アインズ様はストイック   作:大城之助

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できる男パンドラズアクター


1 それは、まさに偶然の出来事であった。

それは、まさに偶然の出来事であった。

 

(ん~やはり、現地産の物質では換金効率の高いものは…特別見当たりませんねぇ)

 

10の階層で形成されるナザリック地下大墳墓。

9,10階層を除く階層毎には階層守護者が設置されており、彼らはその役職に見合うだけの実力を有しているといえる。

よって、NPC内の序列でいえば階層守護者は最上位だ。

そして、階層守護者の下位には領域守護者という役職が存在する。

 

序列で言えば下位である。

しかし、決して階層守護者に劣らない重要性を持っている面々である。

一部階層守護者よりも格上の戦闘能力を持っていたり、探知能力特化、転移門の管理などバラエティに富んでいるのも特徴だろう。

 

勿論、ナザリック地下大墳墓が主人、アインズ・ウール・ゴウンにとっては最も重要なのは役職ではなく、かつての仲間――至高の41人が作成したかどうかなのだが。

 

そして、至高の41人に作成され、現在最も幸福な地位にいるであろう領域守護者はナザリックの豪華すぎる廊下を歩いていた。

 

彼の名はパンドラズアクター。アインズが作成したNPCである。

彼の職務は、少し行き詰っていた。

 

(スキルによる加工を一度施してから換金…シュレッダーに放り込む…というのも良いかもしれません。有用なスキルを費用対効果から計算して…一度、ちちっ…アインズ様に許可を仰がなければ)

 

と言っても迷っているのは+aの方面であり、与えられた課題はつつがなく終了している。

 

彼に現在与えられた任務は、元々の役職である宝物殿の管理。そして、現地の物資の換金効率の調査。

 

以上だ。

 

…これは、非常に非効率的な運用であると言わざるを得ないだろう。

なぜなら、パンドラズアクターのスペックはLV100。これだけでも多くの仕事を任せるに足るのだが、彼は頭脳労働者としても非常に優秀である。

 

比較対象が忙しくナザリック内外を動き回る第七階層守護者デミウルゴス。ナザリックの内政を統括する守護者統括アルベドである時点でその優秀さを伺うことができる。

 

しかし、彼が蔑ろにされているとはナザリックのNPCの誰も考えていない。

 

(アインズ様は僭越ながら私のことを最終兵器的な立ち位置で考えられているご様子。そこまで期待されていては、もっと多くの職務を担当したいというのは私のわがままになってしまうのでしょうね…)

 

というのが、ナザリック地下大墳墓内のパンドラズアクターに対する評価である。

 

勿論、アインズ本人に聞けば「あ~そうだな。そうともいえないことも…ない…ああ!そうだぞ!そうだとも!!」と肯定の意が返ってくるので、概ねこの評価は間違っていないであろう。

 

(!!今、アインズ様の気配が!!)

 

そんな彼だからこそ感じたアインズの気配。ナザリックに属する者であれば一目見れば至高の御方の気配を感じられるのだが、パンドラズアクターは別格だった。

 

現在かなり距離が離れているのだが、パンドラズアクターは迷うことなく歩を進めることができる。さすがは直接の被創造物というべきか。

しかし、彼といえど普段であるなら流石にここまで離れている状態ではアインズの気配を察知することは難しい。

 

しかし、今日の彼はなぜか直感的にそこに自分の創造主が歩いていることを感じ取れたのだ。

 

(これは、なにかの前触れなのかもしれません!!虫の知らせ!第六感!!例えどんな試練が待っていようとも私はあなたのお役に立って見せます!!Wenn es meines Gottes Wille~!!)

 

興の乗った彼はそのままアインズのいるであろう場所に向かう。そして、偶然耳にするのだ。

 

「癒しが…癒しがほしい…」

 

 

 

「!!」

 

 

(今、我が神はなんと仰られた?癒し…癒し?このニュアンスは大致死での回復のようなHPを指しているわけではないでしょうから…)

 

パンドラズアクターはその明快な脳みそををフルに回転させる。

 

(ここで挙げられている癒しとは精神的なもの!!いやはや、あの凛とした佇まいの中にその様な憂いを隠しておられたとは…)

 

そして、正解にたどり着く。デミウルゴスであれば、とんでもない方向に正解を見出すだろうがパンドラはそこまで思考が害されていなかった。

ちなみにこの間は0,1秒にも満たない。

 

「こ~れはアインズ様~ご機嫌麗しゅうございます!!!」

アインズの欲を聞いたパンドラは、この機を逃さない。

 

まずは挨拶だ。挨拶は大事。古事記でも言ってた。

 

(――とぷにっと萌え様が言っていたとアインズ様が仰っていました!!)

 

・・・

第10階層。アインズの私室。

 

(精神的な疲れはなかなか抜けないなぁ~)

 

キングサイズでは言い表せない広大なベッドの上でゴロゴロする。

現在パンドラズアクターとの遭遇から2週間ほど経っていた。しかし、その間パンドラズアクターから一切の音沙汰はない。

 

つまり、アインズの癒し――精神を回復させるような手段は未だ見つかっていないということだろう。先日のパンドラズアクターの様子を思い出す。

 

『アインズ様の疲労を癒す手段をあらゆる方面からお探しします!!!しばし、お待ちを~』

 

うん。きついな。いや、今は奴の態度は置いておき、まだ解決策が見つかっていないことは確かだろう。

これはある意味予想していたことでもあった。…が心のどこかで期待していたのも確かだ。

 

(パンドラズアクターは宝物殿の領域守護者。わたしも失念しているアイテムや運用法があればと期待したのだがな)

 

そもそも、ここでいうアインズの精神を回復させるようなアイテムとは何を指すか。

それは3つに分けられる。

 

(情報を整理しよう)

 

(一つ。アンデットに対する負のエネルギーのようにゲームシステム的な回復を指すアイテム)

 

(二つ。入浴やアロマテラピーのように骨の体でも実践できるリラックス用品)

 

アインズは骨のみしかない指を折りながら数える。

そして、三本目の指を少し力をいれて3つめの手段を脳内で挙げる。

 

(三つ。俺自身が人間化できるアイテム、または受肉を可能にするアイテム…)

 

今のアインズが求めているアイテムはぶっちゃけ三つ目のみだ。

 

(肉の体さえあればな~寝れるし、食べれるし、精神安定もされないで楽しめる!!からな!)

 

欲を満たせば精神の疲れなどリセットされるに違いない。というか、人間の時はリセットされていた。

 

ちなみに性欲を挙げていないのは、他二つに優先度が劣るとアインズが考えているからである。決して目のギラギラしたアルベドが怖いわけではない。

逆レ、ダメ、ゼッタイ。

 

(…まあ、無理だと思うけどなぁ)

 

想像する希望に目を赤く輝かせたアインズだが、その色もすぐに霞む。

なぜなら、ユグドラシルに異業種を人間種に一時的に変化させるアイテムなど存在していないからだ。

 

(そんな目立つ能力があったら忘れるわけないからなぁ。望み薄だよなぁ)

 

そもそも、あるなら使っているという話であり、存在するのに使わないというのは余程デメリットがあるときのみだ。

デメリットととは、流星の指輪のように汎用性・希少性が高いなどが挙げられる。

 

よって、パンドラズアクターから連絡がこないことはある意味必然である。

残念じゃないかと言われたら残念だ。間違いなく。

 

しかし、自らの希望でナザリック全体のための任務が疎かになることはアインズの望むところではない。

パンドラズアクターなら大丈夫だと思うが、日ごろから上司の私事というプレッシャーをかけられながら仕事することは気持ちいいことでないことをアインズは経験している。

 

(名残惜しいが、捜査は打ち切ってもらうとするか…)

 

「伝言<メッセージ>」

 

 

 

『これはアインズ様~~!!ナイスタイミング!!でございます!!

今、ご連絡しようと考えていたところでした!!』

 

(ん?なんか元気だなコイツ)

アインズの依頼を達成できていいないのだ。落ち込んでいるのではないかと少し心配していたのだが…

 

『現在、実験が完了したところでして…結論から申し上げますと…

発見しましたよ!!

アインズ様の中に潜む疲労を殲滅することが可能にぃ~~なりました!!』

 

 

「!!?」

 

『あぁ~アインズ様どうかなさいましたか?』

 

「…あ、ああよくやったぞパンドラズアクター」

 

アインズは〈メッセージ〉を一度切る。

 

「マジで…?」

空虚な声が木霊した。

 

 




先に言っておくと人化の指輪の類は出てきません。
似たようなことはしますが…

あのアイテム登場させつつ、面白いオバロssは文才化け物だと個人的に思います。

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