42話 ストーカー・エルフ姉
ぼくがギルド本部から帰ってきて、2週間ほどが経過した。
ある日のこと。
ぼくたち【緋色の翼】は、近くの森にクエストに来ていた。
「うーん、いないねぇ【韋駄天兎】」
ぼくは茂みを見渡しながら言う。
今日のクエストは【韋駄天兎】を捕縛だ。
このモンスターはSランク。
けれど別にたいした強さはない。
最強の隠密と索敵能力、なにより目にもとまらぬ速い足を持つ。
その皮は幸運をもたらすお守りとなり、その肉は食べたものに生涯強運をもたらすらしい。
商人が血眼になって捕縛しようとしているけど、まったく捕まらないんだってさ。
『しかし若様、敵の匂いは感じます。近くに居るのかと』
そのときだった。
『若様! 敵です!』
「ティナ! 避けて!」
ぼくはティナを押し倒す。
茂みからすごい勢いで、猪が襲ってきた。
「
アスナさんがミスリルの剣を抜いて構える。
「大丈夫?」
「ええ、平気よ」
ぼくは退いて、精霊の剣を取り出す。
「せやぁ!」
アスナさんがボアの牙を綺麗に刈り取る。
武器を失い戸惑っている猪の心臓に、ピンポイントで剣を突き刺す。
「ぷぎぃ……」
ドサッ、と倒れる青猪。
影に潜むアビーがその死体を回収してくれた。
「ふぅー……」
「エレン。助けてくれてありがと」
ティナが微笑みながらぼくに言う。
「気にしないで、助け合うのが仲間でしょう?」
「そのとおりよ。偉いわエレン♡」
よしよし、とアスナさんがぼくの頭をなでてくれる。
「あ、エレン、服が破けてるじゃない」
「あ、ほんとだ。ボアの牙でひっかいたかな」
「ちょっと貸して。すぐ治せるわ」
ぼくはシャツを脱いで、ティナに渡す。
彼女は裁縫セットを持っていた。
鮮やかな手つきで、破けた部分を補修していく。
ややあって、綺麗に穴が塞がった。
「ありがとう、ティナ!」
「どうも。けど、これくらいしか役に立てなくて……ごめん」
「なにってるのさ! ティナにはいつも助けて貰ってるよ! 本当にありがとう!」
何か彼女にしてあげたいな。
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精霊使いの能力が発動します。
ティナに精霊の加護を付与します。
→スキル【精霊眼】を与えました。
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「なに……? 私の目が……急に光って……」
「てぃ、ティナ! 大丈夫?」
「え、ええ……心配ないわ。それより……これ、もしかして」
ティナが周囲を見渡す。
「やっぱり……伝説の【精霊眼】じゃない。究極の鑑定スキルに、圧倒的な動体視力などを与える……最高の目と言われてるわ」
呆然と、ティナがつぶやく。
「エレン、あなたがくれたの?」
「うん! 精霊さんに、ティナにお礼してって頼んだんだ!」
「ありがとう、素晴らしい贈り物だわ。これならっ」
ティナがミスリルの弓を構えて、明後日の方向を射貫く。
「きー!」
矢がちょうど、韋駄天兎を木に縫い付けるようにして刺さった。
とさっ、と兎が倒れる。
「「おおー! すごい!」」
ぼくとアスナさんが歓声を上げると、ティナが照れくさそうに頬をかく。
「ティナ、すごいよ!」
「ううん。本当にすごいのはアンタよ。こんな伝説級のスキルをほいほいっと与えちゃうんだもの」
「そうね、さすがエレンだわ!」
と、パーティでわいわい楽しくやれていたのは……ここまでだった。
「ほんとぉよぉ! さすがわエレンぅううううううう!」
森の茂みから、誰かが出てきた。
血走った目に、ボサボサの髪の毛。
そこにいたのは……変わり果てた姿の、ディーナだった。
「姉さん……」
「アスナさん、ティナを連れて先に帰ってて」
ぼくらはスムーズに行動する。
もう、【慣れている】。
「ちょっとぉ! 待ちなさいよぉ! 私にあいさつなしとか調子乗ってんじゃないわよティナぁ!」
「…………」
「行きましょう」
アスナさんはティナの肩を抱いて、すばやく離れていく。
「ディーナ、何のよう?」
「ああぁん……えれーん♡」
気色の悪い声を出しながら、ディーナが近づいてくる。
その前に、ランが立ち塞がる。
『若様にそれ以上近寄るな』
「うっさい駄犬! あんたには用事が無いんだよ! どっかに消えなぁ!」
……どこかお高く、しかし優雅で大人な振る舞いをしていたディーナは、もういない。
まともにご飯を食べられてないのか、肌も髪の毛もカサカサ。
ベッドで寝れてないのか、寝不足で目の下には隈ができている。
「ディーナ。ランにひどいこと言わないでよ」
「あぁ! ごめんなさいごめんなさいエレンぅうううう! 許してぇええええん!」
また気味の悪い声を上げながら、ディーナがその場に跪いて言う。
「お願いよぉ、怒らないでぇ」
「……もういいよ。それで、どうしたの?」
にちゃぁ……とディーナが気味の悪い笑みを浮かべていう。
「さすがエレンねぇ……精霊眼……伝説のスキルをポンって与えるなんて。ね、簡単に上げられるなら、私にもちょうだいよぉ……ねえねぇ~お願いよぉ、元パーティのよしみでよぉ~……」
……ここ最近、ディーナずっとこうなのだ。
特に、ぼくが特S級に認定されてから。
ぼくの行く先々に待ち構えては、物乞いじみたことをしてくる。
「あなたに力を使う義理はないよ」
「ま、待ってエレぇン……」
帰ろうとするぼくの後ろから、ディーナがついてくる。
「ついてこないでよ。ぼくはこれから仲間の元へ帰るんだ」
「ねえねえエレンぅ~……仲間に入れてよぉ~……ねえお願い、妹に頭を下げて上げるから、ねぇ~……」
「嫌だ。あなたはティナを2度も傷つけ、裏切った。ぼくはもうあなたを信用しない」
ぼくの手を、ガシッと掴む。
「ティナのどこがいいのぉ? ねえねええれーん……」
ディーナは胸元をはだけさせて、目を細める。
豊満な乳房と、エルフの美しいかんばせが近くにあっても……全然魅力的に映らなかった。
「私の体の方が万倍も魅力的でしょぉ? あんなお子ちゃまボディの妹よりもねぇ~……」
「ぼくは別に、ティナを体目当てで仲間にいれたわけじゃない」
きっぱり言っても、ディーナは引き下がらない。
「そんなこと言いつつ、あなたも男でしょぉ? ねえエレン、あなたになら抱かれて【あげても】いいわ。エルフの処女をもらえるのよぉ? 光栄でしょぉ?」
「いらないって、言ってるだろ! もういい加減にしてよ!」
ぼくは彼女に、セクシャルではなく恐怖を感じていた。
そのとき、彼女が強引に、ぼくを押し倒す。
馬乗りになって、衣服をはだける。
「な、なにするの!?」
「大丈夫、怖くないわぁエレン! あなたは何もしなくていいのぉ! とっても気持ちよくしてあげるからぁあ! 返してちょおだぁああい!」
『離れろ痴れ者がぁ!』
ランが風の魔法で、ディーナを吹き飛ばす。
「きゃぁああああああ! ぐげっ!」
顔面から、ディーナが倒れ堕ちる。
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精霊使いへの敵対行動を関知しました。
ディーナにペナルティを実行します。
→スキル【死神(S-)】を付与します。
※エレンの一定範囲内に近づいたまま、一定時間経つと死亡します。
→スキル【治癒遅延(S-)】を付与します。
※顔面の傷に対して治癒魔法が聞かなくなります。自然治癒力も低下します。
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「あぁあああ! 美貌がぁ! 私の、唯一の武器がぁああああ……!」
『若様、今のうちに帰りましょう。さぁ乗って!』
ランの背中に乗ると、疾風のように彼女が駆け出す。
「えれぇん! いかないでぇえええ! わかったもう近寄らないからぁ! 魔法の力だけ返してくれればそれでいいからぁああああああああああ……!」
ディーナが何かをつぶやいていたけど、ランが超高速で離れていったので、なにを言っていたのか聞こえないのだった。
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