さぁ良い子は引き返しなさい(大した事書いてない)
悪い子だけ読むことを許可する(大した事書いてない)
ーーーーーー
モモンガがカルネ村を発って数日が経過した。彼に助けられた村娘エンリ・エモットは、仕事の間を縫っては家の畑から一番森が見える位置で祈るように立ち尽くす事が増えていった。
だが、やはりと言うべきか、トブの大森林は広大である為、その異変の調査ともなれば数日程度では済まない。早くて数ヶ月は掛かるだろう。
分かってはいてもエンリは待ち続けた。
誰よりも早く彼を出迎えたかった。
(モモンガ様……)
今日もエンリは仕事の合間を見つけては彼の無事を祈りながら…彼の帰りを待っていた。しかし、もう仕事に戻らねばならない。
そろそろその場から移動しようとした。
その時ー
「え……?」
エンリは目を見開いて驚いた。
森の中から見覚えのある全身鎧を纏った人物が現れた。漆黒の全身鎧…あの姿を見間違うなどあり得ない。
「モモンガ…様…?」
「おや?君はエンリさんじゃないか?申し訳ない、少し時間が掛かったが任務は…おわッ!?」
気が付けば彼の胸に飛び込んでいた。
硬い鎧越しでも構わない。彼という存在が返って来てくれた事をこの身で感じたかった。
「おかえり…なさいませ…モモンガ様…!」
顔を埋めて涙声で聞こえて来た彼女の声。そして、抱き締めてくる彼女に対し自分の両手は行き場を失っている。こういう時どうすれば良いのかが分からない
「ただいま。」
ーーーーーー
この日のカルネ村は再び驚嘆と歓喜に満ち溢れた。
あの漆黒の鎧を纏う流浪の騎士モモンガが戻って来たのだ。彼曰く、最近発生していた森の異変。その原因を突き止め、そして解決したと言う。
本当ならばこんなに嬉しい事は無い。
再びカルネ村を含めた近隣町村に平和が訪れる事になるだろう。
「村長。実はその原因の正体は、森の中に潜んでいた怪物でした。今その亡骸を近くまで持って来ているのですが…ここまで運んでも宜しいでしょうか?」
「何と!?は、はい!勿論です!おーい!誰か手を貸しー」
「いえ、私1人で大丈夫ですので。」
「そ、そうですか?」
モモンガは森の中へと戻って行った。
村長はその背中を見送り、ふと後ろを振り返れば村中が彼に尊敬と憧れの眼差しを向けている。若い娘達に至っては明らかに惚れているのが見て取れた。若い女性は英雄を好むと聞いたが本当らしい。
村長自身も彼の仁義と強さ、そして器の大きさに強い憧れを抱いていた。もう少し若ければ彼を目指して色々頑張っていたかも知れない。
(やれやれ…年甲斐もなくはしゃいでしまー)
「な、何だアレは!?」
村人の誰かがそう叫んだ。
森の中から巨大な怪物が現れたのだ。村人達から悲鳴が聞こえて来るが、それも直ぐに収まった。
その怪物は既に事切れていた。何より背負い運んで来たのはモモンガだ。明らかに人の膂力では持ち上がる事など出来ない、蜥蜴の怪物を軽々と運ぶその姿に人々は呆然とする。
見た事もない巨大な怪物を地面へ置くとモモンガは涼しい口調で告げた。
「これが大森林に潜んでいた怪物…『ギガント・バジリスク・ロード』です。コイツが暴れ回っていた為、森に住んでいたモンスター達は住処を追われ、逃げるように次々と森から逃げていたのです。」
「な、なるほど!森の異変はまさにそれが原因というわけですか!」
歓声と感嘆の声が響き渡る。これほどまでの怪物をたった1人で相手取り、倒してしまうモモンガに村人達は夢中になっていた。御伽話でしかなかった英雄が今、目の前に居るかのように。大人と子供もその目は蘭々と輝いている。
「しかし見れば見るほど恐ろしい……見たことはないのですが…まるでドラゴンのようですな。」
村人達がこぞって亡骸と化したGBLを眺めた。中には恐る恐る近づいて、その傷だらけの鱗を突いたり、撫でたりする者も現れた。村人達は息を飲む。死して尚恐ろしさを持ち続ける蜥蜴の怪物が、森の中にいたなど誰が想像出来ようか。
もしコレが村に襲い掛かっていたら…
もしモモンガ様がコレを退治していなかったら…
想像するとゾッとしてしまう。
だがそうなる日は訪れる事は無い。何故なら無名の大英雄モモンガ様が全て解決して下さったからだ。
「モモンガ様。モモンガ様はこの後どうなさるおつもりで?」
村長の質問にモモンガは少し考えた後に答えた。
「そうですね…。取り敢えず、アレを運べる荷車を作ろうかと思います。それから鑑定できる町か都市まで行って換金しようかと。」
「そ、それでしたら我々がー」
「いえ、それには及びません。皆さんには仕事があるのに、その貴重な時間を奪おうなどとは考えておりません。材料も組み立ても私が用意しますので。」
「で、ですが…我々はまだ貴方様に何もしておりません。情報供与と言われましても我々が知る情報程度では…とても釣り合わないかと。」
申し訳なさ気に俯く村長の言葉にモモンガは首を横に振る。
「そんなことはありませんよ。この辺りの些細な情報すら持たない私にとっては、どれも貴重な情報ばかりでした。これからもそうして頂ければと…思っています。それから、まだ森が元通りになるにはもう少し時間が掛かるかと。ですから、荷車を作るのと森の異変が治るまでは……もし、ご迷惑で無ければこの村に居ようかと考えていたのですが…どうでしょうか?」
態度には表さなかったが恐る恐る尋ねるモモンガに対し、村長を始めとする村人達の反応はかなり明るい。拒否される事が頭を過っていたモモンガだったが、かなり盛大な歓迎ムードだ。
「それは…!我々にとっては非常に有難い事ではありますが、本当によろしいのでしょうか?見ての通りここは辺境の田舎村で大したおもてなしも…。」
何からなにまで本当にありがとうございますと深々と頭を下げる彼らに、モモンガは頭を下げないで下さいと村長の両肩を優しく抑える。
「そんな事気にしないでください。そうしたいと言う私の我儘なんですから。おもてなしも、お気持ちだけで十分ですよ。ありがとうございます。」
モモンガは優しい声で村長を含めた村人全員に話し掛けた。その言葉に村人達から次々と感謝の言葉が聞こえてくる。森の異変が解決したと言ってもモモンガの言う通り直ぐに元通りになるとは限らない。実際、いつ襲ってくるかも分からない森のモンスター達に怯えていた村人は、仕事も上手く進めることが出来ない日々が続いていた。
ドラゴンに似た怪物を退治出来る心優しい漆黒の騎士モモンガが村に居てくれるのではあれば、非常に頼もしくもあり心強くもある。
こうしてモモンガはGBLを運べる荷車が出来上がるまでの間、カルネ村の護衛も兼任する事となった。
「さて、泊まる場所は…。」
荷車作りの予定地は、未開拓のカルネ村の外れにある少し開けた場所を貸してもらえた。寝泊りする場所もそこでテントなりを張れば良いだろうと思っていたのだが、ここでモモンガも思いもよらぬ人物からの声が掛かった。
「あ、あの…!また、ウチに…と、泊まりに来ては…如何でしょうか?」
徐々に遠慮がちに小さくなる声が聞こえた方向へ顔を向ける。
「エンリさん?」
肩を震わせ、顔を赤くしながら自信なく手を挙げていた人物…エンリ・エモットが立っていた。確かに彼女とエモット家には面識があり、彼女に至っては危ないところを助けたという件もある。しかし、恐らく余所者に食べさせるだけの余裕もあまりも無い状況で何度もお世話になるのは申し訳ない。何より、第三者から見ると彼女の弱みに漬け込んでると思われそうだ。
(彼女の申し出は非常に有難いのだが、そう何度も厄介になるわけにはいかない。何より…あの夜の件もあるから…ちょっと気まずい。)
モモンガは相手を傷付けないように断る言葉を考えていると、周囲からは賛同の意見が聞こえて来た。
「うん、そうだな!それがいい!」
「またウチにいらして下さい、モモンガ様!」
「モモンガ様!!また一緒にご飯食べよ!!」
その声はエンリの家族からだった。皆、満面の笑みでウチに来てくださいと言っているのだ。モモンガは社畜人生で培った経験で、相手が表情から多少の心の内や感情を読み解く事が、何となくだが出来る。聞こえ悪く言えば『顔色を伺ってきた』から身に付いたスキルだ。
だからこそ分かる。
そこに他意は無く純粋な善意であることが…。
ふと周りを見れば村人達も優しく此方を見ている。遠慮なさらないで下さいと表情で言っているのが伝わる。
ここで断るほどモモンガは非常識では無い。
「では…またお言葉に甘えさせて頂きます。」
その後、カルネ村はいつにも増して賑わい、人々の笑顔で溢れた。モモンガは村の子供達の手を引かれ村の案内を受けたり、仕事の合間を見つけては若者達がモモンガの話を聞きに来たりと大忙しだ。肝心の荷車作りは中々進むことはなかったが、モモンガにとって非常に充実した1日を送ることが出来た。
ーーーーーー
カルネ村で荷車作りを始めてからから3日が経過した。
モモンガの服装はいつもの漆黒の全身鎧ではなく、村人達と大差ない質素な服装だ。質素と言っても人間種限定で『職人系職業lv1相当を会得』という一風変わった効果を持つ中級アイテムだ。だが、これは
「ふぅ!良い感じになって来たな。これならあと3、4日位で出来上がりそうだ。」
モモンガは森の薬草取りの護衛をしたり、時折怪我をした人に
これらの事により益々村人達からの尊敬と感謝の眼差しを向けられる事になったのだが、小恥ずかしいモモンガは荷車作りに集中する事にしている。
(本当なら自分で担いで《
1番手っ取り早い方法なのだが、流石にそれは出来ない。
あんな化け物の亡骸を担いだ怪しい騎士を都市の警備兵がすんなり通すとは思えない。寧ろかなり警戒されること間違いない。せめて荷車に乗せて運んで行くだけでも多少の印象はマシになるだろう。
(しかし…まさかこの世界にそんな魅力的な職業があるなんてなぁ!)
この3日間の間、モモンガは村長やエモット家などから様々に情報を聞いた。その中の1つが『職業』である。初めのうちは文化水準並みのありきたりな職業ばかりだったが、その中の1つにモモンガが魅力的に感じたものがあった。
「『冒険者』か〜、フフフ…楽しみだ。」
聞くところによると国境の垣根なく誰でも登録する事が可能で、国や都市にある冒険者組合に登録した冒険者達が依頼を請け負い、それを達成していく事で難易度に応じた報酬を受け取る事が出来ると言う。
(オマケに冒険者登録すればそれが個人証明になるから、俺にとっては願ったり叶ったりだ。)
その一番近い都市エ・ランテルにも冒険者組合が存在するらしく、話を聞いたモモンガは前向きに冒険者登録する事を考えた。まだ見ぬダンジョン、秘境探索など…想像するだけでワクワクする。「早く冒険者になりたい」と常に思っている。
(となると、俺はエ・ランテル所属の冒険者になるのか…。村長やエンリさんから聞いた話だと、この辺りではかなり発展した都市らしいし…うん、大丈夫だろう!そうなると…お世話になったこの村の人達にお土産も渡したいな。)
するとモモンガの脳裏にある人物が思い浮かぶ。
(エンリは何をあげたら喜ぶかな?)
思い浮かぶのは彼女の笑顔と…あの時の言葉。
彼女を思い出す度にモモンガの胸は妙にドキドキしている。
(何だろうこの感じ…)
などと考えていると、また村の子供達がやって来た。子供達は毎日やって来るがモモンガは全然気にしない。寧ろ、良い気分展開になる。昨日は一緒に遊んで欲しいと言ってきたり、剣の稽古をして欲しいとせがまれたりしたが、今日は何だろうか?
「「モモンガ様ぁ!!」」
子供達の元気な声が自分の名を呼んでいる。モモンガが手を振って応えると皆、肩で息をした状態でやって来た。
モモンガはしゃがんで彼らと同じ目線になってから優しく語り掛ける。
「どうしたんだい?おや、今日はネムも一緒か。」
「ごめんない、モモンガ様。実は畑に大きな岩があって困っているの。」
「それで農具が壊れたり、畑を耕すのが遅れたりして大変なんだ!」
「モモンガ様!!」
子供特有で矢継ぎ早に言葉が来るが要点だけを聞き取ったモモンガは子供達に手を引かれ、その現場へとやって来た。目的地へ着くとそこには数人の村人達が畑の上で困ったように立ち尽くしている。此方の存在に気付いたのか、慌てて向こうから駆け寄って来た。
「も、モモンガ様!?」
「ご苦労様です。子供たちから聞きましたよ。何かお困りだとか?」
「全くお前たちはッ!!モモンガ様は忙しいと言うのにー」
「そう怒らないであげて下さい。私は全然構いませんので。」
子供たちが怯えないようモモンガは間に入り、怒鳴る親をモモンガは冷静に抑えながら落ち着くよう声を掛ける。流石にモモンガに言われたこともあっては親もそれ以上怒鳴ることは出来ない。それに実際困ってる事は事実なのだから、手を貸して貰いたいと言う気持ちもあったのだろう。
「そ、そうですか…?申し訳ありません…実はー」
その証拠にちゃっかり今困ってる事を話している。だが、良い気分転換にも村人との交流にもなる為、モモンガは全く気にはならない。寧ろもっと頼ってくれても良いとすら考えているが、それは流石に過剰過ぎる気がする。元々、モモンガがいなくてもやっていけたのに、自分の過剰な甘やかしてによって今まで通りの生活が出来なくなる可能性もある。
その辺の見極めは大事だなとモモンガは注意する事にした。
「…なるほど、あの岩ですか。」
「は、はい…こうも畑のど真ん中にあっちゃ…。」
「どれどれ。」
「あ、ちょっと!?」
モモンガは徐に一部が地表から出ている岩に近づくと、しゃがみ込むや否やその岩を掴んだ。幾らモモンガ様でもアレを持ち上げるのは無理じゃないかとその場にいる誰もが思っていた。しかしー
「よっと」
ボゴォォ…!
モモンガは岩を引っこ抜くように軽々と持ち上げたのだ。しかも、村人達が想定していたより遥かにデカい岩だった。明らかに人間の膂力では持ち上げるなど不可能な大岩をモモンガは両手で軽々と持ち上げー
「あ、モグラだ。可愛い。」
何と持ち上げた拍子に出て来たモグラを手に取った。今のモモンガは片手で持ち上げてる状態で見たところ全然余裕がある。今も岩を持ち上げるよりも片手でモサモサと動いているモグラに夢中だ。
そんな光景をその場にいた村人たちは呆然と眺めていた。
「はい、土へおかえりー」
モモンガは手に取ったモグラを優しく地面へ置くと、思い出したように岩を両手で持ち直し、辺りを見渡しながらやや北西方向へ顔を向ける。
「あっちには何も無いですよね?」
「へ?あ、は、はい。」
「よし、それじゃあ!」
するとモモンガは渾身の力を籠めて大岩をやや北西方向へ向けて豪快に投げ飛ばした。
「どっせぇぇぇい!!!」
投げ飛ばされた大岩はあっという間に見えなくなった。
「これで大丈夫でしょうか?」
「は、はい!はい!!はい!!!問題ありません!!!!」
大興奮する子供達とは裏腹に大人達の顔面は真っ青だった。モモンガは体調でも悪いのだろうかと心配しながらも、そのまま引き返し、荷車作りの作業に戻った。
あの大岩が後に問題を抱える事になるとはこの時、知る由も無かった。
ーーーーーーー
この日の作業を終えたモモンガはエモット家に戻っていた。この世界へ来て様々な体験をしたが、エモット家から受けた家族団欒の喜びと幸せに勝るものは無いと断定出来る。
モモンガが泊まりに来てからというもの酒に酔った父親に絡まれるがその際「私は君を本当の息子の様に思っている」と言われた時は…気を抜いたら涙を溢していたかもしれなかった。
唯一気になっている事といえば、食事中ずっとコチラをチラチラ見ているエンリだった。何かなと思い視線を向ければ慌てて顔を逸らし、視線を元に戻すとまた此方へ向けてくる。あの一件以降、互い妙にぎこちない態度が目立つ気がする。
(せめて何か言ってくれれば良いんだけどなぁ〜)
よく分からない根拠だが無神経に聞くのはちょっと不味い気がするし、三十路童貞の俺にはそんな女性に掛ける言葉が思い浮かばない。
モモンガはベッドの上で寝転がりながら何となく自身の手を見つめた。
「あれ?やっぱりコレ……」
モモンガの目に入ったある指輪…『淫夢魔の呪印』。そういえばあの時、この指輪はテキストにも鑑定魔法にも記載がなかった現象が発生していた。妖しい紫色の光が指輪全体に彫られている木目の紋様の2/3程まで光っていたのを思い出した。
(明らかに…広がってるよな?)
紫の光はあと少しで指輪を一周する。何が要因かは不明だが、何かしらによってこの現象が発生しているのは間違いない。一度指輪を外し、再度装備した時も光の広がりに変化は無かった。指輪を付けた状態で何もせずジッとしてても変化は無かった。
(やっぱり自分でも気付かぬ内に、この光の現象を発生させる条件を満たしてしまっていると考えるのが妥当か。しかし、何なんだ一体?コレ、一周したらどうなるんだ?)
ヤバイなんか怖くなって来た。けど外すわけにもいかない。この世界で生きていく上でこの指輪は必須だ。
モモンガが1人で悶々と悩んでると、誰かがドアをノックする音が聞こえた。時刻は既に夜更、この家は勿論、他の家も明日の仕事に備えて既に休んでいる筈だ。
(誰だろう?……ん?エンリだって?)
見張り番の
「は、はい?」
モモンガは素直に起きている事を伝えた。扉の向こう側から「し、失礼します」というエンリの声が聞こえて来た。
ドアが開くとそこにはやはりエンリが居た。
服装は少し身軽な感じだが至って普通だった。
「エンリさんでしたか。どうかなさいましたか?」
「す、すみません…こんな夜更に…お、お休みのところ。えっと…そのぉ…」
「??」
エンリはモジモジしながら立ち尽くしている。何か伝えたいようだが一体何なのだろうか。ここは相手が口を開くまで待つのが…ベストかな?
「あのぁ…!こ、こんな夜更けに…オカシイとは思いますが……ご、ご、ご迷惑でなければ…い、一緒に…さ、散歩して頂けませんでしょうか…!」
勇気を振り絞ったのであろう。
真っ赤な顔で目を瞑りながら、周りを起こさない程度の声で発した言葉にモモンガは頭に「?」が浮かび上がる。
シンプルに「この時間に?」という疑問だ。
「わ、私…不安で…よ、よく眠れなくて…そのぉ…夜風に当たろうかと思って…けど、誰もいない外は…少し…こ、怖くて…モモンガ様と……また、お、お話し…したくて…!」
涙篭った声で必死に伝えてくる彼女にモモンガは「このまま待つのは良くない」と咄嗟に判断した。
「ええ、良いですよ。私なんかで良ければ。」
落ち着かせる意味も込めて優しく語り掛けるモモンガ。エンリの表情が明るくなるのが見て取れた。どうやら間違いでは無かったと心の中で安堵する。
モモンガはエンリと共に、誰にも気付かれぬよう家の外へ出た。
ーーーーーーーー
昼間は皆忙しく畑仕事に精を出す村も夜になれば夜風と草木のせせらぎ音で包まれた心地よい世界に変わる。
モモンガとエンリはそんな村の中を一緒に散歩していた。
「エンリさん…寒くないですか?」
「い、いえ…大丈…あ、あのやっぱり…少し寒い…です。」
モモンガの直ぐ左斜め下辺りを歩いているエンリから右腕が遠慮しがちに伸びてきた。モモンガは躊躇う事なくその手を優しく握る。これでよかったのかなと思いチラリと彼女の様子を伺うととても幸せそうな微笑を浮かべていた。
(しかし…まさか夜のデートに誘われるなんてなぁ。やっぱり…森でのトラウマがまだあるんだろうなぁ。その不安感が俺への好意に変換されただけなんだ。そう考えると…少し可哀想だよな。)
異性の幼馴染みとかいるのかなと思ったモモンガは何気なく問い掛けてみた。
「え?幼馴染み……ンフィーが…います。」
「ンフィー…さん?」
随分と言い難い名前だなぁと思ったいるとどうやら呼び名であった本名はンフィーレア・バレアレという名前らしい。
「その人は今どこに?」
「ンフィーはエ・ランテルに住んでいて、『バレアレ薬品店』って言うお店を祖母のリィジーさんと一緒に働いているんです。」
「バレアレ薬品店…ですか?」
「ハイ。この辺りで一番質の良いポーションを使ってる薬品店なんです!もし、モモンガ様もエ・ランテルへ訪れた際は是非寄ってみて下さい。」
「そうなんですか。これは貴重な情報をありがとうございます。」
世辞ではなく本当に重要な情報だ。少なくともこの世界で高品質でポーションを作っている店を知ることが出来るのだ。現地産のポーションがどこまでの品質なのかは不明だが、もし自分が知る最高位のポーションかそれ以上のモノだとするならば非常に興味深い。人化中なら問題無いが、本来の姿になればかなりの脅威だ。
「そんな有名な店で働いているンフィーさんは、さぞかし凄い方なのでは?」
「そうなんです!ンフィーはリィジーさんに次ぐ凄腕の薬師で、天才錬金術師なんです。あと第2位階魔法も使えるんですよ!」
「え?」
「どうかなさいましたか?」
「あ、いや。なんでもないです。」
モモンガは思わず面食らってしまった。
(第2位階で凄いって…ユグドラシルでそんな発言は煽り案件だぞ?いや…そもそもこの世界の魔術レベルが総じて低いのか?)
あの時、リュラリュースが第九位階の《転移門》で驚愕した理由が分かった。
そうなると最高の魔法詠唱者であるバハルス帝国宮廷魔術師フールーダに対する警戒心も改めるべきか?いや、それは愚かな考えだ。もしかしたらユグドラシル基準で見ても本当に凄いのかも分からない。仮に大した事なかったとしても最低でも第九…いや、8位階は扱えるレベルと見るべきだろう。
(流石にこれより下とかだったら笑えるな。)
などと思ってる間にエンリはンフィーがどれだけ凄い人なのかずっと話し続けていた。「彼には才能があって、私には無かった」と言うあたりどこかコンプレックスでも抱えてるのかもしれない。
「それからンフィーは『あらゆるマジックアイテムを装備出来る』タレントを持っているんです。」
ここでモモンガも聞き捨てならない言葉と聞きなれない言葉が聞こえた。
「タレント…?」
モモンガは先ず聞きなれない方を選んだ。
『
(『あらゆるマジックアイテムを使用可能』だって!?ユグドラシル基準で見ても破格の能力じゃないか!!)
ユグドラシル産のマジックアイテムや武器装備には使用や装備に何かしらの条件がある事が多い。レベル指定や職業指定、種族指定、装備組み合わせ指定など様々だ。
それらを全て条件を無視して使用できるのであれば非常に優れた能力と同時に恐ろしい能力である。
恐らくその能力は『ワールド』系職業のみが使用可能なアイテムやギルドマスターのみが扱えるギルド武器も例外では無い可能性が高い。
「ンフィーレア・バレアレ…どんなヤツだ?」
思わず口から溢れた言葉にエンリは反応した。
「あ、ンフィーはとても優しくて頭も良くて…とにかく良い人なんです。だから心配ありませんよ。今度会ってみて下さい。」
「え?あ、あぁ…!はい。そうします。」
どうやら変に誤解されずに済んだようだ。エンリが言うのだから特別警戒する必要はないのだろうが、一応最低限の警戒はする。
(しかし……)
モモンガは後ろ流し目にエンリを見つめる。
(エンリさんって本当に美人だよなぁ。本当に村娘?って感じで……そもそも他の村人達だって大体顔面偏差値が高いんだよなぁ。)
そう、エンリは美人だ。リアルに彼女が居たら間違いなく色んな男性に声をかけられること間違い無しだろう。しかし、彼女にはンフィーレアと言う幼馴染みがいる。
「そのぉ…ンフィーさんとは恋仲なのですか?」
モモンガは何故か確認したかった。本当に何故かは分からないが、聞かずにはいられなかった。
エンリは少しだけ考えてから苦笑いで答えた。
「い、いえいえ!彼とは…そんな間柄じゃありません。飽くまで幼馴染み…友達としてです。」
なるほど、『Love』じゃなくて『Like』と言う事か。彼女はああ言っているがンフィーレア本人はどうなのだろうかと考えていると…
(うーん…何でだろう?どうして俺はホッとしてるんだ?)
何故か胸の奥から込み上げてくる安堵感。モモンガは体験した事のない感情に少し困惑する。
(よくよく考えてみると…彼女を思い出したり考えたりすると…妙にドキドキするんだよなぁ。あれ?コレって?)
「あ、あの…モモンガ様。」
「ッ!ハイ、何ですか?」
「もう少し寄っても…宜しいでしょうか?」
まだ少し肌寒いのだろうか?モモンガは特に深く考えずに「良いですよ」と優しく答えた。するとー
「じ、じゃあ失礼します…!」
「えぇ、どう……え?」
意を決した彼女はモモンガの左腕に組んで来た。それも結構密着している。突然の出来事にモモンガの思考が一瞬だけ停止した。
(えぇぇぇおぉぉぉぉぉぉぉ!?!?)
動揺し過ぎて心の叫び声がそのまま口に出そうになった時だった。モモンガは彼女の顔が真っ赤に染まり、目を力強く瞑りながら力の加減など気にする余裕もなく腕を組み身を寄せている姿が目に入った。
不思議と心の動揺は精神抑制が起きていないにも関わらず、スーッと落ち着きを取り戻したのだ。
モモンガは必死な彼女を見てふと思った。
(可愛い…)
勇気を振り絞ったのだろう。
彼女の姿を見ればすぐに解った。そんな健気で純粋な彼女にモモンガは己自身も気が付かない内に…段々と引き込まれていた。
「寒く…ないですか?」
「は、ハイ…温かいです…とっても…」
愛おしげな上目遣いで見つめてくる彼女の瞳にモモンガは心臓が跳ね上がった。気が付けば自身の顔も熱くなっているのに気付き、咄嗟に彼女から恥ずかしげに視線を逸らした。
(ヤバい…これ…)
変な顔になってなかったか?気付かれてなかった?かとドキドキするモモンだったが、この時エンリは気付いてしまった。顔を逸らしたモモンガの耳が真っ赤になっている事に。
それを見たエンリは微笑を浮かべ更に強くモモンガの腕に身を寄せた。この時、エンリの胸の感触がモモンガの腕にハッキリと伝わる。
(はぅ…ッ!?)
足は進んでいるが頭の中は散歩どころではない。エンリは幸せそうに身を寄せて、モモンガは必死に平静を装い続けた。だが、どうしても彼女へ視線が行ってしまう。
(お、落ち着けェェ鈴木悟!!俺には『淫夢魔の呪印』があるではないか!!)
モモンガはエンリが組んでいる左腕…左手小指に付けられた指輪を見た。相変わらず妖しい紫の光が生じており、夜更という事もあってその妖しさは一層増しているがエンリはこの現象に対して何も言わなかった。
どうやらこの現象を視認できるのは装備者のみの様だ。
(だが、この指輪がある限り、情欲を
モモンガは心の中でタブラに勝利宣言した。この指輪が無かったらと思うと色んな意味でゾッとする。エンリも無事では済まなかっただろう。
故にモモンガには心の余裕があった。
(本当に『淫夢魔の呪印』様さ……ん?)
指輪を見ているとその僅かな変化に気付いた。よく目を凝らし、且つ暗い環境だからこそ気付けた変化だ。
光が僅かに紋様を進んだのが見えたのだ。
(え?何で…コレは一体何が原因なんだ!?)
困惑するモモンガだが、それも少し心配した様子で伺うエンリの顔を見た途端に忘れてしまった。
「あ、あの…モモンガ様。」
「ん?」
「実は村から少しだけ離れた所に……見晴らしの良い場所があるんですけど…い、一緒に…行ってみません…か?」
「あ、あぁ…良いですよ。」
モモンガは「あれ?何で悩んでたっけ?」と何かを忘れた事に違和感を覚えながら、彼女の言う見晴らしの良い場所へと行くことにした。例の指輪がある左手は密着するエンリによって隠れて見えなくなっていた。
ーーーーーーー
森沿いに近い道を通り、いくらか丘を登った先に出た場所は一角の崖だった。とは言っても然程高くはない。だが、そこから見える景色は中々のものだった。
「おぉ…これは。」
「どうでしょうか?…父も若い頃…よく母を一緒に此処へ連れて行ってたそうなんです。」
そこは村を一望出来る場所で夜の月明かりがより一層、質素だが美しい景色を色立たせている。
「この場所を他に知っているのは?」
「実は…ウチだけなんです。」
「そうなんですか?探せば結構見つかると思うのですが?」
「ここは危険な森の近くを通らなければいけませんから子供達も来ません。それに、他の家の人達は……そのぉ…エ・ランテルとかに行ってるので…」
「ん?」
今も密着しながら腕を組んでいるエンリが顔から湯気が出そうなほど真っ赤になって俯いてしまった。その言葉に今はよく分からなかったが、とにかく彼女が秘密の場所へ連れて来てくれた事は間違いないようだ。
これは素直に嬉しい。
素晴らしい景色だ。
「…モモンガ様」
「はい、どうしましたか?」
「……あの夜…起きて…いましたか?」
「あの夜?……ッ!?」
モモンガの心臓が跳ね上がる。
あれはエンリが夜中、自分のベッドに忍び込んで来た時の事だった。何かあったわけでは無いが、あのドキドキは今でも鮮明に覚えている。
「す、すみません……でもあの時…モモンガ様の背中から……し、心臓が凄く早かったのが…伝わったので…。」
穴があったら入りたい気持ちだ。
どうやら彼女は自分が起きていた事に気付いていたらしい。
「は、ハイ……起きてました。」
「ーーます」
「え?」
「ありがとう…ございます。」
ふと彼女の方を向けば涙をポロポロと流していた。驚くモモンガだが、エンリは涙汲む声で話を続けた。
「あの時…!助けていただいた時から…私…モモンガ様の事が……!好きになってて……!けど…!…けど、これは本当に…恋してるのか…ただ助けられたから……!その時だけなんじゃって…でも好きなのも本当で…ずっと…!分からなくて…悩んで……苦しくて……!だからあの時…モモンガ様のベッドに……!モモンガ様に身を委ねれば……ハッキリするんじゃないかって…!でも…やっぱり怖くて……!だけど…モモンガ様は…ずっと…ずっと私に…背中を預けてくれて……私本当に!…本当に嬉しくて…!安心出来て…!」
ぐすぐすと嗚咽しながら泣く彼女を…気が付けばモモンガは抱き締めていた。力強く、けれど壊さない様に優しく。エンリも彼の胸に顔を埋めて泣いていた。モモンガは何も言う事はせず、ただ優しく彼女の背中を叩きながら落ち着くのを待った。
5分くらい経っただろうか。
彼女の嗚咽が止むと、未だに顔を埋めてはいるがさっきよりは落ち着いた様子で話を続けた。
「モモンガ様のお陰で…私の本当の気持ちを…見つけることが出来ました。」
漸くエンリが顔を上げる。涙で濡れた目を真っ直ぐ向けられたモモンガは目を逸らす事が出来なかった。出来るはずが無かった。
「だから…最後に教えて下さい。私の気持ちを伝える前に……モモンガ様のお気持ちをお聞かせ下さい。私は…ここでどんな答えが待っていたとしても…受け止めますから。」
彼女のその目に迷いはない。
確固たる覚悟があった。
ここまで気持ちを伝えても…もしかしたら拒絶されるかもしれないというのに。
(以前の俺なら…無理だったろうな。)
自分の気持ちを押し殺し、仲間たちの意思を優先し、考慮して来たモモンガにとって…彼女が選んだその覚悟と強い心は魅力的なものだった。自分なら相手に拒絶されるのが怖くて…現実から目を逸らすか、自ら身を引くかしか無かっただろう。
だからこそ…彼女の覚悟に応えたかった。
自分の気持ちをシンプルに伝えたかった。
「俺は、貴女が…エンリが好きだ。友人とか知り合いとか…そんなんじゃない。純粋に1人の女性として…エンリの事が好きだ。この気持ちに…嘘偽りは無い。」
本当に自分の気持ちを…そのまま伝えた。
この言葉を聞いたエンリはまたポロポロと涙を零し、微笑みながら口を開いた。
「私も……モモンガさんが好きです。」
彼女の腕がモモンガの首の後ろに手をまわすと、少し背伸びをしながらその顔を近づけて来た。
そして、モモンガの彼女の唇が重なった。
不思議と恥ずかしいと言う気持ちは無かった。ただ彼女が愛しいと言う気持ちが留めどなく溢れ出て来た。
唇を離すと彼女は幸せそうに口を開いた。
「愛してます…モモンガさん…!」
「俺もー」
この時、モモンガは自分の左小指に嵌めていた指輪が視界の端に映った。
『淫夢魔の呪印』の木目の紋様に走っていた紫の光が……全体に周った。繋がったのだ。
(え……?)
次の瞬間、指輪が激しく光輝き始めた。
「え?何この光…!?」
どうやらエンリもこの現象を視認出来たらしいが、それよりもこの現象が何なのかがさっぱり分からない。もしエンリに危害を加えるものなら、背に腹は変えられない。指輪の破壊も辞さない。
だが、指輪はモモンガが行動を起こすよりも前にー
パキィィン…!!
(なに!?)
砕け散った…。
全く持って意味が分からない。モモンガが混乱していると、砕け散った指輪のカケラが紫に光る粒子となって空中に漂い始めた。それは突風でも吹いたかの如く勢いで半分がモモンガに、残りの半分がエンリの腹部へと吸い込まれる様に入って行った。
ドクン…!
(うっ!)
何やら内側から強い衝撃を感じると、モモンガとエンリは力無くその場へ倒れた。2人とも気を失ったかに思えたがそれは無かった。
モモンガは直ぐ体を起こした。
「一体何が……なっ!?え、エンリ!?」
倒れたモモンガに寄りかかる様にして倒れていたエンリをモモンガは慌てて抱え起こした。しかし、彼女は目は覚まさず、顔も赤く息も荒い。
(マズい…!)
モモンガは直ぐに彼女を抱え立ち上がると《転移門》を開いた。行き先はモモンガの拠点。すぐに向こう側にいる使役アンデッド達に指示を送ると、楕円形の暗黒空間へ進んだ。
「エンリ…死ぬな…!!」
ーーーーーーーー
モモンガの拠点はアンデッド達にとってこの世で最も素晴らしくも尊い聖地に等しい。そこの留守を任されている事は誉高き使命であると自負している。
その中の1体である
1時間に一度のペースで掃除している。
エルダーリッチの1体が窓から見える満月の夜空を眺めながら主人の事を想っていると、まるで祈りが通じたこの如くその主人から《
『こレはモモンガ様!どうかござイマー』
『すまない!あまり説明している暇はない!直ぐに宝物庫からありったけの体力や生命力、状態異常回復系のアイテムを家の中へ持って来てくれ!
《伝言》が切れるとエルダーリッチは直ぐに行動を開始した。主人の切迫したあの状況からしてかなりマズい事が起きていると瞬時に理解出来た。主人の身の安否が心配だが、命令が下された以上、無碍には出来ない。
エルダーリッチ達は主人の命令を遂行するべく、宝物庫の最奥へと駆けて行く。
エルダーリッチが両腕一杯に主人が所望したマジックアイテムを持って居宅へと入ると、丁度モモンガも《転移門》を通じて現れた。
「モモンガ様…!!」
エルダーリッチ達はマジックアイテムを抱えてまま、片膝を着こうとするが「そのままで構わない!」と声を上げるとそのまま奥にある寝室へと早足で向かって行く。
彼らは、モモンガの両腕に抱えられているエンリを見て少し驚いた。だがその驚きも直ぐに霧散し、マジックアイテムを持ったまま主人の後に続いた。
ーーーーーーー
モモンガは拠点の自宅まで連れて行くと、エンリを抱えてそのまま寝室のベッドへ彼女を寝かせた。エンリはまだ息が荒く、顔も赤い。
(クソッ!…どうすりゃ良いんだ!)
今彼女の身に何が起きてるのかサッパリ分からない。少なくともあまり良くない事が起きている。
そしてそれはモモンガにも起きていた。
(冗談じゃないぞ…こんな時に…!)
それは唯一の救いでもある『淫夢魔の呪印』が謎の現象と共に砕け散ってしまい、モモンガの装備から外れてしまった事で、人化の指輪による『ヤリ◯ン 』設定がそのままどストレートに起きていたのだ。
「身体中が熱い…!」
身体中がとにかく熱いのだ。だがこれはただの熱感ではない、身体全身…いや、魂そのものの高まりである。胸の動悸が秒単位に激しくなり、息も苦しい。
完全に発情・性的興奮が起きている状態だ。
それも以前などとは比べ物にならない程の高まりを感じていた。留めどなく噴き出してくる情欲は許容量を超えるか超えないかのギリギリで保って状態で、明らかに溢れ出る…つまり理性が無くなってもおかしくないのに、それが起きていない。
イヤになるが正直に言えば気が狂いそうな程もどかしい。下のムスコも徐々に肥大化、硬化しつつある。
「モモンガ様、御所望のアイテムをお持チしましタ。」
モモンガが後ろを振り返ると、そこにはモモンガが頼んでいたマジックアイテムが使いやすい様綺麗に並べられていた。エルダーリッチ達は片膝を付けて恭しく頭を下げていた。
「ありがとう……悪いけどみんな、外で待機してくれないか?」
「ハ…!」
エルダーリッチ達は主人の命令に従いその場を後にした。だが本音を言えばあの場に残りたかった。見たところ主人にも何かしらの異変が生じている様子だった。だが主人は我々に外で待機せよと仰った。不遜の身である我々だが、何か考えがあるのではと誰かが言った。
あの人間の女も何か状態異常をきたしており、それを察したモモンガ様は女を此処へ連れて来た。あの必死の様子から女はモモンガ様の今後に於いて何か重要な役割を持つ存在になるのではと其々が結論づける。
どちらにせよ彼らに出来る事はお呼びが掛かったら直ぐに馳せ参じるか、拠点防衛の2つ。エルダーリッチ達は主人の無事を心から祈った。祈る相手はそう…モモンガ自身だ。
一方、自らの知らぬ所で勝手に祈られているモモンガは手当たり次第マジックアイテムを使用した。勿論、種族的ペナルティは考慮しているがどれも効果は無かった。腐るほどある下級から数える程度しかない神器級までのアイテムを用いても変わらないとなると、ただの状態異常でもなければ呪いの類でも単純な生命力の減少でもないかも知れない。
そして、今の自分に対しても同様に効果は無かった。モモンガは己自身の暴走寸前の性欲を瀬戸際で食い止めている状態なのだが、正直本能に身をまかせたい気持ちが大きいが、とてもじゃないがそれは容認出来ない。
此処にはエンリがいる。
彼女を傷付ける事は断固として認めない。しかし、この状態はかなりキツい。モモンガが自身の腹部辺りを軽く撫でると何故か服の間からあの妖しい光が見えた。
(なんだ?)
慌ててモモンガは上着を全て脱ぐと驚愕した。
モモンガの下腹部に謎の紋様が浮かび上がっていて、それは脈動する様に妖しい紫の光を発していた。
「何だ…コレは…!?」
この独特な紋様…何かで見た事がある。
モモンガは自らの情欲を必死に抑えながら思い出そうとする。そしてー
「あ、コレ…って。」
モモンガの脳裏に爆撃のエロ王…ではなく翼王のペロロンチーノの姿がー
確か…『淫紋』だっただろうか?それによく酷似している。ペロロンチーノ曰く、淫紋が浮かび上がった対象はその魔力により凄まじく性力が上昇・強制的に発情するのだとか…
「まさか…」
モモンガはエンリの上着を上げて下腹部を露出させた。
そこにはモモンガと同じ淫紋が浮かび上がっていた。だが、心無しかモモンガのよりも輝きが少ない気がする。
「あの時の粒子が入った事による影響は…間違い無く受けてる。マズい…非常にマ……」
モモンガの動悸が更に激しく乱れる。呼吸も荒々しくなり、下腹部の淫紋も動悸に合わせて激しく脈動している。すると、何故かそれに共鳴するかの如く、エンリの下腹部にある淫紋も脈動を加速させた。
「はぁ、はぁ、はぁ…!ンッ♡」
ほんの僅かだけ聴こえてきた彼女の甘く小さな喘ぎ声が、理性の決壊寸前に拍車を掛けた。
何を悩む必要があった?
何を戸惑う必要があった?
全てを解決させる方法は最初から分かり切っていたではないか。
(もう……限界…)
気が付けばエンリの上に覆い被さっていた。顔を赤らめて荒い寝息を繰り返す彼女に自分の顔を近づける。
愛しくて堪らない…
彼の手が彼女の少し乱れた前髪をあげて、彼女の頬から首筋に掛けて優しく撫でた。ポーッとしているがまだ紙一重で残っている理性があるうちにとモモンガは彼女の唇へ再び自身の唇を重ねる。
「っ……エンリ。」
すると、彼女はゆっくりと目を開き始めた。少し動揺したモモンガだったが、今覆い被さっている状態を解くと言う考えはなかった。
「モモンガさん…?」
彼女がそう呼ぶと、彼女の下腹部の淫紋が淡く光り始めた。それと同時にモモンガの淫紋も光を増して行く。自身の五体に何か得体の知れない力が満ちて来るのが分かる。
エンリの全身が紫色のベールの光に包まれると、その光は直ぐに消えた。下腹部の淫紋は爛々と光り続けていた。
互いの鼻がくっ付き合う距離まで顔を近づけていたモモンガは彼女の目が何時もの色から…あの妖しい紫色に淡く光るのに気付いた。
だが今のモモンガにそこまで気にする余裕は無い。もう理性が皮一枚の状況なのだ。
「はぁ、はぁ、はぁ…!エンリ…イイか?」
今ある理性で唯一掛けた言葉だ。仮に「ダメ」と答えてもモモンガはそのまま行為に及ぶだろう。
彼女の返答は先に言葉ではなく行動で示してきた。
「ンっ…♡」
彼女はモモンガの首後ろに腕をまわし、両足で腰に挟めた状態で迷いなくキスをして来た。それもただのキスでなく、互いの舌を絡めた濃厚なキスだ。爛々と光る紫の瞳…その最奥が不思議と小さなハート型になっている気がした。
数秒後、互の唇を離すと彼女は恍惚とした表情で此方を一点に見つめたまま口を開いた。
「はい…!どうか…どうか私の
パリン…!
とうとうモモンガの中で必死に抗っていた理性が砕け散ってしまった。
ただひたすらに快楽に身を任せる時間はとても濃密で甘美なものだった。身も心も蕩けてしまうとはまさにこのことだろう。
これは指輪の効果なのかどうかは分からない。ただ、薄らと意識だけは残っていた。だがコントロールは全く出来なかった。そもそもしようとすら思わなかった。童貞の筈なのに…まるで何もかもを知り尽くした様に行為に及びつづけた。そこにモモンガの確固たる意思は無いに等しい。
意識と感覚はある、だが身体は全自動状態。
エンリも凄かった。
あの淫紋の効果なのか…最初は普通だったのだが、後半になって覚醒したのか普段の彼女からは想像だにつかないくらい肉食化していた。
それでも終始喰らう側だったのはモモンガなのだが、後半はもう『性行為』を通り越して『交尾』に近い。いつの間にか彼女の指に持続する指輪が嵌められていた。
モモンガの初体験は素晴らしいの一言だった。
そんな余韻に浸りながらベッドの上で抱きしめ合いながら2人は眠りに着いた。
行為は丸3日も続いた。
R-18分も作成途中ですが初心者な為、上手くいく保障はないものと受け止めて下さい。
モモンガ玉の効果についても自己的に考えてありますが作品に出すかどうかはまだ未定です
取り敢えず皆さん、ンフィー君を心の中で慰めて上げて下さい。
それから書籍と本作の様にモモンガとンフィーが良好な関係となるかは未定です。
反映出来るか否かは別として皆様の意見を取り入れる為にアンケートを実施したく思いますので、暇潰しにアンケートのご協力のほどを後ほどお願いいたします。
ンフィー君のモモンガに対する印象(反映されるかは不明)
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エンリをどうかよろしくお願いします!
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は、はは…そうなんですか
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そっか…妬けるな、ははは。
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僕の…初恋の人なのに…畜生…!