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 安倍政権に不満はあるが、さりとて野党は力不足で心もとない。そんな国民の心を引き寄せることができるか、真価が問われるのはこれからである。

 立憲民主党(89人)と国民民主党(62人)による昨年来の合流協議がようやく決着した。両党を解党し、新党を結成する。玉木雄一郎代表ら国民の一部は参加を見送るが、無所属議員を含め衆参で150人規模の野党が生まれることになる。

 ただ、前回衆院選でバラバラになった旧民進党勢力が、3年を経て「元のさや」に収まった印象は否めない。民進党の前身である民主党は、国民の高い支持で政権交代を実現しながら、政治主導の空回りや内紛で自壊した。信頼を取り戻すのは容易ではないと覚悟すべきだ。

 新党の綱領案は、基本理念の冒頭に「立憲主義と熟議を重んずる民主政治」を掲げた。政策の基本方針としては、ジェンダー平等や原発ゼロ社会、格差の解消、健全な日米同盟と「開かれた国益」の追求、公文書管理と情報公開の徹底などを盛り込んだ。自公政権との対立軸に十分なりうるものだが、課題は、こうした理念や方針を、いかに具体的な政策に落とし込み、実現するかである。

 綱領案は両党の幹事長、政調会長が2週間でまとめた。国民内では、電力総連など産業別労働組合出身議員の間で「原発ゼロ」への反発が根強い。合流を急いだ結果、足並みの乱れが露呈するようでは本末転倒だ。

 地方議員や党員への丁寧な説明が後回しになった感もある。合流を提案した立憲は、永田町の数合わせからの脱却、「ボトムアップの政治」が信条だったはずだ。結党大会に向けた代表選びや党名を決める投票は国会議員だけで行うというが、組織の足腰を強化するには、現場で汗をかく人たちの意見をくみ取る仕組みが必要ではないか。

 新党に参加しない玉木氏ら国民の一部議員は、別の政党を立ち上げるとみられる。しかし、その場合でも、国会での共闘や来たるべき総選挙での協力など、これまで培ってきた野党間の連携は維持すべきだ。

 巨大与党に支えられた長期政権のおごりや緩みは明らかで、一向に自浄作用は働かない。論戦回避、国会軽視も相変わらずで、憲法に基づく臨時国会の召集要求もたなざらしが続く。コロナ対応を含め、政策面での迷走や行き詰まりも目立つ。

 今ここで野党が行政監視の役割を果たせず、自公政権に代わりうる有効な選択肢を示せないなら、失われた政治への信頼は取り戻せまい。その重い責任を引き受け、具体的な行動を通じて、合流の実を示して欲しい。

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