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日刊わしら編集長・山根尚子様へ――「シュン@ひろしまタイムライン」のツイートについて
東京都内の編集プロダクションに勤めるライターのチョウと申します。東京生まれ・東京育ちの在日韓国人です。
広島県には2016年の夏の終わりに尾道~広島を旅行したきりで深い縁がなく恐縮なのですが、初めて訪れた平和記念資料館で目にしたものは深く記憶に刻まれています。レトロな趣を残す尾道の起伏に富んだ街並みも、たいへん素晴らしいものでした。
すでに毎日新聞はじめ各メディアで報道されている通り、日刊わしら編集長の山根尚子様がご参加されているNHK広島放送局の企画「ひろしまタイムライン」において、8月20日および6月16日の「シュン@ひろしまタイムライン」のツイートが「差別をあおる内容では」とネット上を中心に議論を呼んでいます。
(毎日新聞)
(8月20日の当該ツイート)
具体的に引用するのも憚られるのですが、当該ツイートには「うちの父(80代)今だに『朝鮮人』と聞くと眉間に皺をよせる。過去になんかあったのかねぇ~?」「いまでも、そういう朝鮮の人がいます」「そこで増長させたのが今につながるのか…」「鮮人と、かかわったらダメですね。今も昔も」「今も昔も民度の低さは変わらないのね(笑)」など、差別を助長・正当化するリプライが無数に寄せられています。
こうした状況にTwitter上で「差別扇動ではないか」と批判の声があがったことを受けて、NHKは「8月20日のシュンのツイートについて」という釈明文を「ひろしまタイムラインブログ」に掲載しました。
同文中では、「手記とご本人がインタビューで使用していた実際の表現にならって掲載しました」と投稿の経緯が説明されています。
また私がNHK広島放送局の広報の方に電話でお話を伺ったところ、上記の説明に加えて「差別を意図したものではなかったが、こうした結果になってしまい、多くのご批判を重く受け止めている」「今後の対応についてはあらためて検討中」といったご回答をいただきました。
報道されている内容につきましては、山根様をはじめ「日刊わしら」編集部の皆様もご存知かと思います。
先に引用した差別的なリプライ(通報を受けてすでに削除されたものの中には、より直接的にヘイトクライムを教唆する内容もありました)に目を通せばご理解いただけるかと思うのですが、シュンのツイートが巻き起こした事態は「意図」ではなく、現実にもたらされた「結果」や「被害」によって検証されるべき種類のものであることは明らかです。
また多くの人が指摘しているように、ともすれば差別に加担しかねないセンシティブな表現について、不特定多数の読者とコンテクストを共有する手続きを怠ったことに起因する問題であり、「実際の表現にならって」使用されたと思しき「朝鮮人」という語句の是非だけが問われているのではないことは、あらためて説明するまでもないかと存じます。
ここでいうコンテクストの共有とは、ヘイトやレイシズムに対して明確にノーを突きつけることはもちろん、時代背景や社会状況についての注釈、公式サイトで公開されている「新井俊一郎さんの日記原文」に「朝鮮人」に関する記述が存在しないことの説明、新井さんが「朝鮮人」について言及したという「手記」や「インタビュー」の公開、専門家による監修や検証……などがあげられるでしょうか。
このうち、とりわけ重要かつシンプルな「ヘイトやレイシズムに対して明確にノーを突きつける」が、NHKのオフィシャルな見解においていまだ発信されていないことに、ひとりの在日韓国人として不安と憤りを感じています。
平和への願いが込められているはずの「ひろしまタイムライン」という企画で、なぜ「差別はいけない」と当たり前の良識的なアティテュードを示すことがここまで困難なのだろうか、と。
「ひろしまタイムライン」において、山根様が運用に関わっているTwitterアカウントは「一郎@ひろしまタイムライン」であり、直接的に「シュン@ひろしまタイムライン」のツイート内容に関わる立場にはないことは存じ上げております。
しかしながら、「ひろしまタイムライン」の関係者のひとりとして、そして日刊わしらの編集長として、「シュン@ひろしまタイムライン」のツイートや現在の状況についてどのようなご見解をお持ちであるのかを伺いたく、この文章を書かせていただきました。
広島を愛する方々が楽しく交流するためのSNS上で、このようなシリアスな問題を提起することは心苦しいかぎりなのですが、ぜひ山根様の率直な思いをお聞かせいただきたく存じます。
もちろん、この投稿をたまたま目にした方のご意見・ご感想もお待ちしております。
Twitter上には現在進行系でNHKや企画への批判の声があがっている一方で、「日本語が読めない方々が湧いてるんですよ…あっ(察し)笑」「騒いでる奴らのお里が知れるわ」「今のご時世に半島民擁護することの方が恥ずかしいやろ 生き物として」「差別ではなく、く・べ・つ」「悪いのは言葉狩りをしてくる差別の当たり屋」といった言葉も大量に書き込まれています。
端的に申し上げて、「ひろしまタイムライン」は戦争の悲惨な現実を知ることをコンセプトにしながら、「差別を是とする人や歴史修正主義者に応援されるコンテンツ」になってしまっています。
これは山根様をはじめ「ひろしまタイムライン」に関係する多くの方々にとって望まざる状況であり、広島という土地の歴史を立脚点に反戦平和を願う皆様にとっても同様に許しがたい事態ではないでしょうか。
ジャーナリズムのレベルで検証すべきことは山ほどありますが、それ以前の前提として、この企画に携わる方が主体的に「差別はいけない」という倫理規範を示す(何度でも、明確に)ことは、大きな意義のあることだと信じております。
長々と失礼いたしました。
重ねてのお願いになりますが、Twitter、日刊わしら、その他のSNSやオフィシャルのリリースなど形式を問わず、ぜひ山根様に今回の件についてコメントを発表していただけますと幸いです。
また、まがりなりにも文筆を生業にしている在日韓国人のいちライターとして、今後のNHKの対応や報道状況などを注視しつつ、私自身も「ひろしまタイムライン」について検証できれば、と考えております。
こういったかたちではなく、あらためてメディアを通じて取材のお願いのご連絡を差し上げることもあるかもしれませんので、もし機会がありましたらぜひお話をお聞かせくださいませ。
まとまりのない文章になってしまいましたが、この投稿が山根様の目に触れることを願っております。
何卒よろしくお願い申し上げます。
#ひろしまタイムライン #日刊わしら編集長 #山根尚子 #NHK広島放送局