのような会話を30分ほど繰り広げている間、静まり返っているので、もしや帰ったの?と期待して部屋を出ると、7人の警察の方が微動だにせず、休めの姿勢でズラリと並んでいたので飛び上がるほど驚いてしまった。
「それであのー、とにかくご両親が付き添っても結構なんで、娘さんに警察に来て頂かなければいけないんですよ」
「えーと、娘、泣きすぎて吐いてますんで、警察でなく病院はだめでしょうか」
「どこの病院でしょうか」
「今から探します・・・」
以前も夜中に電話して、どこも引き受けてくれない事はよく分かっていたが、警察という味方がいるので再度トライ。よし、精神科がある都立の総合病院はどうだ。「警察に保護されてからの手順を踏まないと診れません」。警察官に電話を代わって説明してもらう。玉砕。くっそー。手順の問題かよ?警察で保護してからの手続きって、軽く犯罪者扱いじゃん。
思わず警察の方の前で夫に「もーぅ、なんで警察なんか呼んだの!」と文句を言ってしまいました。
私も倒れそうでした。お願い、帰って。見逃して。お願い。お願い・・・。
「では、もう大丈夫という事でしたら、私達は引き上げます。絶対娘さんから目を離さないで下さい」。
離しません、離しませんからー!!
ゾロゾロ帰っていく警察の方。ホッ。みんなでいそいそとソファの位置を元に戻し、いつも通り仲良く1つのベッドでくすくす笑い話などしながら爆睡したのでした‥。