米大統領選の郵便投票、開票に間に合わない恐れ 郵便公社が警告

A postal worker delivers mail wearing a mask

11月3日に行われる米大統領選挙をめぐり、大量の郵便投票が開票日までに選挙管理当局に届かない恐れがあると、米郵便公社(USPS)が警告していたことがわかった。

今年の米大統領選では、新型コロナウイルスの大流行を受け、記録的な数の有権者が郵便で投票するとみられている。

ドナルド・トランプ大統領は郵便投票について、野党・民主党の対立候補ジョー・バイデン前副大統領に有利にはたらくと繰り返し主張。不正にもつながると訴えている。

一方、専門家らは郵便投票を安全で不正の恐れがない方法だとし、これまで米軍やトランプ氏自身も利用していると指摘している。

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そうしたなか、USPSが先月、各州に送付した通知で、「特定の締め切り(中略)は郵便公社の配達基準に適合していない」などと述べていたことが浮上した。

郵政トップの郵政長官は、トランプ氏の忠誠な支持者として知られるルイス・デジョイ氏が務めている。そのため、デジョイ氏が配達遅れの原因となっているとの批判も出ている。

「時間的余裕が少ない」

USPSは先月の通知で、すべての郵便投票が開票日に間に合うように届くことを保証できないと警告した。

ペンシルヴェニア州の州務長官宛ての文書では、州法の規定どおりに投票日の1週間前に要請された郵便投票は、USPSの「配達基準」に照らすと時間的余裕が少な過ぎるため、当局に期日までに届かない恐れがあると通告。

USPSのトマス・マーシャル顧問は、ペンシルヴェニア州法と郵便公社の配達能力の「ミスマッチ」が、「州法が定める締め切り日近くの投票について、州法が規定している開票日に間に合うように返送されないリスクを生んでいる」とした。

全有権者にあらかじめ送付の州も

この通知は、同州のキャシー・ブックヴァー州務長官が州最高裁に、投票日の3日後までに届いた郵便投票は有効票として扱われるよう求めた中で、13日に公開された。

ペンシルヴェニア州は激戦州の1つ。前回の大統領選では、トランプ氏が1%未満の差で勝利した。

米メディア報道によると、フロリダやミシガンなど他の激戦州にも通知が送られた。

ペンシルヴェニア州に隣接するニュージャージー州のフィル・マーフィ知事(民主党)は14日、州内の全有権者にあらかじめ郵便投票用紙を送付すると発表した。これは、全郵便投票と呼ばれるもので、すでに9州で採用されている。

郵政改革が配達遅れ生んだ?

USPSは長年、財政難の状態にあり、赤字は1600億ドル(約17兆円)に膨らんでいる。

6月に就任したばかりのデジョイ郵政長官は、残業や遅い時間の配達を減らすなどの改革を導入。ただ、これが配達の遅れにつながっているとの批判が出ている。

これに対しバラク・オバマ前大統領(民主党)は、トランプ氏が「大統領選を台無しにしようとしている」と強く批判。トランプ政権は「ウイルスより投票を抑え込もうと躍起になっている」とツイートした。

民主党最高幹部のナンシー・ペロシ下院議長とチャック・シューマー上院院内総務も14日、批判を展開。「多くの国民に郵便の遅れとサービス低下を招き、民主主義を脅かしている変革を早急に転換」するよう、デジョイ氏に求めた。

また、「上下両院の民主党は大統領に、郵便公社への攻撃をただちにやめることと、妨害戦略を用いずに2020年大統領選を進めると明確にすることを求める」と声明で述べた。