松浦G1 2度目V オールスター 【名古屋】
名古屋競輪のG1「第63回オールスター」(優勝賞金4480万円)は最終日の16日、ハイライトの11Rで決勝戦があり、松浦悠士(29)=広島・98期・SS=が終1半からの番手捲りで脇本雄太の反撃スパートに合わせ切り、大会初制覇を飾った。2着の脇本をマークした古性優作が3着だった。松浦のG1優勝は昨年11月の競輪祭に続いて通算2度目。5日間の車券売上額は117億7481万円(昨年109億1278万円)で、売上目標額の90億円を大きく上回った。
■ヒーロー
灼熱(しゃくねつ)の5日間の主役は真っ赤な自転車に赤い勝負服、赤ヘルの松浦だった。圧倒的な脚力を誇る東京五輪代表の脇本を、競技ケイリンにはない「競輪」の象徴でもある“ラインの絆”と“ヨコの動き”で倒してみせた。
打鐘前カマシで先行態勢に入った原田-松浦-柏野の3車に、鐘4角から踏み上げた脇本-古性が襲い掛かった。松浦は終1角で自転車をひと振りし、脇本をけん制。「波をつくっても超えてくると思ったが、少しは消耗させようと」と勝利へ執念をみせた。
■3半からブロック2発
それでも構わず先頭に出ようとする脇本に合わせ、2角で番手から自力発動。併走する脇本に3角では半車身以上遅れたが、「脇本さんも苦しそうだった。(原田)研太朗が頑張ってくれて、その思いに応えたかった」と奮闘。3半からはヨコにも動き、脇本にブロックを2発見舞った。「脚だけでは厳しかった。当たることで相手のフォームも崩れるし、(頭を)ひっかけて前に出ようと思った」。先行力、捲りのスピードに加え、ヨコの強さ、番手戦での技術など全てにおいて一流の松浦が、持てる能力の全てを駆使。中四国の結束力もあって、脇本より先にゴール線に達した。
賞金でのGP出場権はほぼ手中にしていたが、「タイトルを取るために選手をやっている」と2つ目の勲章を喜んだ。そしてもちろん何より欲しいのはGP王の栄誉。「GPで優勝するために、精いっぱいやっていく」。GPには盟友の清水裕友も出走。ケイリンの日本のエースを「競輪力」で破った松浦が、輪界の頂点に立っても何ら不思議はない。 (野口雅洋)
◆松浦悠士(まつうら・ゆうじ)1990年11月21日生まれの29歳。広島市出身。広島工高卒。2010年7月、広島支部98期でデビュー(熊本(1)(3)(2))。通算成績は874走で239勝、優勝42回。ビッグレース制覇はG1競輪祭(19年)、オールスター(20年)、G2ウィナーズC(20年)、通算取得賞金は3億8341万1011円。ホームバンクは広島。168センチ、73キロ、太もも60センチ、O型。
【決勝戦VTR】
Sは山田で、初手の隊列は山田-内藤、脇本-古性-守沢、原田-松浦-柏野、諸橋。残り2周半で原田が上昇すると、脇本が7番手に下げる。その後も原田と脇本でけん制しあい、山田は放置される形で赤板通過。
鐘1半から原田が発進開始で打鐘。合わせたい山田は踏み遅れて中団まで下がる。原田ラインを追う形から脇本も反撃。ここで内藤に少しあおられたが、それでも加速する。松浦は終1半で脇本をけん制しながら、2段ロケットで応酬。両者のもがき合いは、脇本がバックすぎに半車身ほど前に出る。だが、それでも松浦は踏み続け、3半で横腹に一発、4角で左腕に一発と頭を出して脇本の勢いを完全に止め、そのままゴール線を駆け抜けた。
【戦い終わって】
脇本雄(2着)初手の位置で原田君とのもがき合いを覚悟した。HSで出切れるくらいのタイミングで踏んだけど、内藤さんの一発が効いた。これも競輪なので仕方ない。負けたけど勉強になりました。
古性優(3着)内藤さんに当たられたし、柏野さんの一発もしんどかった。また脇本さんと走れるように、脚力をつけたい。
諸橋愛(4着)あの展開ならタイミングで柏野君をどかせばよかったかな(瀬戸内勢を追走も前の柏野が古性に踏み負けて、松浦から離れる)。
内藤秀(5着)山田君には、合ったところで外をどかすと言っていた。そこが古性君のところだったが、止められなかった。
山田英(6着)うまく飛び付けなかったが、やれることはやった。悔しさを受け止めて、また頑張る。
守沢太(7着)脇本君の3番手だったが、自分の力不足がよく分かった。
柏野智(8着)前の2人が頑張ってくれたのに…。まだまだ脚が必要ですね。後ろに諸橋さんがいて、気持ちが悪かった。
原田研(9着)掛かりが悪かった。松浦君だったから脇本さんに合わせ切れたと思う。優勝してくれて良かったし、後輩たちにもまだ自力でやれるところをアピールできたはず。
◆競輪・深谷知広が寄付
深谷知広(30)=愛知・96期・S1=が16日、G1オールスター(名古屋)の賞金の一部の20万円を、新型コロナウイルス感染症の終息を願い、名古屋競輪の指定病院である誠心会大菅病院へ寄付した。