<9>米兵は金ヅル「少年ポン引き」でドル紙幣をポケットに
マーケットには米兵もやってくる。当時の子供たちにとって、彼らは恵みを与えてくれる相手であり、金ヅルでもあった。カモになりそうだと思えば、「ヘイ・ユー」と声をかけた。
「少年ポン引きだよ。その気ありなら『オッケー、カマ~ン』って、“パンちゃん”のところまで案内。交渉成立なら『ギブ・ミー・サム・マネー』ってチップをもらう。もう英語なんてネーティブだからね。みんなやってたし、罪悪感を覚えることもなかった。それが食う手段だったからね。拳を握ったような形をしたチョコレートも、よくもらったな~。中にピーナツが入っていて、やたらとうめえんだよ」
チョコレートは妹へのお土産に、ドル紙幣はポケットにしまってヤクザに渡した。円と交換してくれるからだ。
「俺たちは両替屋って呼んでたけど、あこぎな商売はしていなかったな~。なにしろ1回きりで終わりじゃないからね。毎日のように交換するんだから、いくら子供でも暴利をむさぼられているって感づけば、ほかに持っていくだろ? いい人だったと思うよ。まあ俺たちはヤクザだと思って付き合ってなかったし、仲間内ではタコスケとかって呼んでたよ」