挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ブックマーク登録する場合はログインしてください。
え、テイマーは使えないってパーティから追放したよね?~実は世界唯一の【精霊使い】だと判明した途端に手のひらを返されても遅い。精霊の王女様にめちゃくちゃ溺愛されながら、僕はマイペースに最強を目指すので 作者:茨木野
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました
9/42

9話 ザックとの決別



 ぼくはおじいさんの病気を治した後、冒険者ギルドに戻ってきた。


 ギルドマスターの前で、ぼくは地下であったことを、正確に報告した。


 ザックさんは発言を許されず、終始黙って、ぼくらの話を聞いていた。


 その結果、ザックさんの処遇は、以下の通りとなった。


・殺人未遂罪に対する罰金を、騎士団に支払うこと。


・今までの精神的な苦痛を与えたことに対する慰謝料を、エレンに支払うこと。


・虚偽の申告、仲間への殺人未遂等、ギルドの評判を落とす行為に対する迷惑料を、冒険者ギルドに支払うこと。


・上記金額を用意できなければ、犯罪奴隷となり、奴隷商人に売り飛ばされる。


 ザックさんは貯金を切り崩し、マイホームを売り払った。


 武器や防具、所有しているアイテムを全て売却。


 それでも支払い金額には達しなかった。


 冒険者ギルドから借金をすることで、なんとか全ての支払いを済ませた次第。


 話は数時間後。

 ギルドマスターの部屋にて。


「ザックよ。金の支払いは済んだが、おぬしは一つ、するべきことが残っているであろう?」


 ソファセットに座っているのは、初老の男性。


 彼がこの町の冒険者ギルドの長だ。


「は……? もういいだろ……。帰らせてくれよ……」


 ザックさんはすっかり憔悴していた。

 財産を全額没収されたうえに、借金までかかえることになったのだ。無理もない。


「ふざけないで! 一番重要なことを忘れているでしょう!? エレンへの謝罪よ!」


 隣で聞いていたアスナさんが、柳眉を逆立てていう。


「チッ……! 金払ったんだから十分じゃあねえか」


「何よその態度!? ちゃんと反省してるの!? この子の心を深く傷つけたのよ!? 謝りなさい!」


 アスナさんに気圧され、ザックさんはたじろぐ。


「そんなに……そんなにこのガキが大事なのかよ! こっちは一文無しの借金地獄で苦しむことになるんだぞ!? おれの心配しやがれよ!」


「そんなの自業自得じゃない! 謝って!」


「……う、うるせぇぇぇ!」


 ザックさんは立ち上がると、アスナさんに向かって殴りかかろうとする。


 ぼくは彼女の前に躍り出て、パンチを受け止める。


「なっ!? は、速い! なんだその動き!?」


「アスナさんに、ぼくの大切な仲間に手を上げることは……許さないぞ!」


 がつん! とハンマーで頭を殴られたような表情になる。


「あ、あああアスナ……お、おま……パーティ組むのか? おれ以外のヤツと……?」


 アスナさんはぼくの隣に立って、肩に手を置いて言う。


「ええ。その通りよ。今日限りで、あなたとの縁は切ります。……二度と私たちの前に顔を出さないで」


 ふらり……とザックさんはよろける。


 ぽすん、と地べたにへたり込む。


「エレン。怖くなかった? 手、痛くない?」


「いえ、平気です。心配してくださってありがとうございます」


 ふふっ、とアスナさんが微笑む。


「そんな顔……一度だって、おれに向けてくれたことなかったじゃないか……チクショウ……チクショウ!」


 ダンッ! ダンッ! とザックさんが地面を手でたたく。


「ザックよ。エレンへの謝罪がまだであろう?」


「うる、せぇぇぇ!」


 ザックさんは立ち上がって、ぼくらに怒鳴り散らす。


「金払った! ならもう十分じゃねえか! おれは帰るぞ!」


 つばを吐き捨てて、ザックさんが……いや、ザックが出て行こうとする。


「ザック! 待ちなさい!」


 アスナさんが、彼の腕を強く掴んで、引き留める。


 ザックは額に青筋を浮かべ、顔を真っ赤にする。


「うっせえなこの雌豚がぁ!」


 懐から、彼は何かを取り出そうとする。


========

危機を関知しました。

精霊使いの力が発動します。


状況打破に適した精霊を呼び出します。


スキル【先読み】を入手しました。


【先読み】の効果。

→ザックは懐にナイフを隠し持っており、それでアスナの顔を切りつける

========


「パーティメンバーでもねえてめえがおれに口出しすんじゃ……ぐぇええええ!」


 ザックが吹っ飛んでいく。


 ぼくの拳で、彼がナイフを出す前に、頬を殴ったのだ。


 彼は部屋の壁に激突する。


 からんっ! とナイフがザックの隣に落ちる。


「女性の顔を傷つけるなんて、最低だよ!」


 ザックは全身を強打し、動けないようだった。


「エレン! 守ってくれてありがとう!」


 アスナさんがぼくに抱きついて、頬にキスをする。


 感謝のキスってやつだろう。

 気恥ずかしいや……。


「そ、そんな……」


 一方ザックは、呆然とつぶやく。


「くそ……くそぉ……アスナは、おれのだぞぉ……ちくしょぉ……」


 がくんっ、とザックが気を失う。


「こやつめ! ナイフを隠し持っておったか! 騎士を呼べ! 傷害未遂で逮捕じゃあ!」


 ……その後、ザックは騎士に連行された。


 おそらくまた罰金を払うために借金を重ねるか、懲役刑となるだろう。


 騎士に捕まれば、今まで彼が積み上げてきたもの全てを失う。


 Sランクとしての地位も、名誉も、何もかも。


 けれど、同情の余地はない。


 ぼくを地下に置き去りにしただけでなく、パーティの仲間だったアスナさんをも傷つけた。


 当然の報いだと思う。


 ……何はともあれ。

 荷物も返したし、慰謝料ももらった。


 これでぼくは、ザックと完全に決別した。


 もう何があっても、彼のもとには戻るつもりはない。


 ランやカレン、そしてアスナさん。


 最高の仲間たちとともに、新しい人生をスタートさせるのだった。


    ★☆★


 エレンが輝かしい一歩を踏み出した。


 その一方で、ザックとディーナは、破滅へと向かっていくこととなる。


 スキル、そして魔法の使用には精霊が必要となる。


 精霊の加護を失い、精霊に嫌われた彼らの行末が暗いことは明白だ。


 ここがターニングポイントだった。

 土下座をしてでも、精霊使いたるエレンに謝っておくべきだったのだ。


 だが、すべてはもう遅い。

 あとは転がる岩のごとく、地の獄へと落ちるだけ。


 こうして愚か者たちの、終わることのない転落人生が、幕を開けるのだった。


【※読者の皆さまへ、大切なお願いがあります】


少しでも、

「面白かった!」

「続きが気になる!」


と思っていただけましたら、ブックマークや評価を、是非お願いします!!!!


評価はページの下側にある【☆☆☆☆☆】をタップすればできます。


今後も皆様に喜んでいただけるような、面白い物語を提供したいと思っています。

是非ともブックマークして、連載追いかけてくださいますと幸いです。


読者の皆さまのポイントが、ものすごく励みになります!


なにとぞ、よろしくお願いします!!!!!

  • ブックマークに追加
ブックマーク登録する場合はログインしてください。
ポイントを入れて作者を応援しましょう!
評価をするにはログインしてください。

感想を書く場合はログインしてください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。