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2015年9月10日 (木)

岩手の小さな蔵はなかなか面白いですね

例年のごとく、7月末いわて酒物語の会が池袋のメトロポリタンで行われました。この会は昼の部と夜の部があるのですが、昼間の部は15時から2時間、酒販店と飲食業関係者対象でした。僕は日本酒のブロガーなので、昼の部に参加するのは少し、ずうずうしいと思い、南部美人の久慈浩介さんにお願いして、岩手酒造組合から案内をいただく形で、正式に参加することができました。浩介さんありがとうございました。 

この会は2013年に夜の部に初めて参加しましたが、参加者が多いし、抽選会などでゆっくり蔵のお酒を楽しむ時間はありませんでしたが、東日本大地震で被害を受けた蔵を中心に取材をさせていただきました。その時のことはブログに書きましたので、興味のある方はご覧ください。 

http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2013/07/2013-e982.html 

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 今回は昼間の部の参加でしたので、大変空いた状態でしたので、ほとんどの蔵のお酒を一応呑みましたが、僕の目的が小さな蔵で新しい発見をしたいということなので、下記に示す比較的大きな蔵の紹介するのはやめておきます。その蔵はあさ開き、南部美人、菊の司、両磐酒造、岩手銘醸、酔仙酒造、わしの尾などです。吾妻峯や月の輪は好きな蔵ですが、以前紹介したので省略します。 

岩手県の蔵のMapを見つけました。ごらんください。中央の東北本線沿いと海寄りにわかれていますが、東日本大地震で海寄りの蔵は被害を受けています。 

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岩手県には22に蔵があります。県の大きさの割には少ない気がしますが、その代わり3000石以上の蔵が結構多いのですね。そのうち21蔵が今回参加していたようです。 

今回は岩手のお米と岩手の酵母を使っているところが多かったので、最初にお米と酵母を紹介します。 

<岩手の酒米>  

1.吟ぎんが
  従来岩手j県は吟醸酒に適したオリジナルな酒造好適米を持っていなかったので、その開発を平成2年から初めて平成10年に県の奨励品目となったお米です。出羽燦々と秋田酒49号を交配させ、美山錦より粒が大きく、心白の発現率が高く、耐冷性の高いお米を目指したものです。美山錦以上に綺麗で、さわやかなお酒になるそうです。主に花巻市の石鳥谷町周りで造られています
  

2.ぎんおとめ
  岩手県北部の研究センターで開発されたお米で、秋田酒44号とこころまちを交配させてできたお米で、美山錦よりは心白発現率は低いが、早生で育てやすく、優雅な味わいが出ることから、女性的な名前となったようです。平成11年に県の奨励品目となり、二戸市やその南の岩手町で栽培されているようです。
 

3.結の
  岩手県が10年を掛けて開発した大吟醸用の酒造好適米です。山田錦は寒さに弱く岩手県での栽培は難しいので、岩手県でも栽培できる山田錦相応のお米を求めていました。吟ぎんがやぎんおとめは高精白に耐えられないので、大吟醸用には向いていませんでした。山田錦と青森県の華想を交配してできたお米で、平成23年に試験栽培がされたもっとも最近に開発されたお米です。山田錦に匹敵するお米として、南部杜氏発祥の地、紫波郡紫波町とひとめぼれの産地である奥州市前沢区の二箇所で栽培されています。
今年の全国新酒鑑評会で南部美人が結の香のお酒で金賞を取ったことでその実力が証明されました

<岩手の酵母> 

吟醸香のある酵母としては協会18号や協会10号が有名ですが、岩手県も独自の吟醸用酵母の開発を進めてきました。元となる酵母は平成5年より領布している岩手吟醸酵母2号で、それを改良してできた新酵母が、ジョバンニの調べとゆうこの想いです。 

平成2年にこの二つの酵母を試験的に領布したところ、評判が良く平成21年から正式の領布され、新たな名前が付けられました。 

1.ジョパンニの調べ
  華やかさときれいな味と香りが特徴なので銀河鉄道の主人公のジョパンニが夜空で瞬く星のような旋律を奏でるイメージだそうで、岩手県の利き酒大会で優勝した吉澤さんが命名したそうです
 

2.ゆうこの想い
  女性的な温かさと温もりのある味と香りが特徴で、女性をイメージして、飲む人(あなた・YOU)にさまざまな思い(想い)をイメージしてもらうように命名したそうで、岩手県の利き酒大会で準優勝をした藤村さんが命名したそうです。
 

命名によってイメージができるので、どんなお酒になるのか気になりますね。

それでは僕が気に入った小さな蔵をご紹介します。 

1.喜久盛酒造 タクシードライバー、鬼剣舞(おにけんばい) 

Dsc_0061喜久盛酒造は北上市にある蔵で、明治27年の創業です。戦争中は花巻市にある白雲などの蔵と合併した時期もありましたが、3代目の藤村久喜(きゅうき)が久喜が逆立ちしても盛り上げると喜久盛(きくさかえ)酒造としたそうです。 

現在の社長は写真の方で、藤村卓也(現在43歳)です。卓也さんは高校時代にレスリングで東北大会に準優勝するほどの格闘家で東京のゲーム製作会社で働いていたそうですが、先代が急死されたので蔵に戻り、2003年から代表取締役になっています。 

若い世代に日本酒に関心を持ってもらうために2005年にタクシードライバーを製造・販売しています。日本酒の名前としては思いつかないネーミングですが、その名前のユニークさで、今では人気の商品ですが、それはお酒の酒質が良かったからだと思います。 

Dsc_0060蔵の生産高は純米酒だけで200石ほどの小さな蔵です。杜氏に自由に造ってもらったのが、手に持っていただいた純米原酒です。

お米はひとめぼれ55%精米、酵母は7号酵母です。飲んでみるととても素直なバランスで、お肉やチーズにも合いそうなお酒でした。タクシードラーバーは出品していませんでしたが、この蔵の実力がわかった思いです。 

この蔵では岩手県産の飯米を使って、自分たちしか作れない独自の酒造りをするそうです 

この蔵は東日本大地震の被害を受け、復旧もままなならない状態でしたが、たまたま昨年、花巻の蔵の白雲が廃業したので、その蔵を借りることができて、ここを使って酒造りができるようになったので、その間に元の蔵をこれから直す予定だそうで、大変ですね。頑張ってください。 

2.磐之井酒造 真心 花泉 

Dsc_0053磐乃井酒造は一関市の花泉地方にあり、岩手県では一番南にある蔵です。創業は大正6年ですから比較的新らしい蔵ですが、当時密造の多かったどぶろくを防止するために生まれたようです。 

その後戦争時代にはその地区の全酒造メーカーが合併して両磐酒造が生まれましたが、戦後酒造免許を取り、独立したようです。両磐酒造は大きな蔵として今も残っています。 

昭和の後半は蔵も順調に大きくなり、1000石近くになりましたが、現在は280石だそうです。でも全国新酒鑑評会で6回も金賞を取るなど質の高い酒造りを目指しています。 

写真の方は企画販売の佐藤竜也さんで、持っていただいたのは純米大吟醸真心です.美山錦45%、協会18号酵母ですが、穏やかな香りで、口に含むとしっかりした味わいがふわっと膨らむけど、全体的にはフラットで、素直に後味か消えていくお酒でした。これで4合瓶が1660円なのはお買い得です。 

3.泉金酒造 龍泉八重桜

泉金酒造は盛岡から東に60kmほど行った岩泉町にある蔵で、世界一の透明度を持つ龍泉洞のそばにあります。創業は1854年と古く、南部杜氏の伝統を守った酒造りをしていますが、昔から醸造業だけではなく町の発展に貢献する色々な事業を手掛けていたようです。
 

現社長の八重樫義一郎さんは9代目の当主ですが、泉金酒造、岩泉自動車運輸、岩泉不動産などをグループ下に置く泉金物産の社長でもあります。泉金物産の本社は盛岡にあり、LPG販売、簡易ガス事業、石油製品販売など幅広く手掛けている立派な会社です。 

今回のブースには女性の方が対応されていましたが、写真を取るのを拒まれましたのでどなたかはわかりませんが、手だけが写っています。蔵の生産高は300石と言われていました。会場には金賞受賞酒、吟ぎんがの純米大吟醸、結の香の純米大吟醸がありましたが、どれも素晴らしい出来でした。その方が持ったお酒を紹介します 

Dsc_0057左が金賞受賞酒の大吟醸ですが、優しさ、綺麗さのバランスが良くこれなら金賞な違いなしと思いました。4合瓶で3780円ですから呑んでみてください。 

右の結の香は女性的な香りがぱっと広がり、やや線が細いけど綺麗さがいいと思いました。 

調べてみるとこの20年で8回も全国新酒鑑評会で金賞を取っていますし、今年は岩手県の県知事賞も取った実力のある蔵です。生産量は少ないのかもしれませんが、大きなバックボーンを持っている蔵なのでゆとりを感じますね。 

早速インターネットでお酒を注文しましたが、お金を支払っていないのに、郵便支払い用紙入りで品物が送られてきたのには驚いてしまいました。余裕のある蔵ですね・・・・・・ 

4.廣田酒造 廣喜、喜平冶 

Dsc_0065廣田酒造は南部杜氏発祥の里として知られる柴波町にあります。創業は明治36年で廣田喜平冶が造り酒屋を譲り受けたそうです。現在の生産高は300石と小さな蔵です。 

写真の方は杜氏の小野裕美さんです。日本酒の造りが大好きな裕美さんは東京農大を卒業後、実家の味噌・醤油の蔵には戻らず、この蔵に就職したのです。同期は天吹の木下大輔さんや澤姫の井上裕史さんがいるそうです。 

蔵に入って勉強して2004年に南部杜氏の資格を取ったのです。この街には月の輪酒造の杜氏も女性ですから2人も同じ町にいるのは珍しいことですね。 

手に持っていただいたのは結の香の純米大吟醸で酵母はジョバンニの調べです。飲んでみると一見優しいようで、奥にしっかりした味を感じました。裕美さんの言葉によると、ウサギの顔をした虎という表現でした。 

どんなお酒をつくりたいのかをお聞きしたら、冷酒がお米だとすると燗酒は炊きたてのご飯のようなものなので、それを求めて燗酒に合うお酒をつくているようで、特ににごりの燗酒をためしているそうです。なるほど・・・・・これからどんな酒ができるかな。 

5.赤武酒造 浜娘 

赤武酒造(あかぶ)はもともと大槌市にあった蔵ですが、2011年の大津波で蔵を全失してしまい、2013年に盛岡市の郊外に新しい蔵を建設し、今に至っています。その時のことについては下記のブログに書きましたので、ごらんください。
http://syukoukai.cocolog-nifty.com/blog/2013/07/2013-e982.html 

写真の方は代表取締役の古舘秀峰さんと蔵人の井上麻帷(マイ)さんです。古舘さんのお話では生産高は300石で未だ元の生産量(600石)には戻っていないとのことでした。 

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 Dsc_0048この蔵の良いところは蔵人が若くて元気があるところだと思います。息子さんの古舘龍之介さんは去年東京農大を卒業され蔵に戻って、杜氏をしているそうです。 

この会で飲んだのは純米吟醸と純米大吟醸でした。純米吟醸は吟ぎんが50%精米で酵母がジョバンニの調べでした。心地の良い香りと綺麗なのど越しがある比較的あっさりしたお酒でした。 

純米大吟醸は結の香40%精米、酵母は協会10号系で柔らかい香りのある上品なお酒でした。 

製造設備も全く新しくなり、仕込み水も全く変わった中での酒造りですので、若い力がどう発揮されて、これからどんな変化を見せるのか楽しみな蔵だと思います 

6.菱谷酒造店 千両男山 

Dsc_0058酒造店は宮古市にある蔵で、ここも2011年の大津波で大きな被害を受けた蔵ですが、宮古市からの補助金やセキュリティハンドなどを使ってその年の11月には酒造りができるようになったそうです。現在はほぼ元の生産量に戻ったそうですから600石前後だと思います。 

写真の方は杜氏の辻村勝俊さんです。辻村さんは田酒の杜氏をやめて2004年からこの蔵で杜氏をしています。山廃純米酒、純米吟醸酒、別撰純米酒を飲みましたが、どのお酒も全体的に柔らかく、口に含んだ時にじわっと膨らむ共通の味わいを感じました。さすが安定した酒造りをしていますね 

7.高橋酒造 堀の井 

Dsc_0067高橋酒造は盛岡市の南の紫波町にあります。ここは南部杜氏発祥の土地であり、米どころですので、今でも4つの蔵が酒造りをしています。江戸時代は麹屋でしたが、大正11年に名水の堀米の井戸から、堀の井と命名して酒造業を始めたそうです。 

写真の方は蔵元の息子の高橋信さんで、杜氏は兄がやっているそうです。この蔵は生産高500石と小さな蔵ですが、全国新酒鑑評会で金賞をここ20年で10回も取っている実力のある蔵です。 

持っていただいたのは結の香の純米大吟醸で酵母が協会18号です。この結の香は香りもほどほどで、とてもバランスの良いお酒で気に入りました。 

これで岩手県の小さな蔵の中で僕が気に入った蔵の紹介を終わります。 

<結の香のお酒> 

前回は結の香葉まとめて、並べられていたので自由に飲めたのに対して、今年は各蔵のブースに並べられていました。結の香の精米は40%と決まっているだけで、酵母は各蔵で異なるようです。一番多かったのはジョバンニの調べと協会1801号でしたが、酵母別に整理してみると下記のようになりました。南部美人はジョバンニの調べ他と書いてありますが、M310 とのブレンドではないかと思われます。 

1.ジョバンニの調べ: わし尾、月の輪酒造店、廣田酒造店、岩手銘醸、浜千鳥 

2.協会1801号: あさ開き、菊の司酒造、高橋酒造、両磐酒造、  

3.M310(協会10号): 桜顔酒造、赤武酒造

4.ゆうこの想い   : 酔仙酒造 

5.ジョバンニの調べ他: 南部美人 

6.不明        : 泉金酒造  

結の香はとてもいい米だと思いますので、この米の良さをもっと引き出してもらいたいと思います。そうすれば、これからが楽しみだと思います。 

最後に大手蔵で見つけた面白いお酒を紹介します

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このお酒は岩手銘醸の純米原酒 平泉です。この蔵は岩手県の南の奥州市にある蔵で、生産高3000石の蔵です。その生産量の1/3を地元産の亀の尾を使っているそうです。この亀の尾はとろり感のあるしっかりしたお酒で、こんな亀の尾を飲んだことはありませんでした。その秘訣を聞いたら亀の尾で味を出すためには、吸水時間の管理が重要だそうです。きっと経験によって手に入れたノウハウなのでしょう。こんな蔵があるのですね・・・・・・岩手県は面白い。

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