「香港国家安全維持法」による民主活動家の逮捕などで中国が世界から非難を浴びているが、以前から深刻な人権侵害が指摘されている地域の一つが新疆ウイグル自治区だ。ウイグル人が施設に収容される内部映像を英BBCが公開したところ、中国側は「虚偽」だと猛反発する。そこで日本で活動するウイグル人に話を聞いたところ、想像を絶する過酷な弾圧の実態を証言した。
◇
BBCは先月、ウイグル人男性が収容施設の内部を撮影したとする映像を放映した。窓に格子がある部屋でベッドのフレームに手錠でつながれた男性が映し出されている。男性のチャットでは、狭い部屋に50〜60人が拘束され、どこからか絶えず叫び声が聞こえてくるなどとやり取りしたと報じている。
番組には中国の劉暁明駐英大使が出演し、ウイグル人が目隠しをされ列車に乗せられる映像について「でっちあげで中国を攻撃している」と否定した。
今月8日の人民日報(日本語電子版)は、中国外交部がBBCのウイグル報道が虚偽だとして同局の北京駐在記者に厳正な申し入れをしたと報じた。外交部の責任者は「ウイグルに関する虚偽の情報を多く取り込み、実態とかけ離れている」「イデオロギー的偏見を捨て去って、客観的に中国を報道するよう促す」などと指摘したという。
中国側の言い分について、日本ウイグル協会のアフメット・レテプ副会長は「中国は証拠が出るたびに嘘だと言い張るが、取材場所を制限し、取材するメディアも選択しており、説得力があるはずがない」と語る。
自身も家族が当局に拘束されたアフメット氏によると、BBCが報じた収容施設は「環境的にマシな方だ」という。
「運よく強制収容所から出ることのできた人の証言では、突然現れた警察に布を頭にかぶせられ拘束される。身体検査を受けた後に数カ月間は、壁に固定された鎖に手をつながれ生活していたようだ」
これまでもウイグルの人権弾圧に関する報道は、妊娠中絶の実態や強制収容の様子など度々報じられている。
米トランプ政権は、ウイグル弾圧や人権侵害に関与したとして、昨年10月と今年6月に中国監視カメラ大手「杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)」など37社・団体を禁輸措置の対象とした。6月には新疆ウイグル自治区での人権侵害に関与した中国当局者に制裁を科す「ウイグル人権法」が成立、7月にも中国企業など11社を禁輸リストに追加した。
米国側は、民主活動家の周庭氏(23)や香港紙「リンゴ日報(蘋果日報)」創業者の黎智英氏(71)らが逮捕(その後保釈)されたことを受け、「中国が行動を改めるとは楽観していない」と非難している。
世界が中国の人権弾圧に厳しい視線を向ける状況について、前出のアフメット氏は「米中対立の絡みがあるのだろうが、米国は専門家を設置して情報収集を行っている。与野党争うことなく議会が団結しており、唯一希望を持てる画期的なものだ。もはや人権侵害の次元を超えている中国の悪夢が終わることを願っている」と期待を込めた。