11話 新しい冒険の始まり
その日の午後。
ぼくとアスナさんは、旅支度を調えて、玄関先に立っていた。
「忘れ物はないか、エレン」
「大丈夫だよ、おじいさん!」
すっかり元気になったおじいさんが、見送りにきてる。
「本当にひとりで大丈夫なの? テレポート使えるし、ここからでも仕事に行けるよ?」
「おまえはもう大人だ。いつまでも親元にいてはいけないよ。わしは大丈夫だから、しっかり自分の人生を歩みなさい」
「……うんっ。わかった!」
おじいさんはしゃがみ込んで、ランを抱きしめる。
「ラン。引き続きエレンを頼むぞ」
「わんっ! わんわんっ!」
立ち上がって、今度はアスナさんに言う。
「不肖の孫ではありますが、これからもよろしくお願いいたします」
アスナさんは背筋を伸ばし、しっかりと答える。
「任せてください。大事なお孫さんの命は、仲間である私が守ります」
ジョエルおじいさんは、満足そうにうなずく。
「エレン、達者でな。何かあればいつでも帰ってきなさい。ここはお前の家なのだからな」
「うん! じゃあおじいさん……行ってきます!」
こうして、ぼくらは新しい冒険へと、出発した。
よく晴れた青空の下。
どこまでも続く草原を、ぼくらは歩く。
ちなみにテレポートは一度行ったことのある街にしか飛べないらしい。
「アスナさん。これからどうしようか」
「そうね。元いた街にはあまりいたくないから、別の拠点を探さないと」
あの街にはザックもまた住んでいるからだ。
なるべく彼らには関わり合いたくない。
「近くで、ギルドのある街へ向かいましょう。といっても、わたしこの辺のことよくわからないのよね」
ぼくらがさっきまでいたのは、生家である辺境の村。
アスナさんは初めて来る場所だ。
「街はどこにあるんだろう……」
そのときだった。
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精霊使いの力が発動します。
状況打破に適した精霊を呼び出します。
スキル【
スキル【
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ぼくの目の前に、半透明な板が出現した。
「わっ! なんだこれ……地図?」
「これって……周辺一帯の地図のようね」
アスナさんが隣に立って、ぼくの手元をのぞき込む。
せ、背中に柔らかい感触と、花のような甘い香りがして、ドキドキした。
地図上には点が表記されている。
視界には半透明の矢印が表示されて、どこかを指し示していた。
地図を見やると、矢印は街の位置を指していることがわかった。
「すごいわエレン。もう街で地図を買わなくてすむわね。それにどこへ行っても二度と迷子になることはないわ。本当にすごい力ね!」
相棒であるアスナさんだけには、ぼくが精霊使いであることを打ち明けている。
彼女はぼくの言葉に真剣に耳を傾け、職業については公言しない方が良いと助言をくれた。
やっぱり、彼女は信頼できる、最高のパートナーだ。
案内矢印に従って、ぼくらは街を目指す。
地図はぼくらが移動すると、表示されている周辺情報も移動するみたいだ。
地形や道がすごく丁寧に描かれている。
拡大縮小までできた。
「とんでもない地図ね、これ。エレン、わかっていると思うけど、人前でむやみに使っちゃ駄目よ?」
「うん、忠告ありがとう、アスナさんっ」
彼女が微笑んで返す。
『……くぅ。若様、あんな良い笑顔を向けるなんてっ』
『……もういい加減【本来の姿】を明かせば良いのに犬っころよ』
『……それができれば苦労ありませんっ』
ランはぼくの後ろを歩いている。
その頭の上には、ヒヨコの姿のカレンが乗っていた。
「! わんわんっ!」
「アスナさん、敵が近いみたいだよ」
五感に優れるランは、すぐさま敵の情報を教えてくれる。
「数が多いみたい。この先で待ち構えてるって」
「ありがとう、ラン。いつもあなたには助かっているわ」
アスナさんはランに微笑みかけながら、剣を抜く。
『……くっ。アスナ様。なんていい人なのでしょう。これで悪女ならまだ良かったのですが』
ぼくたちは警戒しながら、こっそり敵に近づく。
「ギギッ!」「ギャガッ!」「ギー!」
ゴブリンの群れが、馬車を襲っているようだった。
「大変だ! すぐに助けないと! カレン!」
『ようやっとわらわの出番じゃな!』
ぼくの肩に、カレンが乗る。
「【
ぼくの腕から紅蓮の炎が吹き上がる。
それは巨大な矢となって、高速で飛翔。
手前にいたゴブリン数体を一瞬で消し炭にする。
それどころか、矢はゴブリン達を貫通すると、そのまま飛んでいく。
どごぉー……ん……!
くぐもった音とともに、矢が山に激突した。
そして、山の中腹に、穴が空いていた。
「い、威力こんなに強かったの? ど、どうしよう……穴開けちゃった……」
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精霊使いの力が発動します。
状況打破に適した精霊を呼び出します。
スキル【修復】を入手しました。
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その瞬間、空いた穴が瞬時に塞がる。
どうやらものを直すスキルのようだった。
「ぎ、ぎぎゃー!」「ぎゃぎゃー!」
呆然としていたゴブリン達が、馬車から離れ、立ち去っていく。
全員が同じ方向へと逃げていた。
「巣が近いのかしら?」
「追いかける?」
「それより、まずは馬車の乗客の安否を確認しましょう」
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