バイデン氏指名 多様な勢力の結集を

2020年8月22日 06時47分
 移民が持ち込んだ異文化は米社会を豊かにする。米国の特性は多様性である。民主党の大統領候補に指名されたバイデン前副大統領も、さまざまな人々を結集できれば多様性の強みを生かせる。
 打倒トランプ大統領のためには小異を捨てて大同につこう−。民主党大会ではそんな呼び掛けが目立った。
 バイデン氏と最後まで指名候補の座を争った急進左派のサンダース上院議員も、バイデン氏がトランプ氏に敗れることにでもなれば「その代償は計り知れないほど大きい」と指摘した。
 四年前の前回大統領選で、左右の党内対立を放置した揚げ句に苦杯をなめた反省からだ。トランプ氏に負けるはずがないという慢心が当時の民主党にはあった。
 黒人やヒスパニック(中南米系)らのマイノリティー(少数派)、それに女性、若者による連帯が民主党の持ち味である。
 ジャマイカ系の父、インド系の母を持つハリス上院議員をバイデン氏が副大統領候補に選んだのは、そうした多様性を重視したからだ。
 黒人女性では初の副大統領候補という歴史的意味を持つ人選である。同時に、排他的で人種差別意識をあおり立て、社会の分断を深めるトランプ氏への対抗軸を設定したことにもなる。
 ただ、トランプ支持者の熱狂ぶりと比べると、バイデン氏への支持には熱気が欠ける。トランプ氏には票を入れたくないからという消極的な支持者が多い。そういう人たちが棄権する可能性はある。
 前回、サンダース氏支持の若者たちをクリントン氏は取り込めずにトランプ氏に負けた。今回もサンダース氏が主張する大学無償化や国民皆保険をバイデン氏が受け入れないことに若者らは不満を持っている。党大会で応援演説をしたクリントン氏は必ず投票するよう呼び掛けた。
 経済格差を浮き彫りにしたコロナ禍と、広範な差別抗議デモに発展した黒人男性暴行死事件。大統領選にも影を落とすこの二つは、米社会の亀裂の深さをあらためて露呈させた。
 「現大統領は米国を闇で覆った。あまりにも大きい怒りと恐怖、そして分断。だが、団結すれば闇の時代を乗り越えられる。私は光の味方だ」
 党大会最終日に行った指名受諾演説で、団結を説いたバイデン氏。まずは足元の党内を結束させる必要がある。

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