兵庫の日本酒選びのポイントは? 唎酒師に聞いた!
兵庫は江戸時代に酒造りが非常に盛んで、なかでも「灘」の酒は評判が高く、多くのお酒が「くだり酒」として江戸に運ばれました。そんな歴史と魅力にあふれた兵庫の日本酒を楽しむために、商品選びのポイントについて唎酒師の宇津木聡子さんに詳しくお話をうかがいました。
日本酒の歴史を訪ねるように選ぶ ポイント1
唎酒師・国際唎酒師、マーケティングコンサルタント
兵庫のお酒を、その地域の日本酒の歴史をひもときながら選んでみるのも楽しいでしょう。
日本酒発祥の地とされる「播磨」(※所説あり)、江戸時代に銘醸地として名をとどろかせた「灘」、日本で最初に澄んだ酒が造られたと言われる、いわば清酒発祥の地である「伊丹」、日本を代表する杜氏集団である丹波杜氏(たんばとうじ)、但馬杜氏発祥の地「丹波」「但馬」など。知れば知るほど興味深いことが発見できます。
歴史を受け継ぎ現代につなぐそれぞれの蔵元のこだわりを、お酒の味わいから感じてみましょう。
剣菱酒造『瑞穂黒松剣菱』
兵庫の老舗(しにせ)酒蔵が造る、キリっとした口あたりと優雅な香りが特徴的な日本酒。熟成感とコクも感じられる辛口タイプです。
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唎酒師・国際唎酒師、マーケティングコンサルタント
兵庫は、日本酒生産量とともに、酒米生産量も日本一で、ほかの都道府県と比較しても実に多様な酒米が栽培されています。
酒米の王さまといわれる「山田錦」は兵庫が発祥地。なかでも粘土質の土壌や気候がその栽培に最適な「特A地区」エリアで栽培された山田錦は、極上のものとされて品質を維持するために徹底的な管理がなされています。
また、山田錦以外にも、さまざまな良質の酒米が作られており、兵庫の銘酒づくりを支えています。使われているお米を軸にお酒を選んで、違いを感じたり、好みの味わいを見つけたりしてはいかがでしょうか。
地域別に選んで飲み比べてみる ポイント3
唎酒師・国際唎酒師、マーケティングコンサルタント
地図を見るとよくわかりますが、兵庫は日本海から瀬戸内海を経て太平洋を望み、淡路島も有する変化に富んだ地形でその風土には多様性があります。
お酒も同様で、同じ兵庫にあってもその味わいはさまざま。兵庫には地域ごとに9つの酒造組合がありますので、それをヒントに、兵庫のさまざまな地域のお酒をセレクトして、飲み比べてみるのもひとつの方法です。
神戸酒心館『福寿 純米吟醸』
兵庫県神戸市東灘区にある神戸酒心館の銘酒。ノーベル賞公式祝賀行事「ノーベル・ナイトキャップ」で振る舞われたことでも有名です。
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先ほどお伝えした兵庫の日本酒の選び方のポイントをもとに、唎酒師の宇津木聡子さんにおすすめ商品を10本選んでいただきました。兵庫産の米にこだわり抜いたものやフルーティーな味わいのものなど、兵庫の日本酒を幅広くご紹介するので、ぜひ商品選びの参考にしてみてくださいね。
剣菱酒造『瑞穂黒松剣菱』
出典:Amazon
酒蔵所在地 | 兵庫県神戸市東灘区御影本町 |
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使用米 | 兵庫県産山田錦 |
精米歩合 | - |
アルコール度数 | 17度 |
日本酒度 | - |
酸度 | - |
容量 | 720ml |
兵庫最古の酒蔵のブレない味わい
500年以上の歴史をもつ、兵庫県最古の酒蔵。「剣菱の味を変えない」ことにこだわり抜き「肩書きよりも味」をポリシーとする硬派な剣菱のお酒には、根強いファンがいるほどです。
濾過(ろか)し過ぎないため淡い黄味がかったお酒は、全体的に辛口ながら、存在感ある旨味と酸味があり、ぶれない蔵元の姿勢そのままの、筋のとおった気持ちよさがあります。
兵庫県産の山田錦を使い、2年以上熟成させたお酒のみがブレンドされているこのお酒は、ふくよかな熟成感とコク、きわ立つキレのよさが楽しめ、骨太で旨口な味わいのお酒を好む方におすすめです。
2016年にグッドデザイン賞を受賞した印象的なラベルは、創業時から変わっておらず本物の伝統という個性を放っています。
神戸酒心館『福寿 純米吟醸』
出典:Amazon
酒蔵所在地 | 兵庫県神戸市東灘区御影塚町 |
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使用米 | 兵庫県産米 |
精米歩合 | 60% |
アルコール度数 | 15度 |
日本酒度 | +2 |
酸度 | 1.6 |
容量 | 720ml |
国内外で愛されるピュアな味わい
1751年の創業で、戦火や阪神淡路大震災で大きな被害を受けるも見事に復旧してきた酒蔵。手づくりにこだわり、すべてのお酒を兵庫県産のお米で造っています。
美しいブルーのボトルが目をひくこちらのお酒は、ノーベル賞公式祝賀行事「ノーベル・ナイトキャップ」で提供されたことでも有名で、国内外の品評会やコンクールでも高い評価を受けています。
桃を思わせるフルーティーな香り、やわらかにふくらむお米の旨味が感じられます。福寿の名は、七福神の「福禄寿」に由来していて「飲む人に財運がもたらされるように」との願いが込められており、お祝いのテーブルにもおすすめ。ぜひ冷やしてワイングラスなどで楽しんでみてください。
泉酒造『仙介 純米大吟醸』
出典:Amazon
酒蔵所在地 | 兵庫県神戸市東灘区御影塚町 |
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使用米 | 兵庫県産山田錦 |
精米歩合 | 48% |
アルコール度数 | 15度以上16度未満 |
日本酒度 | ±0 |
酸度 | 1.4 |
容量 | 720ml、1,800ml |
伝統を継ぐ若い世代の醸すやさしい味
1995年の阪神淡路大震災の際に蔵が焼失、酒造りができなくなり香川の酒蔵に委託醸造する形をとっていましたが、社長の孫娘、泉藍さんが社長の願いである蔵再建に尽力。2007年に灘の地で酒造りを再開し「仙介」の酒が誕生しました。灘のお酒らしいすっきりした味わいが特徴です。
こちらの純米大吟醸は、兵庫県産の山田錦で醸(かも)されており、お米の旨味と甘味が生きたやさしい味わい。香りも控えめで、飲み飽きずに楽しめます。伝統を受け継ぎ、若い世代が醸すお酒をぜひ味わってみてください。やわらかな味わいの食中酒を選びたい方におすすめです。
本田商店『龍力 大吟醸 ドラゴン Episode1』
出典:Amazon
酒蔵所在地 | 兵庫県姫路市網干区高田 |
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使用米 | 兵庫県特A地区山田錦 |
精米歩合 | 40~50% |
アルコール度数 | 16度 |
日本酒度 | +1 |
酸度 | 1.6 |
容量 | 720ml、1,800ml |
お米へのこだわりを感じながら楽しみたい
本田商店では、「米の酒は米の味」をモットーに、お米にこだわり抜いた酒づくりをしており、なかでも山田錦についてはもっとも品質がすばらしいとされる兵庫県特A地区で産出されたもののみが使われています。
ドラゴンシリーズは「冷なら旨い、常温なら最高、やっぱり燗(かん)だね」というようにテーマごとに特化した味わいを追求したお酒です。こちらは山田錦100%で醸し、添加するアルコールもその山田錦で製造したものという徹底したこだわりぶり。
フルーティーですっきりした味わいは、少し冷やして楽しみたい方におすすめ。とことんお米にこだわった龍力のお酒は、ぜひそのつくりやお米の違いを感じながら、味わってみてください。
下村酒造店『奥播磨 純米吟醸 芳醇超辛スタンダード』
出典:Amazon
酒蔵所在地 | 兵庫県姫路市安富町安志 |
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使用米 | 兵庫県産兵庫夢錦、兵庫県産山田錦(米麹) |
精米歩合 | 55% |
アルコール度数 | 15.7度 |
日本酒度 | +8.0 |
酸度 | 1.6 |
容量 | 720ml、1,800ml |
あえての少量仕込み、「手造り」のていねいな味わい
面積の9割を森林が覆う、自然の恵み豊かな「花とホタルの町」安富町で、「手造りに秀でる技はなし」を家訓に5人でお酒を醸している酒蔵。手造りの伝統の酒造りを守るため、すべてのお酒が、少量でていねいに時間と手間をかけて造られています。
「山田錦」と、蔵元も奥播磨の心臓と認める兵庫の酒米「兵庫夢錦」を使って造られたこちらのお酒は、麹由来のやわらかな香りが感じられます。しっかりしたお米の旨味とキリッとした酸のキレがあり、単純な辛口ではない、まさに「芳醇超辛」の味わい。味わいもきちんとあるドライなお酒を好む方におすすめです。
また、幅広い料理と合わせやすい食中のお酒としても合います。
山陽盃酒造『播州一献 純米 超辛口』
出典:Amazon
酒蔵所在地 | 兵庫県宍粟市山崎町山崎 |
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使用米 | 兵庫県産北錦 |
精米歩合 | 60% |
アルコール度数 | 16度 |
日本酒度 | +15 |
酸度 | ‐ |
容量 | 1,800ml |
一献かたむけながら播州の味を感じたい
奈良時代にまとめられた「播磨国風土記」(はりまのくにふどき)のなかに、日本ではじめて麹を使ったお酒を造り、それを神さまに献上した場所として記述のある宍粟市(しそうし)にある酒蔵。
「播州産の米と水を使った播州のお酒を、一献どうぞ」の意味がその名前に込められている播州一献のお酒は、昔ながらの味わいのある手造りのお酒を目指して醸されています。
原料米は兵庫県の酒米「北錦」。まろやかなお米の旨味、心地よい酸、キレのあるあと味が一体となった味わいは、合わせる料理によっていろいろなハーモニーが感じられます。幅広くお料理と合わせられるお酒を選びたいときにおすすめです。
富久錦『純米 Fu.』
出典:Amazon
酒蔵所在地 | 兵庫県加西市三田口町 |
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使用米 | 加西市産キヌヒカリ |
精米歩合 | 70% |
アルコール度数 | 8度以上9度未満 |
日本酒度 | - |
酸度 | - |
容量 | 270ml、500ml |
すっきりと軽快な味わいの低アルコール酒
日本最古の地誌のひとつ「播磨国風土記」ゆかりの地で、歴史と文化、自然が豊かに残る加西市にあり、「播州平野にある田舎蔵」と自らを称する酒蔵。この地の風土ならではのお酒を造りたいとの想いから、地元の米と水を使い純米酒のみを造っています。ラベルの原料米表記に「加西市産」を多く見るのも、その心意気の現れと感じます。
こちらは富久錦のなかでも人気の高い8%という低アルコールの原酒で、白ワインを思わせる際立つ酸でとてもすっきりした飲み口。食前酒、食中酒のどちらでも軽快に楽しめます。お酒があまり強くない方、ワインが好きな方にもおすすめ。飲み切りサイズのボトルもうれしいですね。ぜひワイングラスでお楽しみください。
田治米『竹泉 純米大吟醸 幸の鳥』
出典:Amazon
酒蔵所在地 | 兵庫県朝来市山東町矢名瀬町 |
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使用米 | 兵庫県産山田錦 |
精米歩合 | 40% |
アルコール度数 | - |
日本酒度 | - |
酸度 | - |
容量 | 720ml、1,800ml |
自然と、蔵の想いが詰まった1本
「一粒の米にも無限の力あり」という理念で、元禄時代からの但馬杜氏の伝統を受け継ぎながら、兵庫県産のお米を使った純米酒のみを醸しています。お酒にまろやかな旨味をのせるための熟成、ろ過をしすぎないことから、竹泉のお酒の多くは淡い黄金色をしています。
農薬を使わずに、コウノトリ農法で育てられた山田錦「コウノトリ育む米」を使って造られた純米大吟醸。コウノトリがのびのびと生きる田んぼの情景が浮かぶようなお米由来のおだやかな香り、自然でのびやかなお米の旨味がある味わい深いお酒です。
桐箱に入った人にも自然にもやさしいお酒でギフトにしても喜ばれるでしょう。
西山酒造場『小鼓 純米吟醸』
出典:Amazon
酒蔵所在地 | 兵庫県丹波市市島町中竹田 |
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使用米 | 兵庫北錦(麹米)、五百万石(掛米) |
精米歩合 | 麹米:50%、掛米:58% |
アルコール度数 | 16度以上17度未満 |
日本酒度 | - |
酸度 | - |
容量 | 1,800ml |
料理の名わき役、リピートしたくなるお酒
蔵は、兵庫県の東部、山々に囲まれた自然の豊かな丹波市にあります。目指すお酒は、一緒に楽しむ料理の味を引き立てるお酒、「一度飲んでみたい幻の酒」ではなく「また飲んでみたい一生の酒」。仕込みに使う水は、竹田川の伏流水を源とする蔵内の井戸水で、漫画「美味しんぼ」でもそのよさが紹介された軟水の良水です。
目からも楽しめるよう、美術作家と小鼓の世界観を創り上げてきており、印象的なラベルやボトルも小鼓の個性になっています。
この純米吟醸は、小鼓の定番酒のひとつ。穏やかな香りと、するりと飽きることなく飲めるバランスのとれた味わいです。小鼓をはじめて飲んでみるときにはこの1本をぜひどうぞ。
都美人酒造『都美人 特別純米 風乃都美人』
出典:Amazon
酒蔵所在地 | 兵庫県南あわじ市榎列西川 |
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使用米 | 兵庫県産山田錦 |
精米歩合 | 60% |
アルコール度数 | 15.5% |
日本酒度 | +3.0 |
酸度 | 1.3 |
容量 | 720ml、1,800ml |
山廃仕込みならではの厚みと奥行きある味わい
古事記・日本書紀で日本列島で最初にできた島とされる淡路島にある酒蔵。お米のもつ味わいをお酒にどう生かすか追求し、創業以来、山廃仕込み(天然の乳酸菌を活かす古来の酒造り方法)をかたくなに守り続けています。
ただ伝統にこだわるだけではなく、数より質を求めて新しい工夫や技術も積極的に取り入れています。
こちらは神戸牛の産地である黒田庄でその堆肥(たいひ)を使用した田んぼで育てられた山田錦を使い、ていねいに山廃仕込みで醸した特別純米酒。山廃をきわめているだけあって、山廃仕込みならではの複雑な幅のある味わいが堪能でき、さまざまな温度帯で楽しめます。しっかりとした味わいのお酒を好む方におすすめです。
「兵庫の日本酒」のおすすめ商品の比較一覧表
通販サイトの最新人気ランキングを参考にする 近畿の日本酒の売れ筋をチェック
Amazonでの近畿の日本酒の売れ筋ランキングも参考にしてみてください。
※上記リンク先のランキングは、各通販サイトにより集計期間や集計方法が若干異なることがあります。
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唎酒師からのアドバイス
唎酒師・国際唎酒師、マーケティングコンサルタント
生産量日本一の酒どころの情熱と誇りを感じて
さまざまなこだわりと個性をもつ銘酒蔵ばかりの兵庫ですが、全体として感じられるのは地元素材を原材料に使うことへのプライドと情熱。古くからの酒造りの歴史があり名水があり、よいお米の育つ風土があるからこその、兵庫酒の気質といえるのではないでしょうか。
気に入った兵庫のお酒を見つけたら、ぜひ、その酒蔵のほかのお酒も、歴史やお酒造りの信条にも触れながら味わってみてください。さまざまな兵庫のお酒を楽しむうちに、日本酒の歴史やお酒造り、そして酒米について、ちょっと詳しくなれるかもしれません。
※「選び方」で紹介している情報は、必ずしも個々の商品の安全性・有効性を示しているわけではありません。商品を選ぶときの参考情報としてご利用ください。
※商品スペックについて、メーカーや発売元のホームページなどで商品情報を確認できない場合は、Amazonや楽天市場などの販売店の情報を参考にしています。
※マイナビおすすめナビでは常に情報の更新に努めておりますが、記事は掲載・更新時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。修正の必要に気付かれた場合は、ぜひ、記事の下「お問い合わせはこちら」からお知らせください。(制作協力:春野 凛、掲載:マイナビおすすめナビ編集部)
※2020/02/07 コンテンツを追加・修正しました(マイナビおすすめナビ編集部 花島優史)
日本の風土、知恵、歴史が生み出した日本酒の魅力や楽しみ方を、より多くの人に広めるため、訪日外国人へのプライベート日本酒体験、外国人・日本人向け日本酒にまつわるセミナーやイベントの企画を行っている。 外国人のプライベート日本酒体験では、これまでに30か国以上から300人余りをお迎えしている。 日々の生活でも、カンパイは日本酒、スキンケアは日本酒と酒粕で、そして朝晩の甘酒を欠かさない。